「夕日が目に痛いわね」 今あたし──美坂香里は入院しています。 原因は……4日前……。 あたしは下校途中だった……。 そこで……。 「美坂ッ! 危ないッ!!」 「え?」 どんと背中に衝撃に押される。 そのまま前に突き飛ばされ……。 ──キーーーーー、ガシャーン!! ドン! ゴロゴロゴロ…………。 「あ、あれ……?」 犯人は北川くん。 車に轢かれると思って突き飛ばしたらしく……。 結果……当たりもしない車の前に飛び出して……。 ──幸い大きな怪我はなく、ちょっとした怪我ですんだんだけど……── こうして1週間も入院するハメになってしまったわけ。 そして今日はその退院の日。 もちろん北川君は毎日謝りに来てくれたし、 怒ってもいないんだけど……。 というより毎日来たことに怒っているわね。 毎日毎日「責任とるから〜!!」って言われてたら頭にもくるわ。 私にも選択の権利があるのだから。 それにしても──── 「はぁ……」 ため息を一つ。 「栞……」 今なら栞の気持ちが少しだけわかる気がする。 栞は学校の行事とかで抜け出せなくなってしまってずっと来れなかった。 正直言って寂しいとかも感じたけど……だけど……。 それ以上に悲しくなった。 栞はもっと辛かった。 もっと寂しかった……。 そう考えたら凄く胸が苦しくなった。 あたしはどれだけ『ひどい姉』だったのかを思い知らされた。 ……冷たくて……ひどい姉だった。 そして……。 そんなあたしをあの子はまだ『お姉ちゃん』と呼んでくれる。 それが……なによりうれしいことだってわかった。 栞がどれだけ大切かが身にしみて感じた。 そういう意味では北川君には感謝かしら? 「よいしょっと」 声と一緒に重たい鞄をベッドの上に持ち上げる。 「この部屋とも今日でお別れね」 こうして見るとなかなか情が移るものだわ。 でもなんで病室って白なのかしら? 確か白は発狂の色、赤は興奮させる。 これって永遠の謎よね。 医学職に就けばわかるかしら? さっき買った缶のコーヒーが軽い音をたててふたを開く。 それを飲みながらほっと一息。 「それにしても遅いわね」 「待ったか?」 「ええ。これ以上ないくらいね」 「あはは。わりぃーな」 そう。 私だってただボケッとしていたわけではない。 『お迎え』を持っていたのだ。 北川くんに伝言を頼んだみたいでそれを聞いて私はまっていたわけ。 まぁ、誰かはわかると思うけど……。 「祐一さん、先に行くなんてひどいですー」 「それは栞が身長が低いからだ」 「身長は関係ありません」 「じゃあ足の長さか?」 「そんなこと言う人嫌いですッ!」 「相沢くん? あんまり栞をいじめないでよ」 「いやそんなつもりはなかったんだが……」 そうこの二人。 栞と会うのも久しぶりでなんだか小恥ずかしい。 それに相沢君と一緒にいる栞は凄く幸せそうに笑う。 悪い人じゃないしあたしとしても安心……かしら? 「いい人みつけたわね」 「あげませんよ」 「いらないわよ。あたしは栞がいればそれでいいわ」 「…………百合?」 ごん! 病室に鈍い音が響く。 相沢くんは現状が飲み込めずにおろおろしている感じね。 「痛〜い。お姉ちゃんがぶった〜」 「当たり前よ」 「えと……えと……」 こんな楽しい日常がくるなんて思ってもいなかった。 だから本当に相沢くんには感謝しているわ。 とてもとても……言葉では表せないくらい。 「ありがとう。相沢くん」 「え?」 「祐一さんお姉ちゃんとなにかあったんですか?」 「いや─── 「秘密よ」 「え!? 秘密ッ!?」 かき消したあたしの台詞に思わず相沢くんは声を上げて驚く。 顔を真っ赤にしたのは栞。 「やっぱり何かあったんじゃないですか!」 「そんなこと言う人嫌いですッ」 「そ、そんなことする人嫌いですッ!!」 「あはは」 口に手をあて栞のまねをする相沢くん。 顔を真っ赤にして手をばたつかせながら怒る栞。 あたしは本当に久しぶりに声をあげて笑った。 「もうッ、本当に何があったんですか?」 「だから知らないって」 「ほら、バカ言ってないで早く行くわよ?」 鞄を持ち上げて出口に向かいながら二人に声をかけるあたし。 「あぁ、お姉ちゃん待って」 「お、おい」 それに続いてくれる二人。 そう進んでいこう。 輝く日々に向かって。 かけがえのない日々に向かって……。 最高の笑顔と楽しい思い出を両手に……。 栞と……相沢くんと三人一緒に……。 「ねぇ、栞、相沢君」 「え?」 「なんだ?」 「……大好きよ」 fin☆ |
管理人から いつも雪月さんのSSは楽しいです。 しかし、相変わらず北川の扱いが(笑) 何処かで日の目を見る時が来るのでしょうか(爆) 応援しているぞ!!北川!!!(笑) もし宜しければ雪月さま宛に感想など 宜しくお願いいたしますm(_ _)m それから、雪月さまのSSを堪能したい方は此方へどうぞ
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