「……」
ホテルの一室。
頭に手をやり、苦虫を噛み潰したようなアレン。
目の前には、エプロンをつけたラビ。その手にはみたらし団子。
「ほれー、アレン食うさ〜。俺が愛情込めて作ったんさ〜。」
うりうりと団子を突きつけてくる。
その表情に、照れ、などというかわいらしいものはかけらもない。あるのは満面の楽しみ、それと笑い。

ラビのわな

「……いい加減にしてくださいよ!!」
とうとう我慢が出来なくなって押しのけるアレン。
それにあわせて、ラビは演技過剰気味に、しりもちをついた。その様が、何故か妙に板についていて、逆に気持ち悪い。
「一週間、毎日毎日毎日……一体何のつもりなんですか!!」

たれたみたらし団子のたれをふき取りながら、火を噴くように純粋な怒りの言葉を吐き出すアレン。
しかし、対するラビは動じる素振りさえ見せない。アレンの怒号などどこ吹く風である。
「だってさー、前、エプロンつけてみたらし団子毎日作ってくれたらアレン惚れるって言ったじゃんよー?」
事の起こりは前に好みのタイプを聞かれたとき、アレンがそうもらしたことだったらしく、しおらしい台詞をはくラビ。

言葉だけを聞けば、けなげで心打たれることは間違いない。間違いないのだが、如何せん、その顔がこれ以上ないくらい楽しそうに笑っている。
……声を上げるのだけは必死に我慢しているようだが。
「そ、そんなの女性限定に決まってるじゃないですか!!誰が男になんか!!誰が好き好んで男色家になったりしますか!?」
その態度は更なるアレンの怒号を引き起こす。もちろんそれはラビの狙い通りであり、冷静を欠いたアレンは、その手のひらで転がされていた。
そんなこととは露とも気づかないアレン。くねくねと、わざとらしくしなを作るラビに、イライラを募らせ、どんどん冷静さを欠いていった。

「じゃあさじゃあさ、これリナリーとかがやってくれたんなら惚れんの?」
さらに、誘導。アレンに、ここでリナリーが出てくることに疑問を覚える余裕はなく、そのままぶちまけるように、言葉をつむぐ。完全に売り言葉に買い言葉だ。
「ええ、もちろん惚れますよ!?それにリナリーかわいいですし、ラビみたいに性格悪くないですし!?もしもそんなことになったら、不満なんかあるわけないじゃないですか!!」
と、そこで扉が開いた。
慌ててアレンが振り向くと、扉の向こうにいたのは、ブックマンだった。
「何を騒いでおる。しかし、よくもまあ、あのようなことが言えるのぅ。」
かっと赤くなるアレン。まさか、先ほどの話を聞かれているとは。
ふと目をやると、ラビが腹を抱えて笑っていた。その顔には、してやったり、という笑みが浮かんでいる。
やられた、と後悔が走る。どうやらというかやはりというか。ラビは、始めから計算していたようだ。
それこそ、ところかまわず一週間も続けた、このみたらし団子とエプロン。
泊まっているホテルの壁の薄さ。
果てはアレンとリナリーの部屋が隣同士になったこと。

全ては、初めから狙われていたのか。
ココまで狙われると、逆に感嘆の念を抱かざるをえない。
だが、その感嘆もある事実に気づいて一気に吹き飛んだ。

「……まさかっ!」
離れていたブックマンにも聞こえたのだ、ならば隣の部屋にいるリナリーは……
「……もちろん聞かれておるじゃろうな。」

わたわたと慌てふためくアレン。
ろで流れるやれやれといったブックマンのため息と、ラビの笑い死にしそうなほどの笑い声も耳に入らない。
ただ、わたわたと慌てふためきつつも、ラビに引導を渡すことだけは、硬く決意したアレンだった。

「あ、リナリー……」
「……(フイッ)
「……」
「……」
「ラビ……覚悟はいいですね?」
「わ、ま、待つさ!やっぱ暴力は良くないさ!話し合おうさ!言葉は人類最高の発明さ!話せば分かるってー!!」
「ふふふ、聞く耳持ちません。」
白い、一閃。

 

 

 

 

 

 

 

はい、Fisher manです。……一体何処で間違ったんだろうなぁ。

みたらしエプロンから始まったんですが、ラビ、とどめ指されちゃってますし。

まあ、壊れアレリナ、としといてください。ではまた。

                                        Fisher man