| 1.プロローグ | ![]() |
2.航海日程 |
|---|---|---|
| 3.帆船「あこがれ」とは | 4.いざ太平洋の海原に向かって出航 | |
| 5.船内用語 | 6.帆を張る | |
| 7.2−6 Heave | 8.1日目が終わる | |
| 9.2日目船上トレーニング開始 | 10.カツオが釣れる | |
| 11.初めてのマスト登り | 12.帆を張る時の合図用語 |
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| 13.当直 | 14.炊事当番 | |
| 15.ブリッジ内の様子 | 16.当直開始 | |
| 1.プロローグ |
| 「あこがれ」は、大阪市所有の帆船である。昨年の8月までは、そんな船があることすら知らないし、帆船そのものにも興味がなかった。 しかし、生来好奇心が強く単純な性格から、昨年の8月にロングステイクラブの仲間とヨットセイリングに行った時「あこがれ」の話が出て面白そうだなと思ったら、さあ行ってみようということになった。当初は、仲間と3人で行く予定であったが、仲間が二人共に都合が悪くなり結局自分一人になってしまったものの、行きたいという気持ちが抑えられず、とうとう単独での参加になった。 とにかく、何も判らないでの参加で、帆船でどのようなことをして、どのようなルートで、何処に行くかもはっきり確かめずに参加した。ただ、判っているのは、太平洋を航海するということだけであった。全くノー天気も甚だしいところである。良いに付け悪いに付け、結果的にこれほど初体験ずくめのエキサイティングな航海になろうとは、夢にも思っていなかった。費用的にも、13泊14日で187千円と決して安いものではなかった。結論を先に言うのも何であるが、結果としてあれだけエキサイティングな経験をさせて貰ったので高いものではなかったように思う。 この体験記が、自分の思っていること、考えていることをうまく表現出来るかどうか判らないが、コツコツと綴っていきたい。 (続く) |
| 2.航海日程 |
航海日程といっても船の場合、特に帆船などの自然の力、風を利用して走る船は、あってないようなものである。もちろん、あこがれは、320馬力のディーゼルエンジンを搭載しているものの、速力は8.5ノット(約16キロメートル)/時で、今回の航海では、帆を張っても(フルセイルは出来なかった。)せいぜい11ノット(20キロメートル)が最高速度であった。さらに、海が荒れたりしたら速度は落ちる。ただ、今回の日程は、14日間で大阪南港と小笠原諸島父島を往復してくる航海なのでゆったりした日程である。 当初の予定では、小笠原諸島父島に滞在は、1日間であったが、往く途中で怪我人が出たので予定より1日早く父島に行ったので、怪我をした人は気の毒であるが2日間滞在出来たことは、非常にラッキーだと言ってもよい。 航海結果 出発 : 平成19年3月8日(木)14時 小笠原諸島父島到着 : 平成19年3月12日(月)17時頃 小笠原諸島父島滞在 : 平成19年3月12日(月)-15日(木) 小笠原父島出発 : 平成19年3月15日(木)14時 大阪南港帰港 : 平成19年3月21日(水)16時半 ![]() 出航前の大阪南港ATCビル前オズ岸壁の「あこがれ」 上表おおよその1日の日程 (続く) |
| 3.帆船「あこがれ」とは |
あごがれは、大阪市が1993年に青少年の人間教育の場を提供すると言うことで建造された。建造費は、約14億円と聞く。おりしも、当時大阪オリンピック誘致に動いており、そのPR活動と各国と友好を広めるためにも活用されることになり、2000年には、その一環としてワールドセイル2000に出場し、世界一周を果たしている。本来の目的である、青少年の人間教育の場として、セイルトレーニングということで、多少厳しいプログラムも組まれている。僕など、年配者にとって、高い金を払い、何故青少年と同じよう訓練を受けなければならないのか乗船中自分自身葛藤していた。結局は、少し苦しかったものの参加して良かったという結論になった。日常生活では味わえないファンタスティックな体験を数々させて貰った。豪華客船に乗ってクルージングするのとは、全く違い特別な感慨がある。 また、再度乗船するかと言うことについては、たぶん再度乗船することはないと思う。参加者は、26名であったが、若い人が5人で後は、50歳を過ぎた人ばかりであった。さらに、リピーターが半数以上である。リピーターの中には、船酔いし苦しい思いをしても、また次参加しているのである。余程、帆船が好きなのか、マゾヒスティックな性格なのかよく判らないが、根強いファンがいるということである。 この帆船ツアーを我々と同年配の人に勧めるかということに関しては、勧める相手の体力次第と言うことになる。かつ船酔いをしないこと。また、足腰が丈夫でマストなどにも上がっていける人。そういう人には、大いにお勧めするが、それ以外の条件を満たさない人に関しては、止めといたほうが良いという結論になる。 しかし、あの体験は、是非してほしいとも思う部分ある。この辺は、あくまで自己責任での判断となろう。ただし、今回の航海は、太平洋の真っ只中を航海したもので、瀬戸内海や沿岸部を走るのとは、全く波の質が違う。振幅に格段の差がある。一度経験したいと思う人は、とりあえずは、短期航海型の瀬戸内海クルーズから入っていった方がよいと思う。 とにかく、話の種は尽きないクルーズである。 右図 帆船「あこがれ」の概要 (続く) |
| 4.いざ太平洋の海原に向かって出航 |
| 13時55分にあこがれは、大阪南港オズ岸壁を離れ太平洋小笠原諸島に向かって出航した。 参加者の一人が、代表で船が出航する時の定盤であるドラを鳴らして船出の合図を行った。岸壁には、参加者の家族であろう人たちが見送っていた。何だか、今から太平洋の海原に向かって出航することについて特別な身震いするような感覚を覚えた。おりしも、晴天波静かで絶好の船出日和であった。その後の、大時化に遭うことなど夢にも思えないような静かな船出であった。 出航前、まず乗船式が行われた。乗船式といっても、そんなにたいそうなものではない。さらに、ワッチと呼ばれる班分けが行われた。参加者は、26名、クルーが10名、ワッチオフィサーと呼ばれるワッチの世話役であるボランティアスタッフが5名の総勢41人の乗り組みとなる。 ワッチは、スピカ、ヴェガ、リゲル、カペラの4班。僕の班は、スピカで写真のメンバーである。これからの2週間、班として共に行動していくことになる。 とりあえず、船内では、ニックネームで呼び合うことがルールであり、もちろん僕は、「ステジイ」と名付けた。他の班員は、ポパイさん、クロサさん、ゆめさん、かおちゃん、ミスターモー、そしてワッチオフィサーは、ぎっちょんちょんさん。これからの2週間親しみを込めてニックネームで呼び合うことになる。 出航後、船内探検と自分の部屋を案内された。自分の部屋は、船の一番前の1号室。10人部屋であるが、参加者が少なかったので、5人で使えることになり、すべての人が、2段ベッドの下を使うことが出来た。 それから、帆の張り方について簡単なレクチャーを受け、その後、帆を張った。ほとんどの船の中の呼び方が英語であり、直感的でなく苦労することになる。 ![]() (続く) |
| 5.船内の用語 |
| 船の中は、殆どが英語の呼び方になる。例えば、船の右舷をスターボードと呼び、左舷をポートと呼ぶ。この呼び方の由来は、はっきりしないのであるが、通常岸壁に接岸する場合、左舷接岸を行う。左舷に岸壁(港)があるからポート。右舷は、星空が見えるからスターボードと言われるのらしい(部屋割も地位の高い人の部屋がスターボード側になる。)。我々日本人にとって、右舷、左舷の方がより直感的で判りやすいのであるが、ヨットそのものが、イギリスが発祥(?)なので、すべてその呼び方に統一されている。 その他の呼び名を紹介しよう。 メスルーム−食堂、ギャレー−調理室、ブリッジ−航海船橋甲板(これは、航海監視操舵コントロール司令室で一般的にはブリッジの方が直感的)、キャビン−部屋、バウデッキ−船の前部分の甲板、ベイシン−洗濯洗面室、タンツー−デッキ磨き、フォアマスト−前のマスト、メインマスト−中央のマスト、ミズンマスト−後ろのマスト、キャプスタン−ウインチ、ヘッド−便所などなどで、他にも色々横文字が出てきて帰るまでに完全には、覚えることが出来なかった。(英語での命令となるので、覚えていない部分で動作がワンテンポ遅れる。)特に帆を張る時など横文字で命令が出てもさっぱり判らず、ただ他の人がしているのと同じことをしただけで、自分自身の判断で動くのは最後まで出来なかった。下図は、「あこがれ」船内配置図である。 ![]() (続く) |
| 6.帆を張る |
船が出航してから部屋や船内を案内された後、さっそくトレイニートしての最初の業務が始まった。出航は、もちろんエンジンで行い順調に航行していた。まだまだ大阪湾の中を走っている。帆船を走らせる場合、風がある無いに関わらず船を安定させるために前のファオセイルと中央のメインセイルを張るのである。何故かというと帆船は、マストがかなり高いので、その分重心が高くなり横揺れの振幅が大きくなるからである。その分、帆を張って船を安定させる。とにかく何も判らないままにクルーの指示通りに動く。トレイニーのうち半数は、リピーターなので全く知らないものばかりではなく、その人達の真似をするだけである。帆を張る場合、引っ張るロープと引っ張られるロープがある。手順は、船長からオーダーが出る。それを作業リーダーが作業員に伝えて作業は進む。作業のまず最初は、ビレイピンというロープを固定してあるピンからロープをはずし、何人かでそのロープを引っ張る。作業リーダーが、Holl away(引け)と命令し引っ張り始める。引っ張る時のかけ声が、2−6 Heaveという英語の号令を繰り返しながら引っ張るのである。(日本の綱引きで言うオーエスに相当するもの。)リーダーが帆が張られる状況を見ながら目標のところまで張られると Hold onの声がかかり、引っ張るのを止めて、その位置の状態を保つ。最後のBeleyの声で完全に止める。引っ張られるロープの方は、一人だけ付いてロープの摩擦によりロープの送りをコントロールする。作業が終了したらコイルアップギアという命令で長くくちゃくちゃになったロープを丸くまとめてビレイピンにかけておく。(次に作業をする時にしやすいように整頓しておく。) そんな作業でフォースルとメインスルの2枚の帆を張った。僕は、ただ引くだけで精一杯で余裕がなく、作業が終了したら帆が張れていたという感じである。帰るまでに、昼夜、嵐の中を問わず何回も帆を上げたり下げたり、方向を変えたりの作業が繰り返されることになる。 右の写真は、手前の帆がメインスル、向側がフォースル ![]() (続く) |
| 7. 2−6 Heave |
ロープを引っ張る時のかけ声について説明しよます。殆どの人が、運動会で綱引きをした時に全体の力を合わせるために「オーエス、オーエス」とかけ声をかけながら競技したことを記憶されていると思う。まさに、オーエスが2−6Heave(ツー・シックス・ヒーブ)なのである。オーエスに慣れた我々日本人にとって、スー・シックス・ヒーブは少し長すぎて、ロープを引っ張る時間が長くなると息切れしてきた。慣れの問題であるもののやっぱり長すぎる。 何故、2−6Heaveというのか説明します。 英国が世界の海に進出して強かった頃のネルソン提督の時代に、このかけ声が使われたという。 戦艦から大砲を撃った時、大砲の本体が反動で後ろに後退する。その後退した大砲本体を元の位置に戻す時に掛けられた号令である。2と6は人間のことで名前を呼ばずに番号で呼び、「2番目と6番目の男達よ、ロープを引け」ということが発祥らしい(?) 右図は、黄色の部分が、大砲を撃つ時の位置。黒の部分が撃ち終わった時の位置。赤丸が甲板の作業水夫で1番が射手。青色が司令官で、大砲が撃ち終わった後、司令官が黄色の位置まで戻すために2番、6番引けと言った。緑色は、滑車であり、線はロープ。 帆を張る時も、このような感じで引っ張ることになる。大砲を元に戻すことが、帆を上げ下げに変わっただけのことである。 (図が拙く判りにくいですがご了承下さい。) (続く) |
| 8.1日目が終わる |
帆を張る作業が終わり、自分の部屋に入りベッドメイキングである。ベッドといっても2段ベッドである。カプセルホテルほどの広さで下段であった。荷物は、ロッカーがあり、その中に収納する。2段ベッドであり、天井が低いので帰るまでに何十回ともなく頭を打った。しかし、その辺のことは考慮されており、頭を打ってもそれほど痛くない素材で出来ていたように思う。船の夕食時間は早い。16時半にはもう夕食である。出発前の集合時間に遅れそうになったので、昼食を食べていなかったせいか16時半の夕食といっても自分にはちょうど良かった。メニューは、カレーライス。不味くもなく、特に美味しくもなく普通といった感じであるが、トレイニー船なのでこんなものであろう。どちらかというと凄く大雑把で具も滅茶苦茶大きく、中には切っていないようなものも入っていた。司厨長は、プロであるが、それを手伝うのは我々トレイニーであり、それ相応のものしかできないし、船の中の設備もたいそうなものではないので、特に美味しいものを食べさせろと言うのも全く無理な話である。調理師学校での同級生が、豪華客船の厨房に入って料理しているが、そんな船ですら冷凍食品が殆どらしい。そんなことで、「あこがれ」に食べるものについて過大な期待をかけるのは、無理な話である。まあ、とれとれの初鰹を後日食することになるが、これは、「あこがれ」のような小型の船にしかできないことであり、豪華客船では、そんな新鮮で本当に美味しい味は、味わえないのである。 食事の後、ミーティングがあり、まず全員の自己紹介があった。ここで、自分の本名とニックネームを発表した。僕は、いつも使っている「ステテコオジサン」をもじって「ステジイ」とした。それから、ワッチ毎にキャッチフレーズというかテーマを設けることになっている。僕のチーム、スピカは、チームの最も若い女性のかおちゃんの提案で「目指せ、シージャック」というような恐いテーマとなった。(シージャック出来るくらいまで操船技術を覚えようと言う意味で。) 22時に消灯となった。しかし、なかなか寝付けるものではない。そうこうしているうちに、帆船の宿命となる作業命令が23時頃に出た。船内放送で、作業出来る服装でデッキに集合という放送がかかった。作業内容は、もちろん帆の方向を変えるタック替えの作業である。風の向きが変わり、効率よく船を進めるために必要である。この作業は、昼夜を問わず天候を問わず、帰るまで何回もすることになる。まず、最初の洗礼と言うことである。(右の写真は、2−6Heaveのかけ声と共にロープを引っ張っているところ。この写真は、我々のものではなく「あこがれ」の写真集から拝借したもの。我々は、一生懸命ロープを引っ張っており、写真を撮る余裕はなかった。) 2−6Heaveのかけ声のもとに、作業は短時間で終了した。これで、乗船1日目を締めくくったような感じである。 (続く) |
| 9.2日目 船上トレーニング開始 |
この日から、本格的な船上トレーニングの開始である。朝は、6時20分起床である。といっても、緊張感があるので6時前には目を覚ましていた。もちろん目覚まし時計はかけていたのであるが、それで起きるまでもなく起きていた。やっぱり熟睡は出来ていないのであろう。 6時半から、天候が悪くない限り毎朝の日課であるタンツーが始まった。椰子の実を半分に割ったものを使って、チークで出来たデッキを磨くのである。ワッショイ、ワッショイのかけ声で全員が行う。中腰で作業するので結構腰にきた。椰子の実で磨けば結構汚れが落ちるものである。7時半頃から朝食が始まる。朝食の定盤は、あこがれ名物なのか知らないが、海が荒れない限り(荒れたら作れない。)、何故だか判らないが味噌汁雑炊なのである。お世辞にもあまり美味しいとは言えない。それから、パン、フルーツ、ジュース、サラダ、スクランブルエッグ、ソーセージなどをセルフサービスでとっていく。コーヒーや紅茶は、24時間自由に飲めるようになっている。この日は、船があまり揺れていなかったので、食べるのに不自由はなかったが、後日何回も経験するが、海が荒れていると食事をするのも一仕事になる。また、ゆっくり落ち着いて食べることは出来ない。早飯になってしまう。 午前中のトレーニングは、マスト登りの練習であった。しかし、自分は風邪をひいていた関係で薬を飲んでおり、登のを許されなく不満が残った。しかし、帰るまでに何回も登るチャンスがあり、後で考えると不満を持つような問題でもなかった。 この日は、天気も良く風も順調に吹いており、完全にエンジンを止めて帆走だけの状態になった。まったく快適であった。帆走時のスピードは、2.5ノットで歩くくらいの速さである。しかし、あんな重い思い船を風の力だけで走らせるなんて、やはり自然の力はすごい。 午前中のトレーニングの前に、毎回船長のブリーフィングがある。それによると、船は順調に風をうけて鳥島に向けて走っているとのこと。鳥島には、アホウドリという鳥が多く生息してとのこと。アホウドリは、カモメを一回り大きくしたような鳥で、飛び方は、羽根をあまり動かさずに滑空しているような飛び方らしい。しかし、残念ながら4日目から海が大荒れで鳥島でアホウドリを見るだけの余裕はなかった。何故アホウドリというのか説明があったが、餌と思ったら何でもかんでも食いつくからアホウドリというのだそうである。自分も好奇心が強く何でもかんでも飛びつくところがあるから、自分もアホウドリかもしれない。(笑) 午前中のトレーニングが終わるとハッピーアワーが始まる。ハッピーアワーというのは、何もハッピーではなく、船内の掃除をさせられるのである。これも毎日の日課となる。チーム毎に役割分担され、部屋、廊下、トイレ、洗面所、風呂などの掃除を行う。これもトレイニーとして仕方のないことである。(そこで、何で高い金を払って参加しているのにこんなことをさせられるのかと思うこともたびたびあった。) 午後のトレーニングは、帆走理論の講習とロープの結び方の練習であった。その後、帆の張り替え作業などがあった。 こうして2日目から本格的な船上生活が開始された。 (続く) |
| 10.カツオが釣れる |
| 船を走らせながら釣り好きの機関長がトローリングの仕掛けを作って船の後ろから糸を流している。自分は、その現場にいなかったのであるが、お昼過ぎにみんながカツオが釣れたと大騒ぎしている。自分も行ってみると女の子が自分が引いたと大はしゃぎしていた。釣れたものは、20キログラム近くある大きなまるまる太ったものであった。あんな大きなカツオを目の前で見るのは初めてである。この日の夕食のおかずとなった。大きく切ったものが一人七切れあった。とれとれの新鮮な魚は兎に角美味しい。カツオの刺身で今までこんなに美味しいものを食べたのは初めてである。やはりこんなところも来てよかったと思う部分である。初体験の一つである。しかし、この辺は行きはよいよい帰りは恐いという言葉がピタリと当てはまるようなことが起こる前触れであったのである。 動物というのか自然の環境の変化に凄く敏感なところがあるようである。何故カツオが、トローリングの疑似餌に食いついたと言うことが問題なのである。それは、嵐の前触れであったのである。海が荒れたら餌が食えないというカツオの本能かどうか知らないが、嵐の前に食いだめしておこうということなのであろう。案の定3日目の夜から海が大荒れに荒れだしたのである。このことは、帰る時にも同じことがあり、帰りは鮪が釣れたのであるが、その翌日から海が荒れたのである。科学的に証明されたものではないが、このことは、事実だと言わざるを得ない。 ![]() 釣り上げたカツオ持ってはしゃぐ女の子 機関長による三枚おろし (続く) |
| 11.初めてのマスト登り |
三日目に入ったが、船は順調に走っている。風もよく順調すぎるのかもしれない。その為に、前日の予定では、「あこがれ」をフルセイルにしてから、船からゴムボートを降ろして、それに我々が乗り船外から「あこがれ」のフルセイル姿を見せて貰えることになっていた。しかし、風がきつすぎて、ゴムボートを出すと「あこがれ」のスピードについていけなくなるという理由で中止になった。安全上仕方のないことである。このフルセイルについては、帰るまでに一度もチャンスがなかったことは、非常に残念であった。しかし、通常の午前と午後の作業は予定通りにあった。前の日に登らせて貰えなかったマストに今日は訓練ではなく、本作業をするために登らせて貰えることになった。僕は、高所恐怖症でもないので何の恐怖心もなく登ることが出来た。登っての作業は、帆を張るために、マストにくくりつけてある帆のロープをとくことであった。それほど難しい作業ではなかった。ロープをほどく作業より、帆をしまう時にマストにロープでくくりつける時の方が難しいようであった。(この作業は、自信がないので帰るまでに一度もすることはなかった。) 写真のトップスルというマスト中央部のステージに登り、メインガフトップスルを張るために収納されているものを取り出す作業を行った。 (続く) |
| 12.帆を張る時の合図用語 |
三日目に本格的な帆を張る時やおろす時の説明があった。その時の合図用語は、もちろん英語なのである。「6.帆を張る」の項で、ロープを引く時「Hall away」の合図で引っ張り、「Hold on」の合図で引っ張るのを止めるということを書いたが、「Hold on」の合図で止めた後のロープを固定する時の合図を紹介する。 1.Take the weight(先頭の人が発する) 引っ張っている先頭の人が発する用語で、ロープが元に戻らないよう固定するために2番目に引っ張っている人が前に行き2本のロープを握り滑らないようにすること。ロープ同士の摩擦で絶対に滑らない。) 2.Got the weight(2番目の人が発する) 2番目の人が前に行きロープを握った時に発する合図 3.Come up(先頭の人が発する) 3番目以降の人にロープを持ってゆっくり近づけという合図 4.Let go(先頭の人が発する) ストッパーが効いたことを確認して、3番目以降の人にロープを放せという合図 5.Berly(先頭の人) ロープは固定されたという作業完了合図(指揮者に送る合図) 以上の作業がこれから何回とも繰り返される。 (続く) |
| 13.当直 |
| 正確には、明日から当直が始まる。その前に当直の仕方についての講習があった。 当直には三種類の業務がある。 1.見張り : デッキに出て船周辺に障害物や他の船がいないことを確認し、障害物や他の船が発見されたらブリッジに連絡する。(あくまで練習船なので、この業務を行っているが、実際にはブリッジにGPSやレーダーなどがあり、その機器でも十分監視出来る。)内容は、海が荒れていない場合、バウデッキの左右に立ち、双眼鏡で監視する。(ただ、夜の当直の場合、真っ暗闇であまり見えない。) 2.ブリッジでの全般コントロール : 現在の船の位置を確認し進路などを決める。船の現在位置を30分ごとに海図に記入していく。ブリッジ内での作業となる。(練習なので、必ずクルーが横についていることは言うまでもないし、進路を決めるのももちろんクルーである。)なお、現在位置の確認は、GPSで行う。30分ごとにETというボタンを押したら、その時点での位置が確定する。 3.舵取り : そのもので船の舵を取る。ブリッジの指示による方向を維持するために舵をコントロールする。作業場所は、原則的には、中央デッキの最後方にある舵で行う。(あくまで練習船なので、嵐で船が大きく揺れる場合は、安全を考えてブリッジ内で行った。)舵の取り方は、ジャイロコンパスを見ながら、決められた方向に行くように舵のコントロールを行う。実際には、ブリッジで行う場合とデッキで行う場合、機械式と手動式という感じで舵をきる感覚が全く異なる。機械式の方が、切り方が少なく、手動式は大きく切らなければならなかった。その辺は、回を重ねる毎に慣れてきた。 当直時間は、4時間。4時間の間に交代で全員が各部署の業務を行う。原則的には、2名が行動を共にし、三業務に別れるので6名が当直チームとなる。 (続く) |