深々と降り積もる雪。

今年もまた、一年が暮れようとしていた。

そんな特別な日、神社へ向かう人の列に、川平啓太の姿があった。



イヌカミノネガイ



「う〜、さっび〜。」

ぶるぶると身震い。黒いコートに身を包み、多少縮こまっている啓太。

「あはは、ケータの寒がりさん♪v」

その隣を歩くのは晴れ着姿のようこ。

寒そうな啓太とは対称的にこちらはるんるんとしている。

ちなみに、晴れ着の着付けはなでしこに習った。他にもいろいろ知っているようだ。

「うっせ。ったくお前はいいよな。犬神だから暑さ寒さ関係ないし。」

ぐちぐちと文句をたれる。

「えへへ〜v」

「…ったく、人多いんだからはぐれるなよ。」

文句をたれつつも、さりげなく手を伸ばす。

「…うんv」

出された手を握り返すよう子。そのまま、腕まで抱きしめ身を寄せる。顔は嬉しげに笑っている。

啓太はというと、満更でもない御様子で、鼻の頭を掻きながらそっぽを向いている。その頬は心なしか染まっている。

二人は列にそって歩いていった。



歩くこと数十分。

お目当ての神社に到着し、手早くお参りを済ます。まあ、混んでいたので多少時間はかかったが。

「ね〜、ケ〜タ、初日の出見にいこ?」

手をとるようこの突然の言葉に、

「は?どうした急に。」

驚く啓太。

「あのね、あそこの石段登ったらきれいな初日の出が見えるんだって。それでね、その初日の出にお願いしたらかなうんだって。

ねぇ、いこ〜、いこ〜?」

ぐいぐいと引っ張る。

「っとと、分かった、分かった。そんなに引っ張るなって。」

「じゃあ、いこ。」

それだけ言ってようこはとんとんと駆け出した。



石段のところに着くと、もうたくさんの人が登り始めていた。」

「うわ…、こりゃすげえ…」

ただ感嘆の声を漏らす啓太。石段とそれに挑戦する人の多さに。

「確かにこれだけ登ればちょうど日の出くらいになるわな。」

「さ、行くよ、けーた。」

「おう。」

そう言い合って登り始めた。



始めはとんとんと軽やかに登っていた二人だったが、登ること2〜3時間。

かなりの段数を登った。登ったのだが。

「ちくしょ〜、一体どこまであるんだよ!全然終わりが見えないぞ!!」

「ホントだよ〜。」

二人してへばっていた。

犬神でもへばるのだ、かなりの段数があるのだろう。

「…ねぇケータ、わたしが上まで運ぼうか?」

自分が啓太をつかんで、上まで跳ぶ。と提案しているのだ。

「…いや、いい。」

少し考え、きっぱりと断る。そして、なんで?と問うようこに、

「だって、自分の力で登ってこそ、綺麗な初日の出がおがめるってもんだろ?」

笑って答える。

「そっか、そうだよね。」

「それに…」

さらに続ける。

「お前も疲れてるだろ?」

「……」

「……」

仲良く二人で染まってから、

「…じ、じゃあ行くか。」

「…うんv」

笑いあって歩き出した。



そしてさらに登ること2〜3時間。

ついに、

「着いたー!」

まだ日は出ていない。

「間に合ったー!」

「やったね、ケータv」

飛びつくようこ。

周りを見てみると、頂上にいる人は少ない。あれほどの人が挑戦したというのに。

それだけ、脱落者が多いのだろう。

二人は適当な場所を見つけ座った。

「おー。」

「きれいだね、ケータ。」

啓太に寄り添い、もたれかかるようこ。そして、

「わたし、ケータと初日の出見られてよかったよ。」

そっと呟く。

啓太は、日の光のせいだけではなかろう、頬を多少染め、

「…まあ、今年もよろしくな、ようこ。」

「うんv」

身を寄せ合い、じっと日の出を見つめる。

(神様、ずっと、ケータと一緒にいられますように…)

そして、そっと、願う………









はい、どうも、毎度おなじみFisher manです。お正月でなんか書こう、と思ってたところに、

たまってるリクを思い出して書いてた次第です。でも、これ下書きしたの朝の2〜4時なのさ〜。

ま、そんなわけで今年もよろしくなのさ〜。

                                           Fisher man