桜の咲き乱る春。

それが示すのは別れ、そして…

 

戦いを終えて (人間界)

 

 魔物の戦いから8年。

 パートナー達はそれぞれの道を歩んでいた。

アポロは財閥の社長。ナゾナゾ博士はあいもかわらず、豪邸で何をしているかよく分からない。

フォルゴレは、00Fシリーズが更なるヒットを皮切りに、様々なヒット作の主演を遂げライクリン映画賞を総なめにし、名実共に『世界のフォルゴレ』となった。サンビームは相変わらず自動車会社に勤務を続けている。リィエンも変わらず山奥で畑を耕しているし、シェリーもベルモント家の党首におさまった。

 清麿は高校卒業後、イギリスへ留学。清太郎のいる大学で考古学を専攻し、今年卒業を控えている。卒業後も、大学の研究チームへの就職が決まっていた。

 恵もあの後、高校を卒業、今や、寝る間もないと言われるほどのトップアイドルへと上り詰めていた。

 一応二人は、今も連絡を取り合い、世間一般で言う恋人の関係になっていた。デートの際は、ばれたりしないか、ヒヤヒヤ物なのだが。

 そんな、ある春休みのことだった。

 

 

午前8:30。

 久しぶりに日本の土を踏んだ清麿は、モチノキ町の駅前でベンチに腰掛けていた。何故こんな朝早くから、というと、待ち合わせのためである。

 これが単なる友人なら、「うるさい。」などといって断るのだろうが、相手は恵であった。自分の恋人であり、忙しいスケジュールの合間をぬって会いに来てくれる彼女の願い(世間一般には呼び出し、とも言う。) を聞かないわけにもいかず、こうしてここにいるのである。

「しっかし、どうしたんだろう。」

 恵が現れない。約束は8:00だったはずだ。

 30分くらいの遅刻はいつものことなのだが、今日はなぜか胸騒ぎがする。まさか誰かに追われていたり…

 そんなところまで考えた時だったか。

「ごめんなさい!!」

 突然現れた女性が清麿に声をかける。清麿が顔を向けると、その女性はなぜか帽子を脱ぎ、コートを裏返しに着なおしていて、(リバーシブルだったらしい)そのまま清麿にキスした。その腕が清麿の首にまわされる。

 一瞬の静寂。

そして何故か、清麿もその女性を抱きしめた時。

「あれ〜?どこいったんだろ〜。」

「こっちに来たと思ったのにね。」

二人の女子高生がこちらに来ていた。

「あ、あの人たちにき…もがっ」

 そのうちの独りが清麿たちに気づいて声をかけようとするが、

「バカッ、お邪魔しちゃ悪いでしょ。ほら、あっち行くわよ。」

「もが。」

清麿たちがやっていることにまで気づいたもう一人が口をふさいで、そのまま引き摺っていった。

 見えなくなったのを確認して唇を離す。

「もう大丈夫みたいですね、恵さん。」

 もう一度確認して清麿が言う。

「ねぇ、いつ私って気づいた?」

 コートを着なおす前にいたずらっぽく聞く。しかし清麿は、照れる様子もなくしれっと答えた。

「キスの感じです。あんなに俺になじむキス、恵さんにしか出来ません。」

 その言葉に、ぼっと赤くなる恵。

「や、やだ、清麿くんったら…」

「さ、いきましょう?」

 その様子に少し微笑んでから、恵に帽子を渡して歩き出す。

「あ、待ってよ清麿くん!」

 その後ろを頬を染めたまま、恵が追いかけていった。

 

 

「初めて会ったの、ここだったね。」

 隣町の会館。8年前の恵のコンサートの日、出会い、初めて共闘した場所。

「はい。あの時はびっくりしましたよ。突然コンサートが中断したと思うと、血まみれのガッシュが客席に来たんですから。正直、お前何やったんだって思いましたよ。」

 当時を思い出し、肩をすくめる。

「ふふっ、あのときの清麿くん、とってもカッコよかった。こんな男の子もいるんだなって。」

「…ありがとう、ございます。」

 テレながらも礼を言う清麿に、恵は再度いたずらっぽく笑う。

「ね、あの時、清麿くん私のことどう思った?」

「えっ…。」

 今度は成功したようで、清麿は答えに詰まる。

「私は、さっきも言ったけど、かっこいいなって。頼りがいがあって、冷静で、優しくて。ほとんど一目惚れみたいなものだったかな。」

 今度は清麿が赤面する番である。

「ね、どう思った?」

 さらに追い討ちの上目遣い。以前は少しかがんでいたのに、いつからか、清麿が追い抜いてからはかがむ必要がなくなって、不意打ちしやすくなった、清麿の弱点である。

「…きれいな人だなって、思いました。さすが人気アイドルだって。」

 観念したように、目をそらしながら清麿は答えるが。何故か不服そうな顔の恵。

「むー、それだけ?」

 少しすねたように頬を膨らませる。

「すいません…」

「いいよ別に。そんなトコだろうなって思ってたし。だから嬉しかったなぁ、清麿くんから告白してきてくれた時は。だって絶対そんな対象に見られてるって思ってなかったもん。」

「…そうですか…」

 清麿の赤が、紅になる。

「ティオ達もいなくなってさびしかったから、本当に嬉しかった。あれからもう8年たつんだね…。」

 未だ鮮やかに浮かぶピンクの髪の少女。色々喧嘩などもしたけれど、今ではいい思い出である。

 放って置くとしんみりしてきそうだから、と恵は「次行こ?」と清麿の背中を押した。

 

 

「まだここは健在ですね。」

 モチノキ遊園地入り口前。

 何度か、つぶれるだの、移転するだの、という噂が流れたが、噂は所詮噂だった、と主張するような盛況ぶりだ。

「ね、今ならティオ達ジェットコースターにのれるかな?」

「さあ、どうでしょう。普通に育ってたらもう乗れると思いますけど…」

 大きく育った姿が思い浮かばない。浮かぶのは、いつまでたっても、幼くゆれる、金とピンクの、あの時の少年少女なのである。

「もし次に会うことがあったとしても、記憶の中のガッシュ達のままなんでしょうね。」

「うん。さ、せっかくだから乗っていこ?」

 しばらく悩んで笑いかけた清麿の手を取って、恵はチケットをひらひらさせながら歩きだした。

もちろん清麿の、「…いつの間にチケット買ったんです?」なんて質問はさらりと無視して。

 

 

 夕暮れ。場所はモチノキ岳頂上広場。ここは8年前、この世界から全ての魔本が消えた場所である。

 遊園地でひとしきり遊んだ後、二人はこの場所に来ていた。

「ここ、でしたね。」

「うん。」

 あの戦いが、昨日のように思い出される。

 ゼオンとの白熱の戦い。そして、全てが終わった後のガッシュの帰還。

「ねぇ、清麿くん。」

 しばらくの沈黙を破って、恵が口を開く。

「今日呼んだのは、言いたかったことがあるからなの。」

 一呼吸おく。

「あ、あのね、清麿くんが告白してくれたのも、ここだったよね。」

 だんだんと恵の頬が赤くなる。

「ティオ達もいなくなった後で、寂しかったんだ。それに、先輩関係でもめてた時期だったから、本当に嬉しかった。」

 とここで、思い出して恥ずかしくなったのか、清麿が慌てて口を開いた。

「あ、いえ、その、あの時はただ、恵さんと離れたくなかっただけで…」

 のだが、それはどうも墓穴を掘ったようで、

「そんなに私のこと想っててくれたんだ。」

 清麿は赤くなって押し黙ってしまう。それを見て恵は続ける。

「だからね、絶対今度は私が言うんだって決めてたの。それもここで。」

「…」

「だから、言わせて。」

 清麿は、顔を引き締めて、次の言葉を待つ。

 恵も、その赤くなった顔を上げ、清麿の目を見据えてはっきりと言った。

「私と、結婚してください。」

 1番言いたかった、しかし、言えなかった言葉をようやく口にする。

「…おれ、イギリスの研究チームに就職決まってますよ…?」

 嬉しさと驚きが等分に隠れた声。

「知ってる。清麿くん手紙で言ってたじゃない。」

「…恵さんに寂しい思いをさせるかもしれませんよ?」

 その声には信じられない、という色も多少見える。

「仕事が忙しいのはお互い様じゃない。私だって、寂しい思いさせるわよ。」

 覚悟の上、とでも言う様に思いのこもった声。

 その覚悟と思いを感じながらも、清麿の口からは、

「…本当に俺なんかでいいんですか?」

 というような台詞しかでてこない。

しかし。

「ううん、清麿くんじゃなきゃダメなの。」

 恵のダメ押しに、

「…わかりました。こちらこそ、よろこんで。」

 清麿も、笑った。

 さらに恵は、いたずらっぽく笑う。

「結婚するんだから、さん付けと敬語、やめてよねvv

「ハイ…」

 

後日、恵のコンサート会場。

ヒット曲等2,30曲を歌い終え、舞台袖にはける恵。会場はもちろん、アンコールの嵐である。

それに応えて、恵が現れた。

「みんなー!!今日はありがとー!!」

 ワッと観客が声援をあげる。

「アンコールの前に、皆に、大事なお知らせがあります。」

 観客の声が静かになり、ざわめきへとかわっていく。

「実は私、結婚することにしました。」

 「えー!!」という困惑の大合唱。

 その声を抑えるかのように、恵は続ける。

「本当は、8年前から交際してたの。それが今度、彼の方も一段落ついたから、とうとう結婚ってことになったの。」

 再びやってくる静寂。

「みんな、祝福してくれる?」

 その声に反応して、ポツリポツリと拍手が生まれ、やがてあふれんばかりの音の洪水となった。

大きすぎてはっきりとは聞こえないのだが、「メグー、おめでとー!!」とか、「幸せにねー!!」などの声も聞こえる。

 いつしか、恵の瞳からは、涙があふれていた。

「みんな、そんな、ありがとう…」

 恵コールは、いつまでもやむことはなく、アンコールに入るのがしばらくはばかられたほどだった。

 

 

「よかったですね。ファンにも認めてもらえて。」

 コンサートも終わり、夜道を歩く二人。

「うん。まあ、認めてくれなくても結婚はするつもりだったけど、やっぱり気分はいいかな。

 コンサートの打ち上げも早々に、途中で抜け出してきたのである。

「恵さん。」

「ううん、恵。前も言ったでしょ?」

 つい、とつめよる。

「…そうでした。」

「敬語も。」

 少し膨れる。ちょっと気に食わないようだ。

「ごめんなさ、ごめん。」

「ん。よろしい。」

膨れた頬が一瞬で戻った。

「で、なあに?」

 先ほどの呼びかけの続きをうながす。

 その腕を、清麿は何も答えずに引いた。そのまま、唇を重ねるだけの短いキス。

「もう放さない。ずっと一緒にいてくれ。」

 そのまま、強く抱きしめる。

 恵は、答えの変わりに、清麿の唇へと、唇を合わせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

約束とほとんど変えてません。付け加わったのは、他のパートナーの行方だけ。申し訳ないです。
元々『約束』はそのための話だったのですが、6話までが出来るまでのつなぎであの形でした。
そのまま変更するのを忘れていたのはこちらのミスです。スイマセン。

                                              Fisher man