君が望む永遠SS
冬のふたり



  


孝之編

クリスマスも近い日曜日、
俺は遙と一緒に電車に揺られた。

〔  白塚  〕

駅で海岸への道を聞き、
二人並んで歩いた。
久々のデートだと言うのに、
二人言葉がない。
最近大学生活が忙しく、
時間がすれ違っていたことは事実だ。
そんな中、久しぶりにお互いの時間がかみ合った。
そんな訳で、遠出してみたけど……


季節は冬だと言うのに
かなり暖かい。
風もあるけど、穏やかだ。
海岸は砂浜で、だいぶ先まで続いている。
遙は砂に足を取られながら
先へ先へと進んで行った。
わざとはしゃいでいるみたいだ。

俺はそんな遙を眺めている。

「 久しぶりすぎて何を話せば良いのか
  わからなくなっている?
  二人の距離が離れ始めている? 」

そんな考えが浮かんでしまって
少々焦っている……

ちょっと目を放した隙に
遙の姿が見えなくなっている。
「 防砂林の中に隠れたんだろう 」
と考えて目を凝らしてみても
遙の白いコートが見当たらない。


雲が翳ってきた。
風が出てきた。
海は荒れ始めていた。


「 何かあったのか? 
  砂浜に大きな穴が開いていて、
  落ちて足を挫いたとか、
  気を失ってしまったとか
  ……………………………
  海に飲み込まれた??? 」
そんな不吉な予感が走った。
そんな気持ちが支配した。
不安が俺を駆り立てる。
次の瞬間、走り出そうとした……

向こうの木陰から遙がひょっこり現れた。
安堵した。
それと同時に、
不安だった気持ちを一掃する為に、
俺は自分の気持ちを吐き出した。



遙編

クリスマスも間近に迫った日曜日
たかゆきくんと久しぶりのデート!

〔  白塚駅  〕

海岸までの道のりを駄菓子屋さんで聞いた。
二人で並んで歩いたけど、何を話せば良いのかな?
此処の所、大学が忙しくって
一緒にいられる時間が少なかった。
だから今日はとっても楽しみにしていた。
なのに、たかゆきくんと一緒にいるだけで
満足してしまった私が居る。
たかゆきくんはどう思っているのかな?

久しぶりの海。
冬の海は灰色
ちょっと寂しい感じがする。
太陽は出ていて、風も穏やかだけど
たかゆきくんの笑顔が無いのが
ちょっと不安……
ちょっと、はしゃいで見ようかな?

冬の砂浜って重い感じ
でも、それが面白くって
ついつい夢中になっちゃった
でも、さっきからたかゆきくん
何か考え出しちゃっているみたい
ちょっと不満

そんなことに気を取られていたから
いつの間にか、周りが暗くなっている事に
気が付かなかった。
「 えっ!? 」
いつの間にか私は俯いて
考え事をしていた。

「 やだっ、ちょっと…… 」
あたりをきょろきょろ見回すと
自分が防砂林の中に入っていた
ことに気が付いた。
「 あはは……、
  ちょっと悪い事考えると
  ドンドン悪い方へ考えちゃうの
  はいけないよね?
  失敗、しっぱい! 」
私は直ぐに防砂林から抜け出した。
外はいつの間にか風が出てきていた。
雲もどんよりしてきて
寒い感じ。
海も段々荒れてきた。
大きな波が消波ブロックに
ぶつかり音を出す。

「 なんだか怖い!
  あ、たかゆきくんは? 」

たかゆきくんを探すと、
遠くに見えた。
私は大声で彼に声を掛けようとした。
すると先に彼の声が届いた





「 はるかーーーーーっ! 」



「 たかゆきくーーーん! 

  冬の海って、寂しいねっ? 」




俺は、遙の元へ駆けつけた。

「 ………そうだな。 」

「 なんだか、怖いよ。 」

「 でも、こういうことが出来る! 」

「 !?わっ!? 」


俺は、自分の着ているコートの
前のボタンを外して、
遙を招きいれた。

遙は、自分のしている長い
マフラーを緩めて、
片方の端で遙、
もう片方は俺の首に捲いた。


「 やった!カップル仕様のマフラーが
  役に立っちゃった!! 」


ちょっと恥ずかしく感じたけど
なんだか暖かい気持ちになった。
俺の手は遙の肩を抱く。
遙の手は、俺の腰へ…。
ちょっと近い距離だけど、
二人顔を見合わせて
笑った。




二人、そのままの姿勢で駅への道を歩き出していた。
言葉は無いけど、お互い顔を見合わせるだけで
笑みがぼれた。
その笑顔を見られるだけで、
俺の気持ちは穏やかになっていった。


たかゆきくんは、此方へ走ってきた。
そして息もつかずに言った。

「 ………そうだな。 」

「 なんだか、怖いよ。 」

「 でも、こういうことが出来る! 」

「 !?わっ!? 」

たかゆきくんは、自分の着ているコートの
前のボタンを外して、
私を招きいれてくれた。

私はお返しに、自分のしている長い
マフラーを緩めて、一つの端は私、
もう一つの端でたかゆきくんの首を
包んだ。


「 やった!カップル仕様のマフラーが
  役に立っちゃった!! 」


なんか恥ずかしい事言っちゃったけど
素直にこんな事が出来たのが嬉しい!!
たかゆきくんの手は私の肩へ置かれた。
私はたかゆきくんのからだに手を廻した…。
「 たかゆきくんの顔が近い、
でも嬉しい……。
あっ、たかゆきくんが笑った。 」




私たちはお互いの身体をくっつけながら駅へ向かった。
言葉は無いけど、お互い顔を見合わせるだけで
笑みがぼれた。
その笑顔を見られるだけで、
ずっとすれ違っていた時が消えていった……。





後書き ちょとした思い付きでこんな物を作って見ました。 時間が無かったので、今回それぞれの『 心 』が おざなりになったような気もします。 しかし、こういう形式を考えるのは楽しかったです。 お読みになった方々、どうでしたか? 簡単で結構ですので、思った事や感想をいただければ嬉しいです。 それでは、また!! PS・最近『 遙 』物ばかり書いていましたが、 現在は『 水月物 』も考えています。 誕生日が近いし・・・・・・。
     

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