君が望む永遠SS
HAPPY BIRTHDAY

 作・橘 右京





俺と茜が付き合ってどれくらい経つのだろう・・・
あの日から・・・・・
〜HAPPY BIRTHDAY〜
[8月28日]
「―――姉さんを傷つけてもいいよ・・・・それでもいい・・・・。」
俺はもう茜ちゃん・・・・・いや、茜を一人にすることはできないと思った。
だから俺は水月と別れ・・・遙にも別れを言う決心をした。
俺一人で・・・・
「・・・昨日、水月とは終わった」
「え?」

俺は本当にどうしようも無い奴だよ・・・。
言い方っていうものがあるのに・・・・こんな風にしかできない・・・
「もうこのまま続けたらいけないって思った」
「・・・・・・」
「俺はこんなだから、すぐ逃げる癖がついちまうから・・・」
「・・・・・・」
「だから、そうなる前に終わらせるべきだと思ったんだ」
「それは、きっと私にも言っているんだよね?」
「・・・・・・」
「そうなんだよね?」
やはり、遙も気づいていた。
けど、今言わなければもう・・・・
「今ね、凄く実感なんだ。孝之君には3年間があったんだって」
「・・・・・」
「私が寝ている間に、本当にたくさんのことがあったんだなって」
「俺はそんなに変わっていないよ」
「ううん・・・・私、やっぱり孝之君を好きになってよかったって思えたから」
「・・・遙」
「ごめんね・・・困らせるようなこと言っちゃった」
言葉を飲み込むのは簡単だ・・・・・
それだけで、今ある苦しみから逃れることができる・・・
でも、今はその苦しみから逃げてはいけないんだ・・・・
精一杯やってきた時間が無駄じゃなかったって思いたいから。
たったひとつの小さなぬくもりだけは守りたいから・・・・
「・・・茜ちゃんが気づかせてくれたんだ」
「・・・・・・」
「いつまでも・・・・このままじゃいけないって・・・」
「・・・・・・」
「俺、もうここには来るべきじゃないって思ってる」
「・・・・・・」
「・・・許してくれるなんて思っていない。できれば・・・そうあって欲しいけど・・・」
「・・・・・・」
だけど、茜と遙の問題もあるから・・・
全部が簡単にいくはずがないんだ。
俺がここに来なくなれば、遙と顔を合わせることはないかもしれないけど・・・
茜はそうじゃない。
遙が退院すれば、同じ家で暮らすことになるんだ。
そのときのことを考えていきたい。
「・・・遙」
「・・・お願いだから・・・ひとりにしないで」
今、この言葉に優しく返事をすることができたらどんなにいいだろう・・・
でも今、俺が思っている人は遙じゃない・・・・
茜なんだ。
だから・・・・首を縦に振るわけにはいかないんだ・・・
どれだけ辛くても、悲しくても、断ち切らないといけないんだ・・・・
「どうして・・・」
「・・・・・・」
「どうして私じゃないのかな・・・・」
「・・・・・・」
「そばにいて・・・お願い・・・」
「・・・ごめん・・・」
俺は立ち上がり、ドアに向かった。
もう、遙を見ていることができなかった。
ドアに手を掛けて開けようとするが、なかなか開いてくれない。
いつからこんなに重くなったんだよ・・・
「お願い・・・私をひとりにしないで・・・」
振り向いたら、もうこの場所にはもどれなくなる。
どんなにつらくても、体中が痛くても、涙が止まらなくても・・・それでも・・・駄目なんだ。
「孝之君!」
振り向いて抱きしめてあげたい。
もう大丈夫だと言って背中をさすってやりたい。
けど、もうそれはできない。
ごめんな、遙・・・
パタン・・・・
俺はドアを閉めた・・・・
これでいいんだ・・・・
「・・・・・・」
これでよかったんだ・・・・
なのに・・・・どうして涙が止まらないんだろう・・・
俺は浜辺へと向かった・・・



聞こえるのは波の音だけ・・・
ずっと遠くから聞こえてくる音だけ・・・・
・・・これでよかったんだ。
笑顔が病んでいくのがわかっていたから。
後悔だけに彩られた人生なんて歩んだらいけない・・・。
遙の事故で、それを教えられた。
俺のせいで多くの人を傷つけた。
・・・だから、これでよかったんだ。
でもどうしてだろう・・・
どれだけ泣いても、ちっとも気持ちが晴れていかない。
泣いて駄目ならどうすればいいんだ・・・・
・・・・・・・・・・・
波の音に微かに混ざる小さな足音・・・
それはやがて、俺の真後ろまで来ると、ぴたりと止まった。
ふわっ。
(そうだな・・・俺はこのぬくもりを守りたかったんだ・・・・)
「探しました」
「・・・・ごめんな」
「いっぱい探しました!」
「・・・・ごめんな」
「どうして一人でいっちゃったんですか?」
こんな想いをするのは、俺ひとりで十分だから・・・
茜までには背負わせたくなかった。
これ以上悲しい顔をしてほしくなかったから・・・・
けど、結局だめみたいだ・・・・
俺はまた泣かせて・・・・
「一緒に行こうって約束・・・」
「あんまり気持ちよさそうに寝てるから、起こせなかったんだ」
「・・・こんなにつらそうです」
「いいんだ・・・」
肩から前に回された腕を抱くように包み込む
あったかい。
今はそれだけで救われた気持ちになる・・・
これからも、このあたたかさを感じていられるなら・・・・それなら、これでよかったと思える。
本当にこれでよかったんだ・・・・・・



しかし・・・・あれから3年経った今・・・・
茜は大学に行っていない。
頑張っていた水泳もやめてしまった。
茜が言うには、
「私だけ、いい思いをしてはいけないと思ったから・・・」
「茜・・・・」
「これで・・・いいんです。後悔は・・・してませんから」
遙が退院してからずっと、茜は遙とあまり話していないようだ・・・
話すとしても、両親を通して話すようだ・・・
それはおそらく、俺が原因なのかもしれない・・・
それはそうだよな・・・あんな風な言い方をして遙と別れ・・・茜と付き合っているのが許せないんだよな・・・
茜に会うために家に行っても、遙は俺を見てすぐ自分の部屋へ行ってしまう・・・
茜は、自分だけいい思いをしていると思ってしまったんだ・・・
だからあんなことを行ったんだ。
「―――――私・・・大学と水泳・・・やめました・・・―――――」
何かしてあげれないだろうか・・・・
茜はもう・・・俺しか残っていないと思う。
俺が何かしなければ・・・
できるなら、俺は茜のそばにずっといたい・・・
そういえば、茜はもうすぐ21歳になるんだな。
俺は、できることを見つけた・・・




[10月20日]
俺は今、柊駅に向かっている。
そこに茜を待たせている。
駅に到着すると、茜がベンチに座って待っていた。
「ごめん茜・・・待った?」
「いいえ、今さっき来たばかりですよ。孝之さん」
茜は嬉しがっていた。
それもそのはず、ここのところずっと茜と一緒に出かけたりしていなかった。
昨日電話で誘ってみたら本当に嬉しがっていたからな・・・
「どこか行きたい所ある?」
「え?」
「今日は、ほら・・・茜の誕生日じゃないか・・・だから、行きたい所どこにでも連れてってあげるよ」
「孝之さん・・・」
茜は泣きながら俺に抱きついてきた。
よほど嬉しかったんだな。
「ほら、いつまでも泣いているとどこにもいけないぞ?茜」
「あっ、そうですね。えへへ」
茜は涙を拭きながら言った。
「じゃあ改めて、どこに行きたい茜?」
「えっと・・・じゃあ水族館に行きたいです!!」
「わかった。じゃあさっそく行こうか?」
「はい!」
俺と茜は水族館へと向かった。
俺はこれで二度目となる水族館・・・・
最初は、水月と一緒に行って無理やりマグカップ買わされたんだっけ?
「孝之さん!早く入ろう!!」
「そうあせんなって」
俺と茜は水族館に入った。
やはり水月と一緒に入った時と変わっていなかった。
「うわぁ〜綺麗〜〜〜♪」
「水族館に来たの初めてなのか?」
「はい!!」
俺は嬉しかった。
また茜の顔に笑顔が戻ったのが嬉しかった。
「茜、もうすぐイルカのショーが始まるんだって。見に行くかい?」
「本当ですか!?行きます行きます絶対行きます!!」
「なんか茜、子供に戻ったみたいだな?」
「え〜何ですかそれ!?ひどいですよ〜〜〜」
茜と楽しく会話をするのも久しぶりだった。
何もかもが久しぶりみたいだった。
俺はやっぱり、茜のことが好きなんだって実感できた。
「イルカ可愛かったな〜茜」
「はい!とても楽しかったです!!!」
すると目の前にお土産コーナーが見えてきた。
「何か買ってあげようか?」
「いいんですか?」
「茜の誕生日だしね?」
「やった!じゃあ、あれがいいです」
茜が指差したものはイルカのマグカップだった。
「これでいいの?」
「はい!」
俺はイルカのマグカップを買い、茜に渡した。
「ありがとう、孝之さん。これ、大事にします」
「うん」
本当は買うのを少し躊躇した。
でも、これでいい。
茜の笑顔を取り戻せるのならそれでいい。
「さて、腹も減ってきたな・・・どこかに食べにいくか?」
「あっ!私、お弁当作ってきたんです!」
「本当に!?」
「どこかに座って食べましょう?」
「海岸近くの公園はどう?」
「じゃあそこで食べましょう」
俺たちは海岸近くの公園に行って近くのベンチに座った。
そこで茜が作ったお弁当を食べた。
「とてもおいしかったよ。」
「本当ですか!?よかった〜〜」
「じゃあ、次はどこに行きたい?」
「えっと・・・」
「ん?」
「丘の・・・上に・・・行きたいです・・・」
「いいよ」
俺たちは丘の上へと向かった。
「そういえば、ここに茜と来るの初めてだな?」
「はい・・・」
「俺、ここで茜に言いたいことがあったんだ・・・」
「え?」
「でもその前に、はい。」
俺は茜に小さな箱を渡した。
「これは?」
「開けてみて」
茜は箱の蓋を開けると驚いた表情になった。
そこに入っていたのはオパールの宝石がついている指輪・・・
「孝之さん・・・これって・・・」
「茜・・・俺と、結婚してくれ」
「えっ?」
「俺、茜が今までずっと辛い思いをしていたのを取り除きたい。お前を幸せにしたいんだ」
「孝之さん・・・」
茜は涙を流しながら笑顔を作った。
「うん・・・」
俺は茜を抱きしめて、キスをした。
「茜、誕生日おめでとう」
「うん・・・」
「俺が、必ず幸せにしてあげるよ」
「うん・・・ありがとう・・・孝之さん。今までにない、最高の誕生日プレゼントだよ・・・」
HAPPY BIRTHDAY END





〜あとがき〜
どうも〜久々に書きました橘右京です。
今回は茜誕生祭ということで、こういうものを書きました。
いかがでしょうか?
以前よりはよくなったでしょうか?
まだいろんな君のぞを書きますのでよろしくお願いします!!!



     

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