ネタバレあり・あらすじ



               第一章編



高校3年生の7月、俺(鳴海孝之)は周囲に流されるままに過ごしていた。 やる気も無く夢も無く、 「彼女が出来たら自分も変われるのでは?」 なんて漠然とした考えに囚われていた。 そんな俺も、友人の平慎二や速瀬水月から具体的な進路を聞くたびに、漠然とした焦りだけは感じていた。


ある日、速瀬に誘われた花火大会で速瀬の親友『涼宮遙』を紹介された。 彼女は数日前、偶然本屋で出合った内気な感じの女の子だ。 それまで慎二・速瀬・俺の3人で、何かとつるんでいたが、 それ以来、なにかにつけて速瀬は彼女を誘うようになった。 しかし、涼宮さんの内気な行動や仕草に、俺は次第に苛立ちを募らせていった。


ある日の放課後、速瀬に呼び出され、普段溜まり場にしている校舎裏の丘に向かった。 しかし、そこに待っていたのは速瀬ではなく涼宮さんだった。 突然、涼宮さんから 『好きです。付き合ってください。』 と告白されてしまった。 その時、俺は自分が大切にする3人の関係(慎二・速瀬・俺)が壊れる事を恐れて 中途半端な気持ちで流されるままにOKを出してしまった。 案の定、俺と涼宮さんは上手くいかなかった。 いつもおどおどしている涼宮さんを俺はいつしか鬱陶しくも思った。 もちろん、良い所だって見つけたさ。 彼女、絵本が好きなんだ。将来は絵本作家になりたいらしい。 自分の好きな事になると、彼女も結構話をした。 けど、結局俺とは合わないのじゃないか?と考え始めていた。 それに伴って、友人達との関係も変わり始めた。 速瀬と慎二は俺に対する態度が変わった。 それがとても嫌だった。


それは不味い! 何とかしないと、このまま皆との関係が崩れてしまう! そう思った矢先、彼女から電話が鳴った。 彼女は精一杯の勇気を出して核心を突いてきた。 『鳴海君、・・・私のこと・・・・・・、好きですか?』 彼女の質問に、俺は答えられなかった。 正直、俺は彼女の良い所も少しは解ってきはじめていた。 でも、それが俺にとって魅力に思えなかったら 意味が無い事も彼女はわかっていた。 電話の向こうですすり泣く声が聞こえた。 やがて電話は切れた。


涼宮さんとの関係が終わると同時に、皆との関係が終わったと思った。 慎二や速瀬に会うのが怖かったが、幸い夏休みだった為、直ぐに事態が変わる事は回避できた。 鳴らない電話・訪れる人のいない部屋 何も無いのも不安の材料になり、気持ちの押さえが聞かなくなった俺は、 夏季練習中の速瀬を訪れる事にした。

彼女は涼宮さんの親友だから、事の顛末は全て承知していると思っていた。 しかし、休みに入ってからは連絡を取っていなかったようだ。 俺は、ことの全てを相談しようか迷っていたが、 先に口を開いたのは速瀬だった。 速瀬は涼宮さんの事を色々と話してくれた。 涼宮さんは、裏では結構人気があったようだ。 以前、かなりカッコ良くて何でも出来る先輩に告白されたらしいが、断ったらしい。 断った理由は『好きな人がいる』からだった。 その好きな人が自分だと言うから驚いた。 速瀬の話では、涼宮さんは入学した頃から俺の事を見ていたらしい。 速瀬からそんな話を聞いた俺は、今まで考えていた涼宮さんを改めて見つめなおした。 そして、その事を謝るべく行動に移した。 涼宮さんの家へ向い、彼女を無理やり連れ出した。 行き先は学校裏の丘。 俺は今まで自分の考えに囚われていた事、涼宮さんの事をきちんと見ていなかった後悔、 それらを全て込めて彼女に告白する事にした。 「 涼宮さんに言わなければならないことがあるんだ。 」 「 聞きたく・・・・・・ないです。 」 彼女は拒否した。彼女は怯えていた。俯いた。耳を塞いだ。 そんな彼女に俺の気持ちを届けないと、一生悔いになる。 彼女は聞いていないかもしれない、 それでも構わずに俺はおもいの全てを込めた台詞を伝えた。。 「 ごめん 」 「 ・・・・・・・・・・・・・・・ 」 「 いっぱい遅れて・・・・・・ごめん 」 「 ・・・・・・・・・・・・ 」 「 好きだ 」 「 !? 」 「 もう遅いかもしれないけど・・・オレ・・・君の事が・・・すきです 」 彼女はゆっくり顔を上げ、驚いた表情をしている。 2年以上待っていた言葉が、オレから出るとは思っていなかったようだ。 だから、あんな言葉を否定したのだろう。 そして本当の気持ちをうちあけたのだろう。 「 もし君の時間を戻せたら・・・・・・ 」 「 だめ・・・・・・戻すなんてだめ・・・・・・絶対いや!だって、やっとその言葉が聞けたのに・・・・・・  どんな気持ちでも、どんな言葉でも私にとっては大切なの・・・・・・だから・・・・・・  私、今でも鳴海君の事が好きです。だから・・・・・・これからも一緒にいてください 」 人に想いが届くと言う事がどれだけ喜びになるのか、 そしてそれをオレが簡単に踏みにじってきた事を知らされた。 それでも彼女は優しさで受け止めてくれた。 そしてふたりの歯車がかみ合った。 これから永遠に続くであろう未来をお互いに夢見た・・・・・・。 それからの俺たちは、世間のバカップル宜しく、失った時間を取り戻すように近づいていった。 「 夏休みだから毎日会う 」なんて事はしなかったが、電話だけは毎日した。 幾ら話しても話したり無い。三時間以上の長電話をしてしまった時、遙は親に怒られた。 それじゃぁ、今度から自制しようとふたりで長々と話してしまった。 自分がそれまで否定していた事を、喜んでやってしまう現象が次々起こっている。 それの最たるものが「進路変更」だった。 今まで適当に入れる学校を選んでいたのだが、遙が白陵大だと聞き、俺は猛勉強を始めた。 「 この夏休み中に白陵大合格レベルまで学力を引き上げる!!! 」 そんな気持ち、以前なら三日も持たなかったが、今は持続している!! これはやはりLOVE POWERだとしか思えなかった。 それも相手が遙だったから、余計に力が引き出されるんだと思う。 俺たちが幾ら受験生だからと言っても、接近をはじめた二人には何の足枷にもならなかった。 夏休みだから、プールへ行ったり祭りにも行った。デートもした。 そんなこんなで夏休みが終わりを告げようとしていた。 夏休み明けが楽しみになるほどに、オレの学力は上がっていたし 遙と一緒だからこそ、これからの生活も楽しくなる事は想像できていた。 そんな8月の終わり、遙の念願の『 絵本作家展 』へ二人で見に行く約束をした。 前日の夕方、オレはバッタリ道端で遙の妹の茜ちゃんに出会った。 茜ちゃんが言うには、明日のデートを楽しみにしている遙の姿があった。 オレも正直、楽しみにしている。そんな俺たちを茜ちゃんは応援してくれていた。 当日、待ち合わせ時間は14時。 オレは慎二に呼び出され、隣町へ来ていた。 久しぶりに会う慎二は、ずっと予備校の夏期講習の休み時間を利用して抜け出してきた。 夏祭りの日に撮った写真を早く渡したかった為だった。 夏祭りの日、俺たち(慎二・速瀬・遙とオレ)は、学校裏の丘で写真を撮った。 本当は夏祭りに行く予定だった。 しかし、その直前から速瀬が悩みを抱えている事をオレは知ってしまった。 そして当日、速瀬の悩みを聞いているうちに遙との約束時間を過ぎてしまった。 心配した遙は、慎二と一緒にオレを探しに学校裏の丘へやってきた。 その時に撮った写真だ。遙はその日を『 仲間記念日 』だと言う(汗) まぁこれは、オレがその前に『 8月6日・ミートパイ記念日 』を名づけたからなのだが・・・・・・ そんな仲間が皆で写っている写真をいち早く届けたいなんて、慎二らしい気の使いようだ。 オレはそんな慎二の気持ちに感謝した。 ついでにその町の本屋へ寄った時だった。 オレは遙がずっと欲しがっていた絵本『 マヤウルのおくりもの 』を見つけた。即刻GET! 遙との待ち合わせ時間が迫ってきていた。 オレは待ち合わせの駅に向うべく歩みを進めた。 そこで偶然、速瀬に出会った。時間にはまだ余裕があった。 速瀬はこの街で、先日話題になった悩み(とある男の子と付き合うかどうか・・・) を解決する為に来ていたと言う。結局、そいつと付き合う事は止めたらしい。 そんな速瀬に同情をする孝之だが、今は遙との待ち合わせが大事なので、 何とかその場を切り上げて、駅へ急ごうとする。 しかし、その孝之を再び呼び止めたのは速瀬だった。 今日(8月27日)が速瀬の誕生日だと言う。 速瀬はオレにプレゼントを強請った。 半ば強引に露天の前に引っ張ってきて、「 この指輪がいい 」と言う。 オレは、断る決意でいたが、「誕生日に悲しい思いをしている」速瀬をほおっておけなかった。 財布の底を見てしまいそうなほど、高くついた指輪に速瀬は満足していた。 しかし、オレは指輪のプレゼントの意味をその時知らなかった・・・無知!!!(大汗) ふと気が付くと、遙との待ち合わせ時間まで、もう間が無い。 急いで速瀬を振り切り、駅へ急ぐ。 柊町駅へ着くと、時間は15分も過ぎていた。 遙が待っているかどうか心配しながら改札を抜ける。 ロータリーへでて見ると、そこには見慣れない光景が広がっていた。 ロータリーの傍らに救急車が横付けにされていた。 その周りには人ごみが出来上がっていた。 「 事故か?あぶないなぁ・・・ 」 と思いつつも、遙を探し始める。 待ち合わせ場所を探しながら、いつの間にか事故の人だかりに近づいていくオレ。 すれ違った会社員が、気になる事を同僚と話していた。 近くに居た女子高生も、友達と事故の推測話で盛り上がっていた。 オレは胸騒ぎを抑えながら、人だかりの中へ分け入った。 いつの間にか、手に持っていたプレゼントを落としてしまった。 しかし、救急車に乗せられた人が気になり、落し物を探す事を後に廻した。 わずかの差で、救急車は走り去ってしまった。 人ごみが一気に退いて行く。 自然と落し物が見つかった。 しかし、袋は破れて中身の本は足跡だらけ。 迂闊な自分を悔やんだが、元に戻るわけも無い。 しかし、慎二から貰った写真だけは無事だった事を喜んだ。 そんな事に気を取られていたが、改めて事故の現場を見てみる。 備え付けのベンチは跡形も無く、電話ボックスまでもが無残な形になっていた。 そのそばに広がる血痕に、オレの目は釘付けになる。 見慣れたピンク色をしたリボンが血に染まっていた。 近くで警察官が遺留品と被害者の照会をしていた。 聞こえてくる声は・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「 白陵大付属柊学園 」 「 ・・・・・・3ねん・・・・・・ 」 「 ・・・・・・・・・すずみや・・・・・・・・・   ・・・・・・・・・はるか・・・・・・・・・・・・ 」 第一章編・END 注釈・ この後にオープニングアニメーションが入ります。 曲「 Rumbring hearts 」 歌・栗林みな実 第二章編 時間は3年過ぎた 俺は現在速瀬水月と付き合っている 何も無い平凡な毎日だ それでもかすかな幸せを感じている 水月は仕事をしていた 水泳は辞めていた 俺は隣町にあるファミレス『すかいてんぷる』でアルバイトの身だ 毎日毎日接客に追われる このバイト先には、大空寺あゆとか言う奴が顔を利かせている はっきりいって最悪だ ちんまいくせに態度だけはでかい ある日、店長が変わった 今度の店長は崎山健三と言う、和食の世界を歩いてきたらしい そしてもう一人、新しいアルバイトとして玉野まゆと言う女の子が加わった ところがこの子、ちょっと・・・・・・いや、大分変わっている なんだか時代を間違えそうな言葉と、べらんめい調で喋るから混乱する 店長は店長で、丁寧な言葉使いをアルバイトに向けるものだから なんだか訳がわからなくなりそう・・・・・・ それでもそんな職場に馴染んでいる自分が居た 俺と水月は夕食を共にするようになっていた 同棲はしていないが、もうそれに近い状態だった そろそろ水月のほうも結婚を考えはじめたらしく、 しきりにアパートの引越しを勧めてくる 確かに、こんなアパートに未練は無いが 長々と住んで来た場所だから、愛着があった しかし、それも潮時なのだろう 引越しを真面目に考えてみようと思った そんなある日、留守電の点滅が光っていた 親からと思い気楽にボタンを押したが、そこから語られた言葉は俺の時間を引き戻した ・・・現在制作中 しばしお待ちを・・・・・・m(_ _)m
     

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