「アレンくん。」
「なんです?」
任務に向かうため、地下水路から旅立とうとしたアレンを呼び止める。
「死なないで帰ってきて。」
言うことはひとつ。
いつ死んでもおかしくない世界にいる自分たちにとって、切なる願い。
「もちろんです。」
少し張り詰めた顔のリナリーに、アレンは笑いかけた。
「…約束よ?」
「当たり前ですよ。」
いつものへラッとした笑顔で。
そのまま、すっとリナリーの耳元に顔を寄せる。
「まだ、リナリーに未練がありますから。」
「もうっ!」
照れて怒るリナリーから離れ、船に向かう。
「必ず帰ってきます。だから、帰ったらお帰りっていってくださいね?」
「うん。アレンくんもそのときはただいまって言うのよ?」
はい、と返事をして、アレンは小船に乗った。
それを待っていたように小船が岸を離れる。
その姿が見えなくなるまで、リナリーはずっと見送っていた。

2005.05.11
お兄ちゃん(アレンxリナリー…?)[D.gray-man]

「コムイさん、リナリーが結婚しちゃいますよ?」
死んだように寝ていたコムイが、むくりと起き上がる。
いつの間にか手にはドリルが握られていた。
「おはようございます。」
「ああ、アレンくん。おはよう。」
どう、左手は?と付け加える。
ボチボチですと答えながら、苦笑するアレン。
他愛ない話の後、気になっていた疑問を、少し戸惑ってから口にする。
「…コムイさん、ホントにリナリーが結婚するとき、どうするんですか」
「え?何が?」
何の話?と、どこ吹く風のコムイ。
「え、だってこのネタじゃないと起きないからっていつも使われてるのに、未だに起きるんですから、よっぽど気にしてるんでしょ?
 だから、もしリナリーが結婚したりしたらどうするのかなって。」
少し深刻そうな顔でもするか、と思っていたが、やはりコムイに変化はない。鼻歌まで出ている。
「だって、リナリー結婚しないし。」
「…はい?」
しかも、返ってきたのは思いもよらない答え。
「だ〜か〜ら〜、リナリーは結婚しないの。」
「え、でも…」
「しないったらしないの!!しないんだい!!」
…取り付く島もない。駄々っ子のようにひたすら否定するコムイ。
こうなると、もう手がつけられないのはいつの時代も同じである。
「…はぁ、そうですか。」
「うん。そゆこと。それじゃあね。」
「…失礼します…」
あきらめて、アレンは科学班室長室を出て行った。
「ん、だから、アレンくんにはあげないよ?」
「えっ!?」
あわてて振り返っても、コムイは鼻歌を歌いながら、ひらひらと手を振るだけだった。

2005.04.18
ばか(アレンxリナリー)[D.gray-man]

「バカ。」
不意に、口から出た言葉。
「はい?」
「バカ。」
聞き返すアレンに、もう一度同じ言葉を。
「えっと…リナ…」
「バカバカバカバカバカバカバカ…!!」
ただひたすらに繰り返しながら、リナリーはアレンの胸を叩き続ける。
「アレンくんの大バカー!!」
「!ゲホッ…」
とどめの一撃。入りどころが悪かったのか、アレンは少しむせた。
「なんであんなことしたの!?死んじゃうとこだったじゃない!!」
突き飛ばしたアレンにただ罵倒する。
「また一人で先走って!どうして一人で行っちゃうの!?」
「ごめん、リナリー。」
少し、自嘲気味に謝るアレン。しかしリナリーは罵倒をやめない。
「なにがごめんよ!!私たち仲間でしょ!?もっと頼ってよ!!」
一人で先走らないで。一人で危険に飛び込まないで。もっと仲間を頼って。
ただ、そう伝えたい。じゃないと。
イツカカレガキエテシマイソウデ。
メノマエカライナクナッテシマイソウデ。
ただそれが怖い。失いたくない。その思いが。
「私たちを、私を、もっと頼ってよ…。」
彼女にこの言葉を吐かせる。
「ごめん、リナリー。」
その思いを感じ取って。
アレンは謝ることしかできなかった。

2004.12.29
こっそり その2(アレンxリナリー)[D.gray-man]

アレン君のバカ。
なんでも一人で背負い込んで。
自分だけアクマの魂が見えるからって、一人で責任感じて、先に立って。
何のための仲間なの。
何のために私たちがいるの?
助け合うためでしょう?
なのに、どうして。
どうして一人で背負い込むの?
なんで、頼ってくれないの?
もっと、頼ってよ。
もっとアレン君の事教えてよ。
もっと私を頼ってよ…。
アレン君の、アレン君の。
…アレンの、バカ。