2005.04.15
きまり(ホークアイxリース)[聖剣伝説3]

「ちょ、やめてください!!」
リースは男の腕を振り払おうとするが、力の差だろう、外れない。
「イーじゃねーか少しぐらい。ちょっと付き合えよ。」
しかも質の悪いことに男は大変に酔っており、なおかつかなり力も強かった。
ぐいぐいと引っ張られていく。
「そこまでにしていただこうか、ねぇ、オッサン」
と、人垣の中からかなりドスの利いた静かな声が聞こえた。
紫銀の髪を揺らしながら、見たこともない笑顔でホークアイが歩み出てくる。
「ホークアイさん!!」
うれしそうにリースは声を上げ、邪魔されて男は不機嫌な声を出す。
「なんだぁ?てめえは。関係ねぇのは引っ込んでろよ。」
とうとうホークアイの逆鱗に触れた。
この男、かなり酔いが回っているようである。
戦い慣れしていない素人でさえ感じられる、それほどまでに放たれているホークアイの殺気を、感じ取れていなかった。
リースから手を離し、ナイフを構える。
それが、致命傷だった。
「引っ込むのはお前だよ。リースは俺の、恋人だ。」
一撃。拳が顔にめり込み、体が大きくバウンドする。
本来の彼の戦い方である、すばやさを駆使する戦法とは対極の、力技。
「手ぇだしていいものと、いけないものの区別はつけろよな?」
仰向けに倒れた男の顔から二センチ空けて、ズドン、と足を振り下ろす。
あくまで笑顔で。しかし、尋常でない殺気を引き連れて。
顔の傍にできた足形に顔をゆがませた男が、言葉にならない叫びを上げて逃げさる。
その後姿が消えた後、ようやくホークアイから殺気が消えた。
「あの、ありがとうございます。」
解放されていたリースが歩み寄る。
「いや、俺は当然のことをしたまで。後、あいつは個人的に許せなかったから。」
リースの礼に軽く答え、男の去ったほうを睨み付ける。
「どうしてですか?」
「決まってる。俺のリースにちょっかいかけた。」
その言葉に、不思議そうだったリースの顔が、ボンッ、と赤く染まった。

2004.07.23
ホークアイ[聖剣伝説3]

一目惚れってあるんだな。
それが彼女と会った、最初の感想だった。
今まで、いろんな娘とそれなりの付き合いをしてきた俺だけど、はじめての経験だった。
でも、話を聞くうちに、これほどマナの女神を恨みたくなったのもはじめてだった。
だって、彼女はローラント王国王女で、アマゾネス軍団長。
殺されそうになったこともあった。
実際侵攻に加わってないといえ、父親の敵の仲間だもんな。
それでも、一緒に旅をするうち、許してはくれたらしい。
頼ってもくれるし、色々してくれる。
本音を言えば、旅が終わって欲しくない。
罰当たりな勇者だな。
世界が平和になって欲しくない選ばれし者なんてな。
でもそうだろ?旅が終われば、分かれなきゃいけないんだから。
どうにかしたい。どうにもならないかもしれないけどな。
俺は、どうすべきなんだろうな?

2004.07.22
リース[聖剣伝説3]

ナバールは敵。お父様を殺した敵。絶対に許さない。
そう思ってました。思ってたんですけど…。
あの人は違いました。
最初聞いた時は、ホントに、刺し殺そう、敵を討とうと思いました。
でも、一緒に旅をするうちに、色々ありましたが、いつのまにか、心を許してしまっていました。
今では、大事な人です。
でも、旅が終わったら、別れなければなりません。
お互いの国の事情が一緒にいることを許してくれません。
ホークアイさん、あなたは、それをどう思いますか?
私は、いや、です。
あなたがどう思っているかは分かりませんが。
この状況を打開することは出来ないんでしょうか…。

2004.04.01
嘘(ホークアイxリース)[聖剣伝説3]

「リース、何してるの?」
「クッキー焼いてるんですけど?」
どうりでいい匂いが漂っている。
「一個ちょーだい。」
「だめです。」
ゴン、と衝撃を受ける
「な、なんで?」
「ホークアイさんの分は無いからです。」
さらりと言ってのける。
ショックすぎて何も言えないホークアイ。
その様子に満足したのか、笑い出すリース。
「嘘ですよ。ちゃんとホークアイさんの分は材料とってますから。」
ホークアイの顔が輝く。
「フフ、後で一緒に焼きたて食べましょう?」
「おう!」

2004.03.04
嘘じゃない(ホークxリース)[聖剣伝説3]

「リース?」
そっと、名を呼ぶ。
「何ですか?ホークアイ」
いつもの笑顔で返事が返ってくる。
「平和だな…。あの旅が嘘だったみたいだ。」
空を見上げ、ふと思い出す。世界を救うために、世界を駆け巡った旅。
「いいじゃないですか平和で。そんな事言ってると罰が当たりますよ?それに…」
少したしなめる様に言ってからホークアイの顔を覗き込み、微笑む。
「それに、あの旅があったから、今こうして一緒にいるんです。」
「今この時が、あの旅が嘘でない証拠?」
「そういうことです。」
微笑みあい、空を見上げる。
目に映るは青き空。空に流るは白き雲。

2004.03.16
会いたい(ホークアイxリース)[聖剣伝説3]

リースは迷っていた。
このままナバールへ行くべきか行かざるべきか。
今日はホークアイの誕生日。
ナバールでのパーティに呼ばれたのはまだいい。
しかし、陰謀のごとく仕事が忙しかったのと、突然の招待状で、プレゼントのことをすっかり失念していたのだ。
「どうしましょう…」
後悔しても仕方ない。プレゼントのことは悪いとは思ったが、会いたかった。
パーティの後、もう夜遅かったが、ホークアイを呼び出してそのことを伝えると、意外にもあっさり許してくれた。
が、
「そのかわり、明日一日付き合ってよ。行きたいトコがあるんだ。」
と、交換条件が出される。
アマゾネス達には、明日の夕方には帰る、と伝えてある。
仕事もある程度片付けてある。
断る理由はどこにもない。
何より、どこへ連れて行ってくれるのかリース自身が楽しみにしていた。
承諾すると、喜んだ顔で
「じゃあ、夜更けごろ起こしに行くね。皆にはバレたくないから。」
と言って、手を出してきた。
リースはその手を迷わず握り、並んで歩き出す。
さて、明日はどこに連れて行ってくれるのだろうか…。
リースの頭はその事で一杯だった。