ウェンデルで
ここはウェンデル。迷える子羊となりし人々が訪れる街。
しかし今日のここは神殿への参拝客だけで賑っているわけではなさそうだ。
どうもお祭りらしい。そこを6歳くらいの少女と13歳くらいの少年が歩いてくる。見方によっては兄妹に見えなくもない。
「なあシャル、まだいるのか。オイラもう疲れたぞ。」
ケヴィンがシャルロットに声をかける。
シャルロットは頬を膨らませている。
「もーへばったんでちか。なさけないでちねえ。」
「なさけなくていい。オイラ疲れた。」
「わかりまちた。じゃあいっかいおじいちゃんのところににもつおいて、もういっかいでてくるでち!」
比較的軽そうな荷物ばかり持って、とっとと走っていってしまうシャル。
「おい、まて。」
慌てて追いかけるケヴィン。
神殿に着くともうシャルロットは荷物を置いて外に出てきていた。
「ケヴィンしゃんおそいでち!はやくにもつおいてとっととでてくるでち!だいにじんにれっつごうでち!!」
ケヴィンはうんざりした表情で聞く。
「うーまだいくのかー?」
「もちろんでち!!さ、はやくおいてくるでち!」
ケヴィンは諦めて荷物を置きに行った。
出てくると、シャルは「さあ、はやくいくでち!!」と叫んで消えていった。
ため息をついた後、ケヴィンはシャルロットをおいかけていった。
次に神殿に戻ってきた時は、さすがに第2陣ともなると買うものもなくなるようで、
シャルロットの手に風船が握られているだけだった。
「さすがになんもありましぇんでしたね。」
「だからオイラ言った。もーいくのやめようって。」
「う、うるさいでちね、ケヴィンしゃんはだまってこのシャルロットさまについてくればいいんでち!!」
シャルロットは振り向いて怒る。
「シャル、後ろ向いて歩く、危ない。転…」
ケヴィンの声がとぎれないうちに、ベチッとにぶい音がした。
「うええええん、いたいでちー。」
「だ、大丈夫?」
少し困ったように聞くケヴィン。どうも泣いた子供のあやし方は知らないらしい。(笑)
「うー、どうしよう…?そうだ。」
少し悩んだあと何か良い考えでも浮かんだようだ。
「シャル、あんまり泣くとヒースさんに笑われるよ?」
ヒースはシャルロットの憧れの神官。
その彼に笑われるという言葉は、シャルロットを泣き止ませるのに充分効果のある言葉だった。
「ふぇ、そ、そうでちね。でもなんでここでヒースをだすんでちか!!」
「ははは、やっとシャル笑った。シャルは泣いてる顔より笑ってる顔のほうがずっといい。」
シャルロットはその言葉をきいて、照れ隠しのように怒った。その振り上げた手から、風船が離れていった。
「なにいってるんでちか。このシャルロットちゃんはうちゅういちのびしょうじょなんでち。ないてるかおもかわいいにきまってるでちよ!!…あれ?」
不思議そうに手を握って開いてを繰り返しているシャルロット。どうやら風船が無いことに気づいたらしい。
「ケヴィンしゃんふうせんがないでち!さがすでち!」
「風船、木に引っかかってる。」
風船は見たところ、ケヴィンが手を伸ばした高さより少し上にあるようだ。
「んんー、少し届かない。」
「そんなこといわずにもっとこうてをのばすでち!」
そんな問答を続けること十分。ケヴィンが気づいた。
「シャル肩車だ。肩車すればきっと届く!」
「あ、そうでち!なんでそんなかんたんなことにいままできづかなかったんでち!」
早速ケヴィンはシャルロットを肩に乗せ、風船の下まで進んだ。
「とれたかー?」
「とれたでちー。やっぱりさっさとやっとくべきでちたね。」
その声を確認し、ケヴィンは、シャルロットを降ろそうとする。
しかし、シャルロットはしがみついて離れない。
「うー、シャル早く降りる。」
「いやでち!このままへやまでとつげきでち!」……
「うー、分かった。」
「わーい。やったでちー。」
そのまま二人は神殿の中へ消えていった。
はい、これもフォルセナでと同じ目的で書いたものですが、トラブルで、展示したのはこっちだけということになったやつです。
少しケヴィシャル風味です。
やはりこの絵を描いて下さったのも紫葵様です。
しかし書いてて自分の文章力の無さが浮き彫りになりそうです。
もっと精進せねば!!
Fisher
man