「あー、ウィンリィ、さん?」

数秒後響いたのは、打撃音と、悲鳴。

 

日向

 

「まったくまた壊してくれちゃって!あんたはアタシの機械鎧を大事に使おうって気はないの!?」

ある程度殴打して気が済んだのか、エド(だったもの)に声をなげる。

「し、しぃましぇ…ん…」

「ほら、スペアの足あげるから。アル、邪魔だからつれて出てって。」

そのままスパナ片手に二人を追い立てた。アルに引きずられ、エドはずるずると出て行った。

 

 

「くっそ、ウィンリィのヤロウ…ぼこぼこ頭ァ殴りやがって…機械鎧の前に俺が壊れるっつーの…」

ぐちぐちと文句をたれるエド。アルはエドを庭に放り出した後、どこかへ行ってしまった。

そのため、今ぐちを聞いているのは犬のダンである。しかも、ウィンリィがいないためかなり言いたい放題だ。

「あの機械オタクめ…ちったあ、色気ってもんをだしてみろってんだ。凶暴に育ちやがって。ほんっと、ばっちゃんとそっくりだぜ。」

と、急にダンが縮こまった。しかし、文句をたれ続けるエドが気づくはずもない。

「もうちょっと女らしさってモンがないもんかね。あー腹立つ。あのヤ…」

目いっぱいスパナが振り下ろされた。鈍い音が響き、エドが悶絶する。

「…よくもまぁ、そこまで言いたい放題言えるわねぇ、エド?私がいないと思って油断したぁ?」

見上げたエドの目に写ったのは、恐ろしいまでのウィンリィの笑顔。しかも、スパナは油断なく構えられている。

「…死ぬ…マジで死ぬ…」

エドが呻いてのたうちまわった。

「少しは加減しろウィンリィ!!機械鎧の前に俺が…」

痛みが多少おさまったのか、必死に噛み付くエド。しかし、

「何か言った?」

ウィンリィの迫力のある笑顔に黙らせられてしまった。二人の立場は、依然変わらないようだ。

「ホントにあんた何をやってるのよ?あんなに機械鎧ボロボロにして。また妙なことに首突っ込んでんじゃないでしょうね?」

軽く息を吐いて、腕組みするウィンリィ。どうせ聞いても無駄だろうとは思いながら。

「…おまえには関係ねーだろ。」

そして、当然のように予想通りの答えが返ってくる。ウィンリィは一つため息をついた。

もう、何度繰り返したか。あの日二人が旅立ってから、一切連絡はない。

たまに帰るのは機械鎧を壊したときだけ。それも突然。頼りにして帰ってきてくれるのは嬉しいが、心配の方が大きい。

実際、何度二人が消えてしまう夢を見たことか。

当たり前にそばにいてくれたのに。今ではうわさだけが唯一の生存確認方法。

連絡がないのは、二人なりの巻き込まないための配慮なのだろうが、寂しいものは寂しい。

「ねぇ、エド。」

ふと胸に去来した、嫌な予感を振り払うように声をかける。

「そういえば、あんたが国家錬金術師の資格とってから、こんな時間なかったわよねぇ。」

「…そうだな。」

ウィンリィの表情に何かを感じ取ったのか、何か言いたげにエドが答えた。

「まあ、あんたこっちにいるどころか、連絡すらよこさなかったんだもん。当然と言えば当然か。」

ウィンリィはクスリと笑って、エドの隣に腰を下ろした。

「エド、約束して。」

急に声がまじめになる。

「何があっても必ずここに帰ってくること。アルを戻して、手足を治して。旅を終わらせて、必ずココに戻ってくること。いい?」

「な、なんだよ急に。」

突然のウィンリィの台詞。先のことなど分からない、それも、旅の終わりなど。もっと分からない。

「いいから約束して。」

それでも、ウィンリィの顔には、有無を言わせない何かがあった。

「…分かったよ。」

「ん。よろしい。」

迫力に負けたエドが承諾すると、ウィンリィの表情が柔らかくなった。

「そのときは、エドも国家錬金術師やめるんでしょ?」

「ん…、そうかもしれないな。」

元々、元に戻るために取った資格だ。目的が達成されれば必然、必要がなくなる。

「じゃあ、また昔みたいに過ごせるかな?」

「ああ、そうなるといいな。」

なんとなしに、二人は空を見上げる。

いつのまにか、日は暮れかけていた。

 

 

エドとアルは旅立ったのは翌日。

徹夜明けで眠かったが、ウィンリィは一応見送った。

今、ウィンリィは眠っている。その夢見はよさそうだ。

そしてこれからも。彼女がエドとアルがいなくなる夢を見ることは、もうないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハイ、Fisher manです。SERI★様のご要望がきっかけの、エドウィンです。アルが喋ってません。いいんです、エドウィンですから。

そういえば、昔誰かさんにも引き伸ばしをリクされた気がするなあと、今思い出しました。

まあそんなこんなでエドウィンなのです。

ではさよ〜なら〜。

                                                                 Fisher man