そう、すべてはあの日だった。十二年前の、あの日。




囚われた娘

あの日、狼が、父と、母を殺した。

そいつは6歳だった私に楽しむような冷たい目をむけこう言い放った。

子供(ガキ)か、お前はまだ壊しがいが無いな。」

怯えていた私の耳に兄の声が聞こえ、私は玄関に向かい兄に助けを求めようと走った。

そこで、私の意識は途切れた。背中に狼の爪痕を残して。





アレから10年。私が高校二年のとき。

私は、あの狼を探すために長野県のとある高校に行っていた兄に、狼の目星をつけたから、と呼ばれた。

私の能力(チカラ)で見分けるつもりなのだろう。あの時から私に与えられた能力(チカラ)で。





そこで私は確かにオオカミを発見した。

だがその人は兄がノーマークだった、一人の男子生徒。

とにかく私は、彼を殺すべく銀の弾丸を込めた。

それを、買い物帰りに公園で休んでいる彼に向け、隙を狙うべく観察した。

しばらく観ていると、彼は泣いている少女に気づいた。

そして、木に引っかかった風船をとってあげた。オオカミに変身して。

あの狼と同じ銀の毛並み。でもやったことは正反対。

私は引き金を引けなかった。彼に興味でもわいたとでも言うの?




一晩悩んで、翌日そのことを彼に話した後、あの日のことを話した。

背中の爪痕を見せると、彼は一言謝ってこう言ってくれた。

「僕が楓さんを守る」って。

正直な話、変な人、何言ってるのって思った。でも少し嬉しかった。のかしら?





ゴードンおじさんが来てるから二日間変身するなって言った時もあった。

でも、変身した。私を助けるために。殺されるかもしれないのに。

私は率直に聞いた。そしたら彼は笑って答えた。

「言ったじゃない。僕が楓さんを守るってさ。」

それを聞いたとき、何かが変わった気がした。

彼は隣で積み木をカチャカチャしてたけど。

この頃からかしら、彼が気になりだしたのは。



そういえばキスもしたわね。3、4回。

最初は一応ファーストキスだったんだけど。

まさか獲物だと思っていたオオカミの彼とすることになるとはね。

思ってもみなかった。

押し倒される形になったこともあったわね。

爪痕を見せた後で、ブラウスを着てる途中。バナナを踏んだ彼が…。

しかもタイミングよく唐子さん達が入ってきて。彼、大変な目にあってたっけ。でも、彼って純情だったのよね。

爪痕を見せるためにブラウス脱いだ時も、銀花ちゃんが来た時だって、泊まってく?って聞いたら真っ赤になってうろたえてたわ。

オオカミなのにそういう所は人間らしかった。




・・・口では否定してたけど、やっぱり私は彼のことが好きだったんだと思う。

だって、彼のお見舞いに行こうと思ったのだって、彼とのキスが嫌じゃなかったのだって、

すき焼きパーティするって自宅に誘われても断れなかったのだって、そう考えれば納得がいく。

でも、彼には唐子さんがいた。だから…ね。





けど、彼のおかげで変われたのは間違いない。兄さんもそう言ってた。

確かにあの狼は憎いわ。今でも。だけどあの狼だけ。

昔みたいにすべての狼が憎いわけじゃない。やさしい狼もいる。

そう思えるようになったんだから。





「楓さ〜ん。」

そうそう、彼ってこんなのんびりした羊みたいな声してた。

「楓さ〜〜ん。」

…変ね。いくら彼のこと考えてたからって二度も幻聴がするかしら?

「楓さ〜〜〜ん。」

「駒犬君!?」

声にしたがって窓から見下ろすと、彼がいた。

「駒犬君、どうしたの?」

「実は、アメリカでもやっちゃって。」

恥ずかしそうに頭をかく彼。

「まあいいわ。上がって。ここじゃ話しにくいでしょ。」

「そうだね、すぐ行くよ。」

そういって彼はドアをくぐった。

でも驚いた。彼のこと考えてたら、本当に彼が来るなんて。

こんな偶然ってあるのね。まあいいわ。彼に会えたんだし。

唐子さんには悪いけど、このくらい、いいわよね。

日本にいる唐子さんには届かないと思うけど、『ごめんなさい。』









はい、いかがだったでしょ〜か。100のお題その2『囚われの娘』。しんどいバイ。疲れたバイ。

楓さんがなんかこう原作と違ってる気がする。ま、いいや。なんとなく納得できる内にあるから。

さてお次は・・・?『天界』?・・・やべえ、思いつかん。何にしよう・・・。

                                           Fisher man