ああ、マナの樹が枯れていく…… この事をはやく人間界の光の司祭様にお伝えしなければ……

 

 

 

マナのキオク・・・  第一章:すべての始まり

 

 

 

砂の都サルタン。

灼熱の砂漠の入り口として、交易で栄えるこの街も、夜の帳に包まれて眠っていた。

この静かな町に足音がいくつか響いていた。

「ホーク、さきいくぜ。」

「ああ」

一人、また一人と見張りに別れていく。

ただの盗賊の盗みにしては、統制がとれすぎていた。

白い頭巾にマントのいかにも砂漠のいでたちをした人間が二人、猫の獣人が一人。

彼らが見張りを行い、扉の前に立ったのは紫の髪をなびかせた少年・ホークアイだった。

人懐こそうな顔つきと、切れ長の目。金の瞳はその名をあらわすごとくに鋭く、自信に満ちていた。

「ここが標的の家だ。」

「よし、ちょっと行ってくる。」

ホークアイが器用に、鍵穴に差し込んだ針金を動かす。

カチリ、と静かに響いた音に笑みを浮かべると、ホークアイはそばにいた猫獣人に親指を立て、音をたてないように入っていった。

しかし、いざ扉を開けてみると、ひっそりとした家から聞こえるのは家族の寝息ばかり。

ホークアイはなんとなく物足りなく感じながらも前情報にしたがって、音をたてないように二階へ上がる。

「zzzz……」

(ビンゴ!)

そして、階段を上がった先に見えたのは、いかにも成金そうな脂ぎった男と、その足元の厳重に施錠されていそうな金庫だった。

前情報ともあわせて、今回のターゲットは、あの金庫に間違いなさそうである。

足音を忍ばせて、ただひたすらに音をたてないように近づいていく。

「ふごごご……」

と、ホークアイが金庫の鍵に手を書けたとき、男がうなった。

一瞬身を固め、とっさに死角に入るよう、身をかがめる。

そのまま五秒。男の寝息は規則正しいものに戻っていた。

額の冷や汗をぬぐい、扉のときの要領で、鍵に針金を差し込む。

十秒もしないうちに、鍵は開く。しかし、予想以上に大きな音がなってしまい、寝ぼけ眼の男が体を起こした。

「……」

「ふっ、ちょろいぜ。」

「ああ、わしのカネェ!!」

男の目に映ったのは、金庫の中の金を背負ったホークアイの姿だった。男の意識は、一気に覚醒へと引っ張られる。

「わしの金返せぇ!」

「ちっ、起きちまいやがったか。

 まあいい、いい事教えといてやるよ。『悪銭身につかず』ってね。」

けたけたと声を上げて笑うホークアイ。男は、金を取り返そうと手を伸ばすが、ホークアイは軽いバックステップで距離を離す。

しかし、まったくいい教訓を与えているのだが。

「泥棒が言うセリフかぁ!!!」

男の言うことも最もである。

だが、ホークアイは違う違う、とばかりに人差し指を左右に振り、にやりと笑った。

「俺は盗賊、そんで義賊だ。泥棒じゃねぇ。ま、そう硬いこと言いなさんなって。ははははっ。

お互い様だろ?聞けば、あんたかなり悪どくもうけてたそうじゃん。

ま、これで巻き上げられる苦しみ、分かるだろ?額に汗して地道に働けよ!」

「キー、うるせー。キーキー。」

ホークアイの説教も耳に入らない。自分の動きでは追いかけるのも間に合わない。男にできるのは、怒り狂ってうなるだけ。

「ははは、じゃあな!」

ホークアイは後ろの窓を開け、闇夜に躍り出る。後には悔しがる男と紙が一枚。

『ナバール盗賊団参上!悪徳商人?きちんと働けよー。』

ご丁寧にも破った金庫の中に入っていた。

「おーい、ビル、ベン、ニキータ。終わったぜ!」

屋根の上から飛び降りつつ、見張りをしていた同胞に声をかける。

「よし帰るか。しかし遅かったな。」

「まあな。ちょっと、親父に説教してたのさ。」

飛び降りた足で、街を出、仲間たちと合流する少年。

「ふーん。お前そんなに賢かったか?」

「うるせー。」

再び、サルタンには静寂が訪れていた。

 

彼らは、『ナバール盗賊団』という、この灼熱の砂漠のどこかにアジトを持つ義賊集団である。

その信条は、あくどく儲けたものから奪い、それを貧しい人々に施すというもの。

決して真っ当な稼ぎをした人からは盗まず、まして、財のないものから奪うことも決してしない。

そして、その信条を彼らは誇りとしていた。

しばらくしてサルタンに出ていた四人組が、アジトに帰還する。

その足で、首領・フレイムカーンのところへ報告に行った。

「ただいま戻りました。」

「うむ、ごくろう。」

慇懃に答える老翁。その後ろで若い女・イザベラが口を開いた。

「もう、皆には伝えたが、盗賊団としてのナバールは解散し、新たにフレイムカーン王の統治する、ナバール王国を建国する!

 まず、北のローラントを占領する。作戦会議を開くから、部屋で休んでいろ。」

その声には伝達以上の色が見えない。そこで意見を返すことも質問も、認められていなかった。

「分かりました・・・。」

四人には、ただそう言って下がるしかなかった。

そうして部屋を出て、それぞれの自室に戻る。

ホークアイも例外なく、自室のベットで寝転んでいた。

「いったいどーしたんだ……。」

ぼそり、と呟いて思い出されるのは先ほどのイザベラの言葉。

盗賊であることを誇りに思い、侵略などという徒に民草に迷惑がかかることを嫌うフレイムカーンの考えとはどうしても思えなかった。

「あ、ホークアイ戻ってたの。」

「何だ、ジェシカか。」

ひょいと入り口に顔を向ければ、そこに立っていたのは、彼の妹分であり、フレイムカーンの実子、ジェシカだった。

彼女なら何か知っているかもしれない、とホークアイは自身の疑問を投げかけてみる。

「カーン様はいったいどうされたんだ?あんなに誇りを持っていた盗賊団を解散するなんて…。

しかも、自分の命の恩人ってだけでイザベラに、盗賊団の実権を握らせている。一体何故なんだ??」

「パパは、みんなのことを考えて・・・。」

だが、彼女から返ってきたのは、求めていた答えではなかった。それどころか、今のフレイムカーンを擁護するような言葉。

ホークアイの語調が自然、荒くなる。

「はっ、だからってあれだけ嫌ってた『王様』になるってか!?こりゃフレイムカーンの名が泣くぜ!!

俺達は民衆から富を貪る『王制』ってのを許さなかったはずじゃなかったのか!?」

盗賊としての誇り、この盗賊団の誇りを忘れたのか。それを叩き込んでくれたフレイムカーンの態度の豹変が、ホークアイには信じられない。

「パパを悪く言わないで!!」

「おいおい、ジェシカまでどうしたんだ?まさかお前もお姫様になるってか?」

もちろん、それを肯定する妹分にも納得がいかない。

「……バカ!!!」

理解の食い違ったにわか口論の幕切れとしてはふさわしい、一発の平手打ち。

ホークアイの頬にもみじを残し、ジェシカは部屋を出て行ってしまった。

「あててて……あんなに強く殴らなくてもなぁ……。しょうがねえ、追っかけるか。」

少し言い過ぎたか、と反省し後を追ったのだが。

「おいホーク、ジェシカが泣いて走ってったぜ。憎いねこの女泣かせ!!」

「色々女引っ掛けてんだから、少しはこっちにまわせよ。」

待っていたのは、野次の嵐だった。

まあ、傍から見れば、男の部屋から女が泣いて出てきたのである。想像も膨らむというものだ。

「うるせぇよ!」

根掘り葉掘り聞かれるもの面倒である。ホークアイは一旦外に逃げ出した。

「なーんだ、つまんねぇ。」

「まあ、いいじゃねえか。飲もうぜ?」

そして、肴に逃げられた酒乱たちは、肴をほおばりながら酒を流し込んでいた。

さて、逃げたホークアイはというと、イーグルの部屋に来ていた。

「ようイーグル、何やってんだ?」

「それはこっちのセリフだ、何でそんなに息が切れてんだよ?」

棚においてあった水のビンを放り、やれやれといった顔になる。

「ああ、それはジェシ・・・」

もらった水を喉に流し込み、本当のことを言いかけて止まる。

「ジェシ・・・なんだ?」

いぶかしげに眉をひそめるイーグル。

しかし、言えるわけがない。ジェシカの実兄であり、無類のシスコンであるイーグルにジェシカを泣かしたとは言えない。

この前バレた時は、問答無用で切りかかられたはずだ。

「い、いい、いやなんでもない。こっちの話だ。」

「そうか、俺はジェシカを泣かして、それを皆にはやされて逃げてきたのかと思ったよ。」

そしてこれはシスコンゆえか。そのことに関して、イーグルの勘はかなり鋭かった。

「マッサカー。ソンナワケナイダロ??」

「そうだよなぁ、ホークアイならどうなるか分かってるもんなー。」

豪快に笑うイーグルの陰で、ホークアイは安堵のため息を吐いていた。

「ふぅ……ところで、お前はどう思う?」

「な、何がだ?」

突然まじめな顔になったイーグルに、内心びくりとさせられるホークアイ。

本当はバレていて、実は狙われてるのかを疑ってしまうくらい、鋭い顔だった。

「決まってるだろ?親父だよ。あの日、砂漠で行方不明になってイザベラと戻ってきたときから、なんか変じゃねえか?」

話題がまともなものに切り替わる。確かに、イーグルがこんな顔をするのはジェシカの時か、こんな話のときだけだ。

「……やっぱり、お前もそう思うか。」

自分と同じ考えを持っていた幼馴染に、ホークアイは思案の色を見せながら答える。

「だろー?やっぱ俺達、子供の時から一緒にいただけあって考えはおなじだな!!」

「ああ、そうだな。」

ばしばし、とホークアイの肩をたたくイーグル。

どうやら、自分と同じ考えを幼馴染が持っていたことが嬉しかったらしい。

「というわけで、イザベラの周りにはりこんで尻尾を掴んでやろうじゃねえか!!」

「……いつからだよ?」

「今からだ!!」

思い立ったが吉日なのはイーグルのよいところでもあるが、短所でもある。

この場合は、明らかに短所ではないだろうか。

「では、行ってくる!」

「おい、ちょっとま……」

しかも、人の静止を聞かない。これがあいまってしまうと、短所ばかりが強調されることになる。

「行っちまった……もう少し後のこと考えて行動しろよ、ったく……。あーもー!あのバカ一体何処行きやがった!」

ぼりぼりと頭を掻きながら、ため息をつく。イザベラの狙いが分からない以上、あまりに彼の行動は危険だ。

首領の嫡子なら、嫌でも誰かの目に付いているだろうと適当に当たりをつけ、ホークアイは後を追った。

 

 

再び建物の中に入ると案の定、皆が騒いでいる。

「どうした?」

「どうしたもこうしたもねぇよ。イーグル様、どうしたんだ?」

行き当たった同僚の一人に声をかければ、思ったとおり、イーグルを目撃していた。

短い言葉で行き先を問う。

「親父……いや、カーン様の寝床に行くってさ。」 

「そっか、サンキュ。」

いきなり本拠地に乗り込むつもりらしい。

「ちっ、あの猪め。もう少し名前みてぇに優雅に動けってんだ!」

そのまま、フレイムカーンの寝室まで一直線。

いくら入り組んだ盗賊のアジトとはいえ、生まれたときからいる場所だ。最短ルートは既に覚えている。

寝室の前では、門番が二人倒れていた。封鎖の命令を実行しようとしていたのだろうが、強引なことこの上ない。

少なくとも、尻尾をつかむ、などというやつのやることではないのだが。

部屋に入ると、イーグルが憤慨していた。

「遅かったな。何処で油売ってたんだ?」

その台詞に悪びれる様子はない。一度隠密系の修行をやり直すように言ってやろうかとホークアイは思った。

「うるせえ、お前が行き先も言わずに飛び出すからだろーが。」

それでも今はぐっとこらえる。今はそれよりも大事なことがあるのだから。

「すまんすまん。俺は向こうに回りこむ。話し聞き逃すなよ!」

「ああ。」

(ん、二人、いる?それにこの声……カーン様じゃない?)

耳をそばだてる二人に小声だがはっきりとした声が聞こえてきた。

目線の向こうにいたのは、ベッドに倒れたフレイムカーンと、イザベラ、それと彼女と話す、白髪のマントの男だった。

「フフフ、事は順調に運んでいる。……様に報告を。」

「分かった。後、ネズミの始末もしておけ。」

「分かった。」

言い残し、マントの男が消える。

次いで、イザベラが二人のほうを向き、妖艶に笑った。

「さて、坊や達出ておいで。遊んであげよう。」

「ちッ、ばれてたか。行くぞホーク。」

「ああ。」

壁の裏から出、ホークアイは二刀の短剣を、イーグルは長刀を油断なく構える。

イーグルはイザベラを睨みつけると叫んだ。

「一体あの男は何だ!何故親父は倒れている!?」

「ふふふ、坊や達、世の中にはねぇ、知らないほうがいいことがたくさんあるのよ。まあ、知ってしまったからには忘れてもらおうか。ハッ!!」

イザベラは浮かべていた妖艶な笑みから、一瞬で目をきつくする。

急なことに対応できず、イーグルはまともに目を合わせてしまった。

「ぐ、あああぁぁぁ……」

ぬるりと何かが滑り込んでくる。耳から、目から、鼻から、口から、体中のいたるところから入り込んでくる悪魔の囁き。

「イーグル!大丈夫か!?」

(コロセ、ホークアイヲコロセ。)

「やめろ、ホーク……逃げろ……逃げてくれ……」

(アラガウナ。ワレノイウコトニミミヲカセ。カラダヲアズケロ。ソウスレバオクソコノノゾミドウリ、アイツヲコロシテヤル。)

その囁きは、圧倒的な強制力を帯びていた。

「馬鹿な、俺はそんなこと望んで、なん、があああぁぁぁ……」

「イーグル!」

ついにこらえきれず、頭を抱えて、膝を折るイーグル。

駆け寄ったホークアイを、腕で振り払い、獣のように咆哮した。

「がああ、あ、う、う……ホークアイを殺せ、ホークアイを殺せ……」

「そんな、待て!イーグル!!」

否、もはや獣だった。そこにイーグルらしさや、まして、人間らしさは残っていない。

それでも助けようと、止めようとホークアイは手を伸ばす。

しかしその手は、伸ばされるだけだった。

「ホークアイを殺せ……」

「イーグル……やるしかないんだな……?」

豹変した親友の姿に、ホークアイは愛用の短刀を構える。

イーグルはゆらりと身を起こし、焦点の合わない目で、ホークアイを見つめる。

避難のつもりか、中空に浮かぶイザベラは妖艶な笑みを崩さない。

「……………」

「いくぞ!!」

両者は地をけり、互いの刃が交錯する。

先手を取ったのはホークアイだった。

イーグルの長刀を左手のダガーで受け流し、右の峰を首筋に叩きつける。

「いっぺん眠れ!」

イーグルの首が鈍い音をたて、揺らぐ。その隙は見逃さない。

「せーのっ!」

ダガーを離し、イーグルの腹部へ肘を、体を開いて拳をみぞおちへ、あごへ三連続で叩き込む。

そのまま止めとばかりに、後ろ回し蹴りを首へぶち込んだ。

沈むようにイーグルが倒れる。

ホークアイはダガーを拾い上げ、イザベラに向かった。

しかし、イザベラは降りてこない。ただ、中空で不吉に笑っているだけだ。

「何がおかしい!!」

「さあねぇ。強いて言うなら、坊やの甘ちゃん具合、かね。」

「なんだと!?」

イザベラの瞳が怪しく輝く。

同じ手を食うか、とホークアイは目を隠し、懐のナイフを一本イザベラに投擲する。

「まぁ、ちゃちい武器だね。」

投げられたナイフは、イザベラに届くことなく燃え尽きる。

お返し、とばかりにナイフを飲んだ炎はホークアイに向かってきた。

「ふっ、と、当たるか……あぐっ!?」

炎をかわして横に飛びのいたホークアイが、突如感じた首への打撃に呻く。

倒れるのをこらえて振り返ると、そこに立っていたのはイーグルだった。

「おまえ、なん、で……ぐぁ!」

問い詰めるまもなく、みぞおちへの一撃に、ホークアイの意識は闇に落ち始める。

「だから言ったろう?甘ちゃんだって。まあ、坊やを殺さなかったお坊ちゃんも、甘ちゃんって言えば甘ちゃんかね。」

勝ち誇った高笑いを聞く間もなく、ホークアイの意識は途絶えていた。

 

「……ここは!?」

ホークアイが目を覚ますと、そこは牢だった。しかも、ホークアイは知っている。

ここに入れられるということはすなわち、反乱で死刑をくらうことを意味しているのだ。

しかもなお悪いのは、目の前に立っていたのがイザベラだということ。

「やっとお目覚めかい?よく寝ていたね。」

「うるせえ!ここから出しやがれ!!」

牢の格子をつかみ、ホークアイが吼える。

しかし、動じる様子もなくイザベラはゆがんだ笑みを崩さない。

「そう吼えるでないよ。あぁそうだ、誰かに本当の事を話すと、お嬢ちゃんの命はないよ。」

「てめぇ、ジェシカに何をした!?」

つかみかからんばかりに伸ばされたホークアイの手を避けるように、一歩間合いを取り、イザベラは笑う。

「なぁに、ちょっとした呪いのプレゼントさ。坊やさえ何もしなけりゃ何にも起こらないよ。何も、ね。」

「てめぇ……何処まで腐ってやがる!」

「何、人間ほどじゃないさ。」

「……くっそおおおぉぉぉ!」

勝ち誇って去っていくイザベラ。

ホークアイにはその背中を見送るしかできなかった。

ホークアイが牢に入れられた翌日。

「くそ!だせ!だしやがれ!!」

ホークアイは諦めることなく牢屋をゆすっている。外れろ、壊れろ、と念じるように。

声はかすれ、手はこすれて血がにじんでいた。

それでも叫ぶ。ジェシカへの呪いによって冤罪が晴らせないにしても。

幼馴染たちを助けるために、死ぬわけにはいかないのだ。

その思いが天に届いたか。後ろで壁が砕けるような爆音がとどろいた。

「うわ、なんだなんだ?」

否。実際に壁が砕けていた。

もうもうと巻きあがる埃の中に人影が見える。牢の壁を壊してやって来たのは、大きな袋を背負った猫人間・ニキータだった。

「アニキ!助けに来たにゃ!!」

「ニキータ?なんでおまえここに?」

「アニキのピンチを救うにょはおいらにょ役目にゃ!!」

ホークアイの問いに、ニキータは両手をぶんぶんと振って答える。

「……そうか、サンキュな。」

「困った時はお互い様にゃ!ささ、このあにゃから外に出られますにゃ!」

「ああ。」

ニキータの開けた穴を通って道なりに進んでいく。(幸いにも、何故か牢を抜けたことがばれておらず、追っ手はいなかった。)

ナバール城砦の入り口の扉が見えたところで、黙ってついてきていたニキータが口を開く。

「ささアニキ、ここでお別れにゃ。今にゃらローラントへの侵攻であまり人が残ってにゃいにゃ!ささ、お早く!」

「ああ、ありがとな、ニキータ。」

ホークアイは、すっと右手を差し出す。ニキータは少し戸惑ってから、ズボンに手をこすりつけその手を握る。

「あと、ジェシカさんの首輪、あれは『死の首輪』ですにゃ!!」

「なんだそりゃ?」

聞き覚えのない単語に、ホークアイは眉を寄せる。

「『死の首輪』……それは伝説では取り外せにゃい上に、呪ったもにょが死んでみゃうと一緒に死んでしみゃうんにゃ!!」

それはちょっとした呪いどころではない。それがある限り、ホークアイはイザベラに手を出せないということを示していた。

奥歯をかみ締めるホークアイ。

「聖都の光の司祭様にゃらにゃにかいい知恵を持ってるとおもうにょですが……」

その様子に、ニキータもすまなさそうにうつむいてしまう。

「………分かった。ニキータ、ジェシカを頼む。俺は自分で運命を切り拓いていく。そして、必ず戻る!!」

「分かりました。アニキも気をつけるにゃ!!」

拳をあわせて別れるホークアイとニキータ。

ニキータは、ホークアイが外に出てもしばらく、その扉を見つめていた。

「アニキ、お気をつけて……」

扉の外に出たホークアイも、扉に寄りかかり、呟く。

「10数年過ごしたナバールともお別れか。……俺はもう一度、ここへ帰って来る!ジェシカ……イーグル……皆……それまで無事でいてくれ……」

そうしてホークアイは住み慣れた城砦を後にする。その顔に、故郷を旅立つ寂しさはない。

ただ、友を、故郷を救う、その決意だけを秘め。

ホークアイは旅立っていった。

 

 

青年は、必ず故郷に戻ることを堅く胸に誓い、住み慣れた場所をあとにする。

だがこの時青年は、この旅が、抗うことのできない運命であり、世界の命運をかけた戦いに、巻き込まれて行くことなど知る由もない。

しかしこの旅を終え、再びこの地に帰ったとき、青年はどのような決断をするだろう?

その仲間は彼をどのように受け入れるのだろうか……

そう、この物語は始まったばかりなのだ……

 

 

 

 

 

 

 

 

はい、fisher manです。改訂かけました。

あんまりにも、会話ばっかで見苦しいんですよ。

書きかけの頃って、こんなに下手だったんだなーと、自分の進歩も感じつつ、地の文を挿入して。

元ネタを知らない人にも読んでほしいな、と。そんで興味持ってくれたら万々歳です。

感想は掲示板にどうぞ。

                                                    Fisher man