「清麿くん、明日暇?」

「ええ、まあ。」

始まりはこんな会話だった。

 

 

 

 

「一番なのだ!!」

ガッシュの大きな声。

それに続くのはもちろん、

「違うわよ!私のほうが速かったわ!」

抗議するティオの声。

「ほらほら、けんかしないの。」

なだめるのは恵。

そして、

「はぁ、はぁ…」

何もいえないのは、一番大きな、いや、多くの荷物を持った清麿。

「ついた、のか…?」

自分の体重の半分はあるであろう荷物をおろし、滝のように汗を流す。

「ヌ、ごくろうさま、なのだ。」

荷物を引き取るガッシュら。

清麿はそこに座り込んで、

「ったく、一体何が入ってんだ?」

愚痴をもらすが、

「女の子は色々と入用なの。ね、恵。」

「そうそう。ごめんね清麿くん。」

謝られると、もう何も言えない。

そして、黙ってしまう清麿をよそに、

「じゃあ、お弁当にしましょうか。」

「「さんせー!!」」

次の行動が決まった。

 

 

「ごちそうさまでした。」

「おそまつさまでした。」

弁当を食べ終わり、手を合わせる。

今日は4人でハイキングに来ているのだ。

声をかけたのは恵。この場所は、前の撮影の時に見つけたそうだ。

「ふー、おいしかったのだ。」

腹をさするガッシュ。

「当たり前よ。私が丹精込めて作ったんだからね。」

手際よく弁当箱にふたをしていくティオ。

実際、ティオの腕前は日に日に上達していた。

時々差し入れとして持ってきてくれる弁当 (清麿には恵の分があり、食べないので見栄えだけだが) も、

今では、遊園地の時とは比べ物にならない。

「じゃあ、遊んでくるね〜!」

「行ってくるのだ〜。」

今食べ終わったと思ったら、声だけを残してもういなかった。

 

 

「元気だなぁ…。」

先ほどの荷物運びがこたえているのか、感嘆するしかない清麿。

「フフフ、確かにね。でも、清麿くん、ご苦労様。」

コポコポとお茶を注ぐ恵。そして、清麿に手渡した。

礼を言いながら受け取る清麿。

「しかし、まさかあんなに重いとは。ジャンケンなんて軽々しく乗らなきゃよかった。」

先ほどの大荷物はジャンケンで負けた者が全員の荷物を背負うという簡単なゲームだったらしい。

大方、言い出したのはガッシュかティオであろう。

その後は、たわいも無い話をした。

恵の職場のこと、仕事の内容、清麿の友人の話、互いのパートナーのこと。

そして、日常。互いの知らない、互いの日常のこと。

しばらく話した後、不意に恵が寝転んだ。

「どうかしました?」

「ううん、別に。そうだ、清麿くんもどう?」

ポンポンと隣をたたく。まるで清麿を誘うかのように。

どことなく不思議そうにしながらも、誘われるままに、しかし少し遠慮がちに、清麿は隣に寝転んだ。

「空は、大きいね。」

「はい。」

目前に広がる大きく青い空。そして白い雲。

とても高く、遠くまで続く蒼。

「なーんかこうやってると、私達ってちっぽけに思えてこない?」

自分の悩み、考え、感情、そして自分の存在。果ては、

「俺達だけじゃなくて、空にとったらこの魔物の戦いもちっぽけかもしれませんよ?」

自分たちをひきあわせてくれた、100人の魔界の王を決める戦い。それすらも、空にとっては些細なこと。

「そうかもしれないね。」

それ以上は何も言わない。

ただ、ただ空を見つめる。

 

 

それから、どれほど過ぎただろうか。

恵がうつぶせに体を変え、ひじを立てて上体を起こし、清麿の顔を覗き込む。

「ねぇ。」

少し、さびしそうな目。

「また、来ようね。」

「ええ。」

少し間が空く。そして、恵の口から、小さな声が漏れた。

「ティオかガッシュ君が王様になっても。」

ティオかガッシュが王になる。それはつまりこの戦いの終結を意味している。

そして、自分たちを今つないでいるものの消滅を。

清麿もそれを察している。それでも清麿はこう答えた。

「はい。」

そう、自分たちのつながりは、ガッシュ達がいなくなってもなくならない。そう信じて。

信じて、笑いあう。

と、辺りを見回す恵。

「どうしたんです?」

「うん、ちょっと眠くて。」

欠伸交じりの声。彼女は今日の休みを取るために、一体どれだけスケジュールを詰めたのだろうか。

その苦労を清麿が感じた時、不意に恵がいたずらを思いついたような顔になり、

「えい。」

清麿に飛びついた。

「えっ、ちょ、ちょっと恵さん!?」

慌てて離れようとする清麿だが、

「だーめ。清麿くんも一緒に寝るの。」

「はい?」

からりと拒絶される。

しかもその理由が、

「だって寝顔見られるのはずかしいから…」

なのである。

しかも胸に顔をうずめて。

さらに、

「…だめ?」

とどめの上目遣い。

もうこうなると、清麿が抵抗できるはずもなく、

「…もうどうにでもしてください…。」

赤い顔で観念した。

 

 

ガッシュとティオが帰ってきたとき。

「ウヌ?清麿と恵殿はどこに行ったのだ?」

元のシートのところに二人の姿はなく、

「ほんと、変ね。どこ行ったのかしら。」

荷物だけが残っている。

「ヌウ…」

探しに行くべきか、行かざるべきか。

「うーん…」

悩んでいると、かすかに寝息が聞こえてきた。

「なーんだ。」

そちらへ行った、ティオとガッシュの見たもの。

「ここにおったのか。おい、清むぐっ」

それは、少し朱のさした顔で、穏やかに眠る清麿と、

「バカッ、なにやってんのよ。」

彼に寄り添い、幸せそうに眠る恵の姿だった。

 

 

 

 

〜おまけ・1〜

「清麿、やっと起きたのだ。」

「ガッシュ?ん?今何時だ?」

「もう7時よ。」

「えっ、そんなに寝てたの?」

すでに、辺りを包むは闇の黒。

 

 

 

 

〜おまけ・2〜

「それにしても恵〜、大胆ね〜。」

「な、何が?」

「とぼけないの。清麿と一緒に寝てたでしょ?」

「…」

「幸せそうだったわよ〜。よかったじゃない。」

「!!」

「ほら、色々話してよ、二人っきりで何してたの〜?」

ティオの追及(からかい)はこの後深夜まで続いたそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

ハイ、Fisher manです。どうだったでしょうか?

個人的には、上手くいったような、ちょっとわけ分からないような、って感じです。

では、また次のお話で。