さて、高峰先生も無茶を言う。

まあ、言われる前から彼らには目をつけていたんですけど、ね。

あ、自己紹介が遅れました。

アタシ、傍野均と申します。性別男、所属は瑞穂坂学園魔法科2−H。以後、お見知りおきを。

 

 

観察者、近づく。

 

 

GWも明けて、五月の頭。瑞穂坂学園普通科2−H。

その日の朝のHRで、とりあえずこのクラスになってから一月経ったから席替えをしましょう、という担任の言葉で行われた席替え。

方法はいたって普通のくじ引き。それでもその結果には何かの作為を感じずにはいられないような布陣が出来上がっていました。

「よろしくね、雄真君。」

「よろしく、雄真!」

「……おう、こっちこそ。」

クラスの真ん中前から二列目を引き当てたアタシの後ろに座ってるのは、普通科の小日向雄真。

その両隣を、美少女ぞろいの魔法科でも1,2を争う神坂春姫と柊杏璃が固める。

「よろしくお願いします、小日向様。」

「世話になる、小日向殿。」

「ゆ〜うま〜。」

さらに雄真サンの後ろに絶滅危惧種の大和撫子とうたわれる上条沙耶、その両脇に沙耶サンの双子の兄である上条信哉、学園最強のオカマちゃんと名高い渡良瀬準が配されて。

「ぬーおー、何で俺はここに!? しかもなんで俺だけ少し離れてるんじゃー!?」

極めつけは、アタシの前、教卓の正面。ここには、常にハイテンションが売りの高溝八輔が配置されてます。

やれやれ、さながら群れに紛れこんだ異端者ですか。

まあ、これも何かの縁です。ここらでお近づきになるのもアリ、でしょう。

そういうわけで、アタシは先生が出て行ったのを確認した後、後ろを向きました。

「ご近所さん、これからよろしくお願いしますね〜。」

とりあえず軽い感じで挨拶したんですが、変なタイミングだったんでしょうか、みんながこっちに視線を集めました。

「ああ、よろしくな。」

「うい、小日向雄真サン。」

まず雄真サンが挨拶を返してくれました。

いや、まだ名乗ってないぞ、みたいな不思議な顔しないでください。一月もいればクラスメートの顔と名前くらい一致しますって。

まあ、アタシの場合はそれだけじゃないんですけどね。

「もちろん、皆さんのこともご存知ですよ?」

がさがさとメモ帳を取り出そうと懐を探る。

「先にアタシの自己紹介からしましょうか。名前は傍野均、性別は見てのとおり男、魔法科所属で、出席番号11番。」

が、目的のものは見つからず、色々なポケットを探る。

皆さんは、とりあえず何も言わないで、こっちを見つめています。中には杏璃サンみたいに怪訝そうな目の方もいますが。

「マジックワンドはこの扇子『夕霧』と『薫』、クラスはCです。ほら、挨拶。」

「よろしくお願いします」

「よろしくお頼み申しあげます。」

ようやく、目的のメモ帳をつかみ出し、同時に自己紹介を終えました。

「で、皆さんのことは知ってますよ。瑞穂坂始まって以来の才媛・神坂春姫サンに、そのライバルの天災・柊杏璃サン。」

メモは広げないで、頭の中のデータを読み上げていく。う、杏璃サンが睨んできてます。鋭いですねぇ……。

「で、学園最強のオカマちゃん・渡良瀬準サンに、絶滅危惧種の大和撫子・上条沙耶サン、その双子の兄であるザ=サムライ・上条信哉サン。」

あ、沙耶サンが頬を染めて恥じらってます。それにハチサンが隣で悶えて、あ、準サンのキックが入った。

「で、今倒れたのが迷犬ハチ公こと高溝八輔サン、って、大丈夫ですかい? 鼻曲がってますが?」

「ダイジョブよ〜、だってハチだし。」

いえ、倒れたハチサンの鼻が曲がってるのは気のせいじゃないと思うんですが。それにしてもいい笑顔ですな、オイ。準サン輝かんばかりだ。

「で、これに上級生一人と下級生二人を含めてのグループ、小日向雄真と仲間たちの中心があなた、歩くフェロモン・小日向雄真サン。」

アタシの言葉を聞いて雄真サンが机に頭を打ち付けました。痛そうっすね、そのおでこ。ああ、両側から心配されてます。愛されてますねぇ。

「そのユカイな仲間たちから、上条のお兄さんと高溝サン」

「俺のことは信哉でいい。」

「こいつもハチでいいわよ」

「じゃあ、アタシも好きに呼んじゃってください。希望を言えばあだ名か下の名前で。」

信哉サンが軽く目を閉じて、準サンは何故か楽しげに了承をくださいました。

それにしてもまったくさっぱりした方々ですね。でも、本人に許可取らないでいいんスか、ハチサン。

「で、信哉サンとハチサンをその仲間達から除くと、雄真ハーレム。なんか、間違いあります?」

いい音がしました。あら、雄真サン、大丈夫ですかぃ? ああ、おでこがそんなに赤くなっちまってマァ。

「なんだその雄真ハーレムとか、歩くフェロモンってのは!!」

「大丈夫です。詰め寄らなくても聞こえますってば、雄真サン。近いですって。」

そう言って詰め寄る雄真サンを押し返していると準サンが上から乗って、雄真サン潰されました。……また同じトコ打ったんでは?

「何も間違ってないじゃない。ね、均くん? あと、私も準でいいわよ。」

「ウイ、準サン。小日向サンは専らの評判っスよ。六人の美女プラスワン、ツー、スリー? くらいを侍らせてるって。他にもファン急増中とか。」

準サンは楽しそう、いや、うれしそうなんですかねぇ、これ。

春姫サンとかは少し浮かない顔してますが。ファン急増中って言葉が引っかかってるんですかね。

いや、それも相まってか春姫サン視線ひどいことになってます。いや、雄真サンの制服穴開きますよ?

そんな視線には一切気付かないで、雄真サンは勢いよく体を跳ね上げます。

無意識とはいえ、準さんを跳ね除けましたから、視線に反応したとも言えるんでしょうか。

「準は男だぞ!?」

「知ってますよ? 何当然のこと言ってんっスか。」

「ならなぜ、ハーレムとやらの中に入ってる!?」

いや、それを否定したい一心だったのかもしれませんね。

それにしても、情報屋舐めちゃ駄目ですよ?

まあ、しらばっくれた態度で返答しますけれど。

「知りません。噂がそうなってますから。まあ、準サンが小日向サンにラブラブラブーなのは周知の事実だから、じゃないスか?」

含みのあるような笑いはオプションで付けておきます。

と、視線を感じて目をずらせば、春姫サンの視線がえらい事に。愛されてますね、雄真サン。

「ま、とりあえず、これから見事に挟まれた中で過ごすんですし、アタシもそのユカイな仲間たちに入れてもらえればなーと。ダメですか?」

「その前に、何でこんなにあたしたちの事知ってんのよ?」

まあ、当然の反応ですか。気味が悪い、ってのが実情でしょうし。

「いや、情報屋みたいなものを営んでいれば、学園内で知らないことはそんなに無いッスよ? そこそこに有名だと思うんですが。」

「そういえば、そういう話も聞いたことがあるような無いような。『噂が知りたきゃ傍野に聞け』だっけ?」

「ええ、そんなコピーがいつの間にか出回ってたみたいですね。」

準サンが助け舟を出してくれました。やっぱこの人は顔が広いんですねぇ。

その一言が聞いたみたいで、他の方々も警戒を解いてくださいました。

「まあ、準ちゃんがそういうなら本当なんでしょ。いいわ、迎えてあげる。これからよろしくね。」

「えぇ、こちらこそよろしくお願いします。」

そう言って次々差し出される手を握る。しかし、前情報あっても、やっぱり準サンが男ってのは信じがたいですねぇ。

「ああそうだ、皆さん、どう呼べばいいですか? 基本名前で呼ぼうと思うんですが。この呼び方は、雄真君だけのトクベツーとかあります?」

頬染めたのが春姫サン、沙耶サン。杏璃サンは拳を握り、ハチサンは戦慄いてます。

「ああ、いいぞ。」

「……うん、特に、問題ないよ?」

「そうね。苗字で呼ばれるよりはいいか。」

「はい、こちらこそよろしくお願いします。」

どうこう言いつつ皆さん了承をくれたようで一安心。呼び方に困るようなことはなさそうです。

「じゃあ、雄真サン、春姫サン、杏璃サン、沙耶サン、準サン、信哉サン、ハチサン、ってことで。」

そうこうしているうちに、始業のチャイムが鳴りました。仕方ないけどここまで、ですね。

「じゃ、これからよろしくお願いしますね。」

「おう。」

そう言うとみんな、口々に挨拶を返してくれました。うん、楽しくなりそうです。

 

 

そうして昼休み。授業の終わりの鐘が鳴り、今日は土曜日なのでこれで放課。

教科書をカバンに入れていると、前の席のハチサンが声をかけてきました。

「なー、お前これから空いてる?」

「空いてますよー? ちなみに結構年中暇してますから、いつでもお誘いを。」

あたしの答えが満足だったのか、ハチサンがにんまりと笑っています。

「じゃあさ、オアシス行こうぜ。友情の記念ってヤツに一緒に飯喰おう!」

さすがミスターハイテンション。嬉しくなるくらい親しい物言いです。

もちろんそれを断る理由なんて、アタシには存在しません。

そういえば、オアシスって、学内の食堂でしたっけ。

「雄真たちも行くだろ? 神坂さんたちも今日は弁当もって来てないでしょうし!」

「そうだな。」

「うん、いいよ。」

「アタシも今日はバイト入ってないわ。」

そのまま流れるように『仲間たち』が固まり、一団でオアシスに向かう事になりました。

教室からはそんなに遠くないようで、しばらく歩くと到着します。

入ったと同時くらいに小柄な店員さんが寄ってきました。

「あ、雄真くん、いらっしゃい。今日は団体様ねぇ。」

確か、この子持ちに見えない、というか社会人か疑わしい女性は小日向音羽サン、雄真サンのお義母さんでしたか。

「でも、お若いっスねぇ……」

「あら、ありがと。君は初めてみる顔ね。」

……声に出してたか。失態です。それにしても、これも前情報あっても驚かされますね。

「あ、うん。席替えで近所になったんだ。傍野、これがうちのかーさん、小日向音羽。」

「傍野均と申します。」

「小日向音羽、雄真くんのお母さんです。」

頭を下げると、音羽サンも返してくれた。それにしても、いいお母様ですねぇ、雄真サン。

「かーさん、すももたちは来てる?」

「来るって言ってたからもうすぐじゃないのー? 先に座って待ってたら?」

雄真サンたちが話してるのを置いて皆さんもう席に向かってますけどね。あ、でも座ってない。雄真サン、これまたひと悶着ありそうですね。

あら、小雪サンは今日も占い開業中ですか。必然、その周りに陣取る事になってます、ね。

と、そうこうしているうちに、ドアベルが鳴りました。

「あ、兄さん来てたんですね。」

「遅くなった、小日向雄真。」

そういや、約束でもしてたんでしょうか、ホントは。

ドアをくぐって現れたのは一年生の中でも小柄な部類に入るような少女が二人。小日向すももさんと式守伊吹さんですか。

二人に引っ張られる雄真サンに先導される形で、アタシも席に向かいます。それにしても。

「これで雄真とユカイな仲間たち、勢ぞろいですか。いや、ひー、ふー、みー、よー、いつ、むー、なな、やー、ここ、とお。壮観ですなぁ。」

そのほとんどが雄真サンに好意向けてんですから、なんと言いますか。

「うるさい。オッサン臭いこといってないでさっさと来いよ。」

「あいあい。」

照れ隠しのような雄真さんの行動についつい笑いが漏れてしまいました。

確かこれに、御薙先生と音羽サンが入るんですかねぇ。

それにしても雄真サン? さて、何処に座る気ですかい?

それぞれが隣に座って欲しそうに眺めてますよ。クスクス。

「おモテになりますね、雄真サン」

「本当にね。さっすが雄真くん。」

突然の声に振り向けばそこには御薙先生が。

「先生? どうしたんですか?」

春姫サンたちも驚いてるところからすると、ホントに誰も気付かないうちに来たみたいですね。さすが大魔法使い、とでも言うべきなんでしょうか。

「ちょっとね、何か面白そうな気配がしたのよ。そしたら、新しいお友達も増えたみたいだし。」

楽しそうに笑う御薙鈴莉先生。

……やれやれ、よく言います。あなたがたの指示でしょうに。

話を元に戻しましょう。

「確かに、こんなに人数そろうと壮観なものがありますね。うーん。雄真サンって結構女誑しなんスか?」

「違う!」

全力で否定されましたが、目的は達成。準サンが嬉しそうに笑って、ハチサンが凄く悔しがってます。

ああ、結局春姫サンと杏璃サンの間に座る事にしたんですね。確かにそこなら、正面伊吹サンですし、斜めには沙耶サンもすももサンも、後ろには小雪サンもいますから問題なさそうですね。

「まあ、『仲間たち』全部そろったところで、改めて自己紹介させていただきましょ。アタクシ、傍野均と申します。」

「傍野、だと?」

アタシの名前を聞いて、伊吹サンの視線が厳しくなりました。

それに真っ先に対応するのは、やっぱりすももサンの仕事のようですね。

「どうしたの、伊吹ちゃん?」

「いや、傍野、といったな。お前、あの傍野か?」

一層視線が厳しくなりました。元々彼女威力のありそうな目つきをしてますから、そろそろ痛みを伴いそうです。

そして、伊吹さんの言葉に皆さんの視線がアタシと伊吹サンに集中します。

「まあ、概ね、伊吹ちゃん」

「ちゃん付けで呼ぶな! 呼び捨てでいい!」

思い出し笑いですか。皆さん笑ってますね。

いや、とりあえず、この儀式はやっておくべきかと。思ったとおり呼び捨ての許可くれましたし。

もちろん呼び捨てにはしませんけど。

「ヘイ。伊吹サンの思っている通りの傍野だと思いますよ?」

やはりそうか、と伊吹サンは肩を落としました。

それにしても、もう見抜かれましたか。さすが名家・式守の跡取りだけはあります。

「伊吹、傍野がどうかしたのか?」

ああ、他のみんなも不思議そうな顔して、いや、後ろの小雪サンは笑ってますね。この人も知ってましたか。

「ああ、傍野というのはだな。」

「その先はアタシが説明しましょう。といっても、小雪サンと御薙先生は分かってるかもしれませんけどね。」

少し意趣返しのつもりだったんですが、御薙先生にはやはり利きませんね、そ知らぬ顔で微笑んでおられます。

「傍野の家系は元々忍者だったんです。それも、特定の主を持たず、常に事態からは一歩退いたところで情報を集めて、それを生業としてました。」

それが傍野の由来になったんですけどね、と笑いを混ぜてみます。

「で、そのまま脈々と情報屋を営んでますが、現代に入って、その技能も少々役立たなくなりました。どうも、江戸幕府のときに痛い目見たらしく、明治辺りからは、流れの情報屋に変わったんです。まぁ信用した相手にしか情報は売らない、とか言うとカッコいいですかね。」

すももサンの瞳が話を聞くごとにキラキラと輝きを増していってます。多分、あなたの想像とは全然かけ離れてますよ、実際は。

「まあ、けれども、やっぱり手に職つけたほうが、ってことで今じゃ情報屋は大分副業になってます。アタシなんかは魔力があったんで魔法科にきましたし。まあ、学園内でも情報屋まがいのことはやってますが。」

結構普通の暮らしをしてるんスよね。うちの父親は普通のサラリーマンですし、祖父さんも会社勤めだったはず。

「で、ここからが本題です。伊吹さんがさっきうなだれたのもここからが理由です。」

アタシはそこで一旦言葉を切ります。いや、皆さんそんなつばの見込むほど緊張しないで。

「長年の経過からアタシたちの一族は、傍で物事を見守る事を趣味とするようになりました。つまり、騒動の種の近くにいたいんですよ。で、付け加えるなら、総じて他人の色事が好きなんです。」

こりこりと頭をかくアタシ。ちょっと、この先言いづらいけど、お気の毒だな、と思うけど、面白そうだからまあいいでしょう。

「つまり、ハーレムの周りにいたがるんですよ。どっかの社会では『傍野のいるトコハーレムあり』って言葉もあるくらいですし。例を挙げていけば、そうですね……」

昔、家の蔵で見た文献の記憶を掘り返してみましょう。

「北の雪国で八人の少女に囲まれて奇跡を起こした人のトコやら、吸血姫とかメイドとか夢魔とか半鬼とか魔術師とか同級生とかひきつけた死神さんのトコやら、英雄の魂飛び交う戦場で魔術師とか英雄とかシスターとかの気持ちを持っていった剣の異端児のトコやら、ですか。」

こまったことに中身はよく分からないんですよねぇ。どれも個人の楽しみのための記述なことが多いから、読みにくかったりしますし、意味が通じなかったりするものもありますし。

「まあ、もしかしたら、アタシの子孫は、メイドロボとか同級生とか幼馴染とか宇宙人とかに囲まれてる人のトコにいるかもしれませんし、遠い未来には、獣耳の美少女美女を侍らせた皇様のトコにいるかもしれませんね。」

まあ、とりあえず、そんな例は置いとくことにしましょう。

「何がいいたいかといいますと、歴史的に、雄真ハーレムは認知されました、おめでとう! ってことです。」

ちょっと怪しめの笑いもオプションです。

それ聞いて、雄真サンが固まりました。ふむ、反応は人それぞれですか。準さんや御薙先生、小雪サンはおかしそうに笑ってますし、ハチサンは血涙流して、信哉サンは我関せず、他は大体頬染めて。

とりあえず、誰も口を開かずに一分くらい過ぎました。

「なあ、さっき情報屋やってるって言ったよな?」

不幸慣れしてるのか、復活慣れなのか、ハチサンが一番早く立ち直りましたね。

「えぇ、言いましたよ?」

「一体どんな情報を扱ってるんだ?」

ああ、気になるとこでしょうし、アタシとしても腕の見せ所ですね。

「もちろん、傍野の名は伊達じゃないっスよ? 誰もが知ってるような事からこれは法に触れるだろって個人情報まで、何でもござれです。」

ちょっと誇らしい気分です。ちょっと胸とか張りそうなくらい。

「じゃあさ、姫ちゃんのスリーサイズとかぐはっ!」

轟沈。見事なほどに決まった準さんのエルボー。誰でしたっけ? 三沢何とか。自業自得ですが、とりあえず合掌。

まあ、それでも質問には答えておきましょう。

「もちろん、分かってますよ? もちろん、杏璃サンとかハーレムの皆さんも対象外じゃないです。好きなものや嫌いなもの、靴や下着のサイズ、もらったラブレターの数とか成績などなど。テスト問題とかはNGですけど。」

瞬間、おしぼりが飛んできました。とっさに立てた扇子で防ぎましたが……投げたのは杏璃サンですね、真っ赤になって肩で息してます。って!

「ちょっとストップ、ストップです! その気持ちはわかりますがちょっと待ってください! 話はまだ途中です!」

春姫サンや沙耶サン、すももサンは頬を染めて恥ずかしそうにするだけだったんで助かったんですが、伊吹さんが真っ赤な顔でビサイムを、信哉サンが静かな顔で風神雷神を構えてます。準サンはしらっとした目でこちらを見てますし、雄真サンは、水の入ったピッチャーを構えてました。……ごめんなさい。

小雪サンと御薙先生はというと、笑ってやがりましたよ、ちくしょう。

「最後まで聞いてください! お願いしますから! 誤解させるような言い方して悪かったです!」

勢いで土下座までしました。平謝り。で、ようやく皆さん腰を落ち着けて話を聞いてくれる気になったようで、手に持った得物を置いてくれました。

……視線は五割り増しで厳しくなりましたけど。

「先ほど江戸幕府とのことを話したと思いますけど、その失敗ってのが、個人情報保護にからんでるんですよ。」

確か、そのときのご先祖がなんかしらの手段で、当時の重役の秘密を口走っちゃったんでしたか。

「それで、アタシの場合は、危険な情報、プライバシーはこのメモ帳に書いたら忘れるように、そしてこのメモ帳もアタシにしか読めないように、アタシから離れないように、厳重に魔法をかけてます。から、アタシはここに載ってる情報は知ってても、その中身は知らないんですよ。」

だから、いちいち調べなきゃいけないんですけどね。まあ、緊急事態には特殊手段もありますけど。

皆さん理解を示してくれたようで、いくらか視線が緩んでくれました。

「じゃあ、みんなのスリーサぶべら!」

ハチサン、あなたの復活力に驚けばいいのか、学習能力の無さに呆れればいいのか分かりません。

でも、ハチサン結構防御力高そうですね。これは、準さんに加担してみるのも面白いかもしれません。

とりあえず、ハチサンの依頼はきっちり断っておきましょう。

「ダメです。これは、アタシが必要だと認める人にしか明かさないって決めてるんです。聞きますけど、ハチサンそれ聞いて何する気ですか?」

「うう、えっと。」

案の定、言いよどむハチサン。

思わず準さんとため息がシンクロしてしまいました。

「そういうところはきちんとする。そんで、テスト問題とか事前に調べちゃうとまずいものも調べない。それが情報屋としてのプライドってヤツです。アタシ個人で楽しんだりしたことももちろんありません。」

わかりましたか、と念を押せば、ハチサンはさらに深いため息をついて答えてくれました。

まあ、テストとかは、学生の間だけですし、事態が面白くなるように、好転するように人に教えるってことはしますけど。

「じゃあ、どんなヤツになら教えるんだ?」

何気ない雄真サンの台詞。……これは餌ですね、あきらかに。

「それはそのとき判断します。そうですね、例えば、春姫サンたちのスリーサイズは雄真さんにも教えませんよ。」

「そうなの?」

不思議そうに聞いてくるのは準サン。隣でハチサンが雄真サンに同情したように握手を求めて、雄真サンがそれを跳ね返しました。

他の方もちょいと、意外そうです。

笑いがこみ上げてきますね、ホント。

「だって、望めば教えてくれるでしょうし。もしかしたら知ってるかもしれませんね、それもアタシのより正確なヤツを。」

「雄真、貴様ー!!」

ハチサンが角はやしました、ね。頬染めて黙る人、詰め寄る人、笑ってる人、便乗する人。

クスクス。思ったとおりの反応、ありがとうございます。

ついでです、もう一つ投下しておきましょう。

「それとも、現在進行形で塗り替えたりしてますか? 困るんですよねー、調べる手間が増えちゃいますし。」

「してねぇ!」

「貴様ー!」

クスクス、やっぱりまだどなたにも手は出されてないんですね。

ハチサンが雄真サンに噛み付ついて、吼えて唸って、皆さんがそれを引き剥がそうとして。

「あなたの目から見て、雄真くんはどうかしら?」

そんな様子を眺めていると、後ろから声をかけられました。

「ああ、御薙先生。そうですね、中々面白いお方かと。特に、いろいろな方をひきつける魅力。何となく分からなくもないかもしれません。」

こみ上げてくる笑いを隠すように口元に扇子を立て、御薙先生を見上げます。

その答えに御薙先生も満足してくれたようで、浮かべている笑みが強くなりました。

「そう、それはよかったわ。ということは?」

「ええ、彼には『傍野の試練』を受けてもらいましょう。もっとも、彼ら、かも知れませんがね。」

その言葉をきいて、御薙先生の目は雄真サンたちに向けられます。

「まったく、ゆずはも困ったものね。雄真君も、大変だこと。」

その先ではハチサンをようやく取り押さえて沈静化させたみたいですね。

さてさて、面白いことになりそうです。

 

 

 

 

 

 

 

 

はい、こんにちは。

こいつはネタssです。多分。色々と小ネタをはさんでいきます。回答は後書きの後に反転で。

分からなかったらスルー願います。

さて、この作品は一人称小説というものにチャレンジするための実験作と申しましょうか。

元ネタにはぴねすを選択したのは、デラックスをやりたてだったから、の一点のみです。

コンセプトは「ハーレムを横から見てる一人称主体」でした。

割りに、傍野がでしゃばってる気がしますが、これは最初なので仕方ないのかな、と。

続き物っぽくなってますが、シリアスなのは基本ありません。多分きっとおそらく。プロットでは後一話。

他はほのぼのになればいいなと。リクエストがあれば書きますけど、ね。……書ければいいな、リクエストあればいいな。

……自信ねぇなぁ。

ではまた次回に。

                                                    Fisher man

 

今回のネタ。

傍野のマジックワンド・『夕霧』『薫』→源氏物語の登場人物。

北の雪国で八人の少女に囲まれて奇跡を起こした人→『Kanon』の相沢祐一

吸血姫とかメイドとか夢魔とか半鬼とか魔術師とか同級生とかひきつけた死神さん→『月姫』の遠野志貴

英雄の魂飛び交う戦場で魔術師とか英雄とかシスターとかの気持ちを持っていった剣の異端児

→『FateStay night』『FateHollow ataraxia』の衛宮士郎

メイドロボとか同級生とか幼馴染とか宇宙人とかに囲まれてる人→『To Heart2』の河野貴明

獣耳の美少女美女を侍らせた皇様→『うたわれるもの』のハクオロ

三沢何とか→多分ミサワミツハルとか言うプロレスラー。筆者はよく知らない。『烈火の炎』のキャラクター、霧沢風子が掛け声に使っていた。

 

これネタっぽいぞってのを漏らしてたら報告してください。