2005.03.17
いちばん(フィオルテxクレイア)[月の鏡]

「クレイアちゃ〜ん…」
機嫌をうかがうような猫なで声。
「なんですか。」
冷たい物言い。どうやらかなり怒っているようだ
「…ゴメンなさい。」
「いいですよ、別に。私よりもあの方のほうがいいんでしょう?」
どうやら、デートの途中で、他の女の人に目を奪われたらしい。
クレイアの眉がつりあがっている。
「ちがうよ。いつも言ってるでしょ?俺の一番はクレイアだって。」
ひたすら下手に出ていたフィオルテの顔が、急に真剣になる。
「…何度目ですかその言葉。」
俯くクレイア。フィオルテは優しく微笑みかける。
「何度だって言うよ。クレイアが信じてくれるまで。」
「…もう信じられないって言ってるんです!!」
顔を上げたクレイアの目には、涙が浮かんでいた。
「一番は私だって、言ってくれるのは嬉しいですよ!?でも、でもあなたはいつも、私といる時だって他の女性に目を奪われてる!!
本当は、もっとこっちを見て欲しいんです!!」
涙が、こぼれる。
「一緒にいる時くらい、目移りしないで私だけを見て欲しいんですよ!!」
感情の吐露。言うまい、我慢しようと考えていた負の感情。醜い嫉妬心をぶちまける。
フィオルテは、嗚咽するクレイアを何も言わず抱きしめた。
「ごめん。」
そうして、ただ謝る。
クレイアは、その胸でただ泣きじゃくった。
長くためてきた、我慢してきた感情が溢れるように、ただただ、泣き続ける。
「もう、言葉は、充分です。今度は、態度で、示して下さい。」
「分かった。ごめん、クレイア…」

2005.04.14
帰る(ハリーxハーマイオニー)[ハリーポッターシリーズ]

「ねぇ、ハリー?」
遠慮がちにたずねてみる。
「どうしたの?」
クスリと笑うハリー。
寝転んだ野原の花をいじりながら、ハーマイオニーに注意を向ける。
「…ううん、なんでもない。」
一瞬躊躇し、そのまま言いたいことは言わなかった。
否。言えなかった。ハリーの笑顔の裏に、彼の過酷な運命が重なったから。
ハリーは何も言わない。ただ笑って空を見ていた。
一陣、風が二人をなでていく。
次に口を開いたのは、ハーマイオニーだった。
「でも、これだけは忘れないで。」
少し真剣な口調。
「今のあなたは一人じゃない。ロンも、ウィーズリーさん達もダンブルドア校長をはじめ、たくさんの先生方だって、みんないる。それに…」
頬を少し朱に染め、言葉を紡ぐ。
「それに、私だって…わた…」
ハーマイオニーに唇を重ね、その先の言葉をふさぐ。
「わかってる。わかってるよ。」
唇を離したハリーの顔は、やっぱり笑顔で。
「いつだってお帰りって言ってあげるんだから!だから、ちゃんと、どこに行ってもちゃんと帰ってきてよ!!」
ハーマイオニーの頬を、こらえきれなくなったしずくが伝っていた。
「分かってる。絶対、帰ってくるよ。何があっても、何処からでも。必ず、君のところに。」
そう言って、ハーマイオニーを抱きしめる。ハリーの腕の中で、彼女は、ただ、泣き続けた。

2004.12.29
こっそり(賀茂xたま?)[天国に涙はいらない]

ある日の帰り道。
「あの、律子さん。」
タマがふと声をかけた。
「こんぜんこうしょうって何ですか?」
「どうしたの?突然」
少し驚いたように、ちっとも驚いてない声で答える。
「いえ、葉子さんがこの間賀茂さんに、『まさかもう婚前交渉まで!?』って詰め寄ってたんです。
 私とそれをしたんじゃないかって。それで賀茂さんに聞いても答えてくれませんでしたし、辞書にも載ってなかったんです。」
その言葉に、律子はそのときの賀茂の顔を浮かべる。
「で、何?知りたいの?」
その顔は好奇心で満ち満ちている。
「あ、はい。できれば、ですけど。」
「じゃあ教えてあげる。あのね…」
顔を寄せてそっと耳打ちする。
すると、言葉を聞くうちにたまの顔がどんどん赤くなっていく。
「えっ、そ、そんな意味だったんですか!?そんな、わ、私と、か、賀茂さんがその、あの…」
その様子に律子は満足したようだ。
「ほら、照れない照れない。結婚したら毎晩でもすることなんだから。そんなに恥ずかしがってちゃいけないでしょ。」
そんなわけあるか。たまも恥じる歳ではないかもしれないが、律子は律子で落ち着きすぎている。
そして、頬に手を当てて照れまくっているたまに声をかけ、すたすたと歩いていく。
その後を、ようやくおいていかれそうなことに気づいたたまが、小走りに追って行った。

2004.07.03
吉田一美[灼眼のシャナ]

はじめてあったのは、四月の入学式の時。
その時に、この人だ、と思ってから、きっかけがつかめなくて。
ようやく話し掛けられたのが、あの体育の授業。
その時から、ゆかりちゃんの気持ちに気付いて、負けないって決めた。だから、負けない。絶対に負けない。
坂井くんのことだけは強気になろうって決めたから、負けない。
ゆかりちゃんには負けない。
それから、坂井くんに、好きです、って言う。
その時に、私のこと、好きだ、って言ってもらえるように、もっともっとがんばらないと。

2004.03.18
夜(森写歩朗xジルコニア)[僕の血を吸わないで]

「ねぇ、森写歩朗…何処にいるの…」
窓から夜空を見つめ、ため息をつく。
そういえば、自分がここに来た日もこんな夜だった。
今では彼の代わりに自分が住んでいる。
「ねぇ、森写歩朗、今日は貴方の誕生日なんだよ…?連絡くらいくれたっていいじゃない…」
半年ほど前、ブラックウィナー壊滅の際。
彼はミサイルから飯波市を守ると言って飛んで行った。
それきり消息不明になっている。
死んでいるかもしれない。
だが、生きていてほしい。
もう一度、あの笑顔を見せてほしい。
「森写歩朗…」
夜空を見上げ、一人、ジルは、泣いていた。

2004.03.19
気持ち(啓太xようこ)[いぬかみっ!]

「ケ〜タ〜♪はい、これあげるっ♪」
家に帰るなり、ようこが飛びついてきて紙包みを渡す。
「ん〜?なんだこりゃ?」
不思議そうな顔の啓太。
「あのね、今日ケータお誕生日だってはけが言ってたから。」
ちまちまと啓太のくれるおこづかいを貯めて買ったもの。
初めて、啓太のことを考えて。
啓太には内緒で。
啓太が何をほしいか、一生懸命に考えて。
喜んでもらえるように。
気に入ってもらえるように。
「ねえ、開けてみてっ♪」
「おう。」
果たして啓太は喜んでくれるのだろうか?