「これで終わりなのだ!!」
金の拳が、銀の魔物を叩き伏せる。ここに、新たなる魔王陛下が誕生した。
戦いを終えて
魔王城・大広間
100人の魔王候補の内、敗れた98人が一堂に会していた。
もちろん目的は、ゼオンとガッシュの最終決戦。
勝ったほうが王になるのだから、注目が集まるのは当然である。
広間のディスプレイでは、決戦が繰り広げられていた。
『あぁぁぁぁぁ!!』
『く、来るな!!』
掛け声と共に怯えるゼオンの腹に拳が食い込む。
『グハゥッ!!』
ゼオンがひざを折り、魔本に火がついた。
仲間たちからわっと声が上がる。
「あいつとうとうやりやがった!!」
「あの落ちこぼれがねぇ…」
その中に、ピンクの髪は、揺れていない。
魔界門(ゲート)
ピンクの髪が揺れている。
ティオはゼオンの魔本に火がついた後、一目散にここに向かって駆け出した。
ここは人間界と魔界とを行き来できる唯一の場所。
人間界から帰ってくるにはここしかない。
途中、ボロボロのゼオンとすれちがったが、ゼオンは、ティオに一瞥くれただけで、苦々しそうに去っていった。
ほっと息をつくティオ。
ティオが到着すると、それを待っていたように魔法陣が脈動を始める。
現れたのは、見慣れた金の髪。
今や、魔王となった、一番の親友だった。
「ガッシュ!」
「ヌ?ティオか?何でこんな…ヌォ!?」
何も言わさず、ティオはガッシュに抱きついた。
「ヌゥ、どうしたのだ、ティオ?今さっき別れたばかりであろう?」
「バカッ、ボロボロになって!」
「見た目だけなのだ。」
「うるさい、バカ!」
ガッシュを叱りつけ、サイフォジオを唱える。
光剣は、ガッシュの傷を癒していった。
「ヌ、ありがとうの。」
「約束守ってくれたから。」
あの日、そして、自分が帰る前に交わした約束。
ガッシュはそれをはたして、王になって帰ってきた。
「ヌ、それは清麿のおかげなのだ。」
へらへらと笑うガッシュ。屈託のない彼の笑みが、なぜかティオには懐かしかった。
「…お帰り、ガッシュ。」
「ヌ、ただいまなのだ。」
「お?いたいた。」
そこへ、わらわらと仲間たちがやってきた。
「ほら、王様の凱旋よ!」
トン、とガッシュを集団のほうへ押しやるティオ。
突然のことに、ガッシュは、つんのめりながら集団に向かっていく。
キャンチョメ、キッド、ウォンレイ、ダニー、テッド、レインなど、見知った顔が頭をはたきながらねぎらいの言葉をかけていく。
「やりやがったなぁ、ガッシュ!!」
「すごい、すごーい」
「兄貴分として鼻が高いぜ。」
「やったね、ガッシュ。」
「やったゲロ!」
「カウカウー。」
「メルメル」
バランスを崩したまま、集団をくぐり抜けた。
倒れた先にあったのは、コルルの姿。
「…ありがとう、約束守ってくれて。」
「ヌ、もちろんなのだ。」
優しい王を目指したきっかけ。
その、二度と見たくない涙を流した女の子。
しかし、何かしらの感慨が生まれる間もなく、ぶち壊される。
「ガッシュちゃ〜ん!!」
「パ、パティなのだ!!」
一目散に駆け出すガッシュ。
仲間たちはそれを見て、やっぱりガッシュだ、と笑っていた。
逃げるように広間にガッシュが到着する。(パティは追いついたビョンコに止められた。)
百人の魔物の子が、厳粛な雰囲気の下、整列した。
大臣らしき魔物が、声を上げた。
「ガッシュ・ベルよ。前へ!」
呼ばれたガッシュが、大臣へと近づく。
「魔王の名において、そなたを王太子とし、これより十年の研修期間を設ける。」
つらつらと証書を読み上げる大臣。
「よいな?この戦いを勝ち残ったお主のことだ。心配はしておらぬが、しっかりとやるようにな。」
そのまま顔をガッシュの耳元に近づけ、ぼそぼそとなにかを伝えると、証書を手渡す。
その言葉に、ガッシュは困ったような顔をしていた。
大臣は進み出て、残りの魔物へ声をかける。
「敗れた魔王候補諸君、ご苦労であった。これからそなたたちは自由だ。その代わり、人間界での行動によって罰をうけてもらう者もおる。そこは心するように。今日のところは自宅に帰ってのんびりするがよい。」
その大臣の声を最後に、魔物の子達は、思い思いに散っていった。
そして、彼らも色々な道を歩み始める。
ガッシュはもちろん魔王研修。
ティオは救護班に志願、多彩な盾と治癒術で活躍している。
キャンチョメは変化の特訓。フォルゴレの大怪我が彼を奮起させたようだ。
ウォンレイ、ブラゴ、バリー、ダニー、レインなど、腕に覚えがある魔物は軍に志願。
それぞれの持ち味を生かし、功績を積み重ねていた。
キッドは、高名な戦術家に弟子入りし、ナゾナゾ博士からの知識を飛躍させている。
ウマゴンは、足の速さを生かした飛脚便。彼に言わせると、重い荷物を背負っての特訓もかねているそうだ。
コルルも、術の発動で意思を乗っ取られないよう、訓練を受け始めた。
パティはビョンコと共にたくさんの色々な特訓。曰く、ガッシュちゃんに見合う女性にならなきゃ、とのこと。
レイラやパムーンなど千年前の魔物は、人間界での行動に応じて、色々な生活を送っていた。
デモルトやベルギムなどは、肉体労働に回っているとの噂もある。
なお、ビクトリームは、メロンをよこせ、と暴れていた。
ゾフィスは、結局牢屋に繋がれた。
千年前の魔物を復活させたのはよかったが、それを利用したこと、パートナーたちの心を操ったことはあまりにも大きな罪だった。
ただ彼自身にとっては、ブラゴから身を守れる分だけマシかもしれない。
ちなみに他にも色々な魔物が罰を受けたが、牢屋につながれたのは彼だけだった。
こうして、様々に日々を過ごしながら、十年の月日が流れた。
ほとんどの国民が見守る中、ガッシュが王座へと上っていく。
前魔王が、自らの王冠を取り、ひざまづいたガッシュにかぶせた。
ガッシュが王座についた瞬間、ワッと完成が巻き起こった。
「新魔王陛下、ばんざーい、ばんざーい、ばんざーい。」
それをガッシュが立ち上がって制する。
「今ここに、わたしは即位した! ともに、暮らしやすい魔界を作っていこうぞ!」
ガッシュの言葉に国民が沸き立った。
その光景は魔界の未来、そして繁栄を象徴しているようだった。
はい、こんにちは。久しぶりのこっそり更新は、先に、この話の閉めの訂正でした。
訂正前のパートは、なんと言うか、中二病くさすぎた、という事で忘れて下さったら幸いです。
Fisher man