「これからはずっと一緒だよ!」
抱き合ってしばらく。
「さくら、遅刻しそうじゃなかったのか?」
「あっ!!」
さくらと小狼とすれちがい
キーンコーンカーンコーン・・・
「おはよ〜、間に合ったぁ。遅刻するかと思ったよぅ。」
ぎりぎりで教室に飛び込むさくら。
友枝小上がりの友人たちが拍手している。
「さくらちゃんおはよ〜、相変わらずすごいね〜。校庭から教室まであっという間だよ〜。」
知世が声をかける。
「さくらちゃん、今日は一体何がありましたの?またお寝坊ですか?」
「それもあるけど…もっと凄いことがあったの。あのね知世ちゃん…」
ガラガラ…バタン。
今朝の出来事を知世に話そうとしたさくら。こころなしか顔が赤い。
だがそれは、先生の到着により阻まれてしまった。
「ほい、席につけよ〜。今日はH.R.の前にお知らせがある。転校生の登場だ。」
シ〜ン。みんな騒がない。転校生がどうでもいいのか、興味がありすぎるのか。
「転校生は、なんと外人だ。はい、何人だと思いますか?」
先生が問うとみんな口々に叫び始めた。
「アメリカン!」「イギリシアン!」「メキシカン!」「カナディアン!」「コリアン!」「チャイニーズ!」「ルーマニアン!」
「イタリアン!」………と世界の国々が上がっていく。
「はいはい、静かに〜。今正解が出たな。中国人だ。香港から来たそうだ。しかし言葉のコミュニケーションは心配するな〜。
3年前まで日本に2年間、なんと、友枝小にいたそうだ。いくらか面識がある奴もいるかも知れんな。」
にこやかに転校生を紹介をする担任。
何かピンと来たのか、知世は隣のさくらに声をかける。
「さくらちゃん、もしかしてその転校生というのは……」
真っ赤な顔でさくらが頷いたのと、小狼が入ってきたのは同じ時だった。
二人以外の友枝メンバーが驚くなか、小狼が自己紹介を始めた。
「李小狼です。香港から来ました。中には初めてではない人もいると思いますがよろしくお願いします。」
ぺこりと頭を下げた。
「うし、席はどこにするかなっと…どこが空いてる?」
教室中をじろじろと見回す担任。やがてどこにするか決めたのか口を開いた。
「よし、李、お前の席は……佐伯の後ろだ。
何かあったらちゃんと先生に言えよ。むしろ俺を頼れ!頼りまくれ!
もちろんうちのクラスはいい奴だから、誰に聞いてもいいからな。っとさて連絡を始めるぞ…。」
小狼が席に着いたのを見計らって、メモを読み上げていく。
程なくしてチャイムがなった。
「さて、一限目は俺の数学だ。覚悟して準備して置くように。」
そう言い残して担任は去って言った。
休み時間になり、さくらが小狼に話しかけようとした時だった。
どっと女子が小狼に群がってきた。
「あらあら、李君大人気ですわね。」
もうすでに輪の外からでは小狼の姿は確認できない。
「本当だね〜。近寄る隙もないよ〜。」
「転校生って珍しいからね〜。」
「さくらちゃんライバル出現だね。」
わらわらと、友枝メンバーがいつの間にか集まってきた。
「うん…。」
「そんな、ショック受けないで。選ぶのは李君なんだからさ。」
この時はみんな小狼の転校生人気も、一日二日で終わるものと思っていた。
だが、ことはそう簡単ではなかった。そう、事態は何日も続いたのだ。
学校案内に始まり、何かと理由をつけて小狼を連れ出して、さくらに話す隙を与えない。
そんな日が何日も続く。
(どうもこのクラスには小狼が特上に見えるほど男がいないらしい。まあ、小狼の容姿自体も中の上〜上の下に属しているのだが。)
そんな『会話お預けの日々』が続くうちに、さくらの様子がおかしくなっていった。
「さくらちゃんおはようございます。」「おはよ……。」というようにまったくもって元気がないのだ。
これはかなり重症である。
そんなある日、帰り道で知世が聞いた。
「さくらちゃん、このごろ元気がないのは李君のことですの?」
「……うん……。」
うなだれるさくら。その声はとてもか細い。
「私に話していただけませんか?」
「……うん、……あのね……」
さくらはポツリポツリと話し始めた。
小狼と話せないことに始まり、邪魔のタイミングがよすぎることからのわざとではないかという女子への疑い(きっと偶然。)、
自分と話せなくても小狼は平気なんじゃないかという小狼への疑い、なんとなく女子に囲まれる小狼が嬉しそうなことなどを、
知世にぶつけていった。
話し終えたとき、さくらの目には涙が浮かんでいた。
「そうですか…3年かかってようやく会えましたのに、お話のお預けは大変ですわね。
いえ、おたがいの姿が見える分、今のほうがお辛いかもしれませんね。」
さくらの事は何でも分かる知世(原作参照)。さくらの辛さも理解したもよう。
少しさくらを落ち着かせた後で、さくらに言った。
「私が思いますに、李君に正直にさくらちゃんのお気持ちをお話してみるべきでしょう。
ここで私がどうこう言っても仕方ないでしょうから。」と。
さくらは話して幾分元気が出たのか、うん、と返事をし、少し明るめの声で言った。
「分かった。明日話してみるよ。でもどうやって二人きりになろう…。」
「でしたら、明日の放課後、校舎裏で待っていてください。李君にそう伝えます。」
翌日の放課後。知世は小狼に声をかけた。しかし、どたどたとお邪魔隊が現れた。
「少し待っていただけませんか。私、李君にお話しがありますの。」
当然お邪魔隊はひかない。バチバチと音を立てて火花が飛び散る。
バトル―知世VSお邪魔隊―
知世の先制攻撃!!涼やかなる威圧!!
「どいていただけませんか?」
お邪魔隊はすごすごと引き下がった!知世の圧勝!!
―バトル終了―
「お、おぼえてなさいよ〜。」と、捨て台詞を残してお邪魔隊は逃げて行った。小狼は安堵のため息を吐き出した。
「ありがとう、大道寺。毎日あれで疲れてたん…」
「そんなことよりも!!」
知世は強い語調で小狼の言葉をさえぎった。
「はやく、早くさくらちゃんの所へ行ってあげてください!校舎裏にいますから!会ってしっかりお話ししてきてください!
さくらちゃんを元気付けられるのは李君しかいないんです!!」
「分かった。すぐに行くよ。」
そう言って小狼は走りだした。
校舎裏につくと、元気のないさくらがいた。微笑んではいるがどこか悲しそうだ。
「さく……」
「小狼くん、私のこと嫌いになっちゃったの……?」
呼びかける声をさえぎり、さくらは問いかけた。
「な……」
焦る小狼。まさかこんなことを聞かれようとは。
違うと答えたいのに、ショックで答えられない。
「ねえ、どうなの?」
さくらの目には涙が浮かんでいた。
「ねえ、……」
3度目の言葉を発した時、さくらは何が起こったか分からなかった。
ただ腕を引かれる感覚があった。
「ごめん。」
頭のすぐ上から声がかけられた。
そう、さくらは小狼の腕の中にいたのだ。
「ひぐっ、ひぐっ、ひぐっ、えぐっ………」
その言葉を聞いたとたんさくらは泣きじゃくった。最愛の少年の腕の中で。
そんなさくらに、小狼は諭すようにそれでいて誓うように言う。
「さくら、信じてくれ。俺は…、俺はお前を嫌いになったりしない。この先何があろうとも、愛しているのはさくら、お前だけだから。」
「本当なの?」と、すっと顔を上げるさくら。
そこには耳まで真っ赤になった小狼がいた。
その顔に満足したのかさくらは一言、信じるからね。その言葉。と呟いた。
いくばくか経った後、さくらの涙が止まったのを確認して小狼は腕を放した。さくらが、本当は不安だったんだ、と切り出す。
「だって小狼くん女子に囲まれてた時なんか嬉しそうだったから。」
「いや…あれは…嬉しくないって言ったら嘘になるけど…」
「あ、やっぱり嬉しかったんだ。」
さくらは冷たい目を向ける。
「あ、う、出、でも困ってたんだ。7割は困ってた。」
さくらは冷たい目のまま、「ふーん、3割も嬉しがってたんだ。」とあしらう。
小狼は困って言葉が出ない。
「ふーんだ。もういいもん!」
さくらがプイっとそっぽを向いて帰ろうとした時。
「待ってくれって。さっきの言葉信じてくれないのか?」
切実な声がかけられる。
その声に満足したのか、さくらは笑いながら言った。
「信じてるよ。ちょっと小狼くんを困らせたかっただけ。」
その言葉を聞いて小狼は笑わずにはいられなかった。
「フッフッフッ。これはスクープだわ…」
こんな言葉を呟きながら、二人を物陰から見つめる、カメラとペンとメモ帳を持った怪しい人影があった。
1ヵ月後、校内新聞にでかでかと、「お騒がせ転校生、熱愛発覚!?」との見出しと、泣いているさくらを抱きしめる小狼の写真と、
笑いあう二人の写真が貼り出されていた。
これにより、二人が冷やかされ、からかわれたのはもちろん、全校公認の仲になったのは言うまでもない。
おしまい
注意。
この話の最後のように無断で新聞記事にしたりすると訴えられるかもしれません。
必ず本人の了解を得てからにしましょう。
よい子はまねしないでね。
あー終わった。初リクのさくらx小狼で嫉妬話。ホントはドロドロの予定だったのよ。
でもね、知世ちゃんのイメージを黒くするために戦ってたら、砂糖魔神とタッグをくんでたの。
で、勝負に負けたからこんなに甘い小説になっちゃたの。まあ、別の意味でドロドロしてたからいっか。
Fisher man