君が望む永遠SS
原案・taka  作・たくと
孝之へ・・・・・・




    Scene・0


 雨は降り続いている。
 雨の音だけが、耳に残っている。
 ・・・・・・・・・・・・かったりぃ・・・・・・。



 真っ暗な中に居る。
 ・・・・・・・・・・・・まっくら・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・・・まぁいいや・・・・・・・・・・・・



 着ている物が濡れている。
 ・・・・・・・・・・・・なんで濡れているんだ?
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんで・・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 なにもかんがえたくない・・・・・・・・・・・・
 なにもききたくない・・・・・・・・・・・・
 なにもみたくない・・・・・・・・・・・・
 なにもしりたくない・・・・・・・・・・・・
 
 なにも・・・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・・・なにも・・・・・・・・・・・・



 ふっと頭の後ろに何かがまわされた・・・・・・・・・・・・
 何かを顔に押し当てられている・・・・・・・・・・・・
 うっとうしい・・・・・・・・・・・・
 うざったい・・・・・・・・・・・・
 


 何かが押し当てられている事は解る
 でも、うっとうしいのはかわらない
 なまぬるい感触もうざったい・・・・・・・・・・・・



 いまだにその状況は続いている・・・・・・・・・・・・
 からだにまとわりつくものがきもちちわるい
 おれをそとからしはいするものがうざったい・・・・・・・・・・・・ 



 いい加減にして欲しかった
 身体の温もりを冷ましたかった
 何か支配する物から抜け出したかった
 身体は動かしたくなかった
 ・・・・・・かったりいから・・・・・・

 けど、一向に状況が変わりそうに無かった
 だから仕方なく、俺は身体を動かした



 目の焦点がわずかに合ってくる・・・・・・・・・・・・
 色が鮮明になってくる・・・・・・・・・
 自分の体制が不自然な物だと理解できたので、
 それを正すために足をのばした。
 立ち上がる。
 視線はズームアウトしていく。
 そこには肌色の物が横たわっていた
 焦点が合ってくる
 目の前に広がる光景は・・・・・・・・・・・・



 雨の音が聞こえる
 真っ暗な部屋の中
 真っ暗な俺の?部屋の中
 ベッドが横たわっている
 ベッドの上に横たわっている・・・・・・・・・・・・
 ベッドの上に髪の毛を広げ横たわっている・・・・・・・・・・・・





 ・・・・・・・・・・・・は・・・やせ・・・・・・・・・・・・





 視線はこっちを見ている
 俺を用心深く観察している
 驚いた表情にも見える
 でも、なんで・・・・・・・・・・・・
 しょうじき、りかいふのうだ。
 なにが・・・・・・・・・・・・





 あめのおとだけがきこえる・・・・・・・・・・・・









    Scene・1


 呆然と立ち尽くす俺の目の前には、
 ベッドに横たわり、此方を呆然と見つめている速瀬の姿があった。


 なんでこいつはこんなかっこうをしているのだろう?
 りかいふのう
 りかいふのう
 かんがえることがわずらわしい


 ふと視界の隅にこの部屋の物ではない色を見つける
 腰をかがめてそれを握った
 なにかが俺の手にまとわりつく
 速瀬が着ていた物なのか、そんなふうに思えた
 そのまま速瀬にそれを突き出した

 『 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 』
 『 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 』
 『 ひ・・・・・・と・・・・・・・・・・・・して・・・れ・・・・・・・・・・・ 』
 
 おれは一言だけ云い、自分の身体を抱いてうずくまった





 静寂が訪れる

 暗闇の中に一人


 なにも考えたくなかった


 なにもしたくなかった


  
 なにも・・・・・・・・・・・・




 あめのおとはなかった・・・・・・・・・・・・







   

 ふと目が覚めた
 目には涙が浮かんでいた

 どうしてそんなものがあるのだろう?

 気が付いたときには身体が起き上がっていた
 自分でも意識しなかった行動を身体がしていた
 近くにあるテーブルの上の匂いが気になった
 自然と手を伸ばしていた
 少しだけ口に入れた
  吐き気を催したのでそのそばにあったビニール袋の中に吐いた
 自分の意識が呼び戻されていく
 
 ・・・・・・・・・・・・おれ・・・・・・・・・・・・なにやってんだ?・・・・・・・・・・・・

 自分のしている事を疑問に感じながら
 テーブルの上のコップに口をつけた
 水だかお湯だかわからないものを少し口に含んだ
 再び吐きけがわいてくる
 しかたないのでトイレまで這って行った

 便器に顔を近づけ思いっきり身体の中のものを吐き出す
 しかし、なにも出てこない
 くるしい・・・・・・
 目に涙が浮かぶ

 きもちわるい
 うざったい

 目に溜まった涙が視界をぼやけさせる・・・・・・・・・・・・ 
 そんな感情が入り乱れる中、
 スッキリしたいという思いを持ち始めた
 それはただ単に、この吐き気から逃れたいだけの事だったと思う・・・・・・・・・・・・







    Scene・2


 ふと俺の肩に何かが触れた
 ほとんど腹の中のものを吐き出した俺は、
 あてがわれた手のされるままに部屋へ戻った・・・・・・・・・・・
 

 ぼやけた視界の中、動いている物がある
 ぼやけた視界は次第に晴れてゆく
 部屋の中に広がってゆく声が耳に届き始める
 ほとんど愚痴の様な言葉たちが部屋に広がってゆく
 そんな中、まっすぐに近づいていくる影があった
 いきなり目の前に現れた影は、
 俺のむなぐらをつかみ、何かを叫んでいた

 
 俺の耳にはそれを聞き取る事が出来なかった
 それでも、何を言いたかったのかだけは伝わった
 俺は残っている力を全て言葉に代えた


 『 慎二・・・・・・頼む・・・・・・今は・・・・・・一人にさせてくれ・・・・・・ 』

 むなぐらをつかまれたまま
 それに負けじと自分の顔をあげ、笑顔をつくって見せた
 それが笑顔になっていたかどうかは・・・・・・わからない・・・・・・


 しばらくして、部屋の中がまた静まり返った・・・・・・・・・・・・
 静まり返る直前、テーブルの上に何かを残して行った・・・・・・・・・・・・
 テーブルの上のものは湯気を放っていた・・・・・・・・・・・・

 『 ・・・・・・・・・・・・お・・・・・・かゆ・・・・・・? 』 
 
 テーブルにはおかゆが残されていた
 放たれた湯気は匂いとともに俺の鼻をくすぐった
 惹きつけられるようにテーブルに向かい、おかゆを口にした
 一口・・・・・・二口・・・・・・・・・・・・
 胸の辺りに暖かい物を感じた
 速瀬と慎二の気持ちが身体の中に入っていく気がした
 目には涙が浮かんでいた
 さっきまで浮かべた涙とは別の、暖かい涙だった・・・・・・・・・・・・






    Scene・3 


 喰うものを喰ったら落ちついてきた
 とりあえず部屋の中を見回してみる
 案外きちんと整理された部屋・・・・・・・・・・・・
 俺がいつから意識していなかったのか、
 最後に見た部屋では無い気がする
 多分速瀬が片付けてくれていたのだろう
 カレンダーに目を向ける
 俺が最後に日付を気にした日から一週間が過ぎようとしていた
 ふと遙のお父さんに言われた言葉が浮かんでくる
 それに浸りそうになって、慌てて頭を振るった

 窓を締めた
 カーテンを閉めた
 そして、扉のチェーンロックも掛けた
 部屋に戻る途中、横の扉が目に入った
 
 『 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 』
 


 予定を変更してシャワーを浴びる
 身体を流れていく水が心地いい
 今まで染み付いていた物を洗い流してくれるような感じさえする
 それが錯覚だと自分ではわかる
 その証拠に、遙のお父さんの声が響きはじめた
 その時も身体はうたれていた

 ・・・・・・・・・・・・あめに・・・・・・・・・・・・






 『 ・・・・・・もう、此処にはいらっしゃらないでください・・・・・・・・・・・・
   はるかの事は・・・・・・・・・・・・忘れてください・・・・・・・・・・・・ 』





 自然と涙が溢れてくる
 それをシャワーに任せて流し続ける
 気持ちがおさまるまで水にうたれて・・・・・・・・・・・・


 シャワーを思う存分浴び、少しだけすっきりした
 身体を拭き新しいシャツに着替える
 部屋の電気は点けなかった
 タオルは頭の上に乗せたままにした
 真っ暗な部屋の中を呆然と見つめる・・・・・・
 その黒いスクリーンにこの一年を映し出す






    Scene・4


 遙の事故の後、俺はずっと後悔していた
 自分の選択した行動が引き起こした事故
 だから全ての責任を負った
 責任を負ったからといって遙が元気になった訳ではない
 遙が目を覚ましたわけではない・・・・・・
 

 再び溢れてきた涙
 頭の上に置いたタオルで拭う
 
 
 遙の夢は醒めなかった
 しかし時間だけは過ぎていった
 自分が楽しみにしていたテストも意味の無いものになっていた
 計画を建てて驚かそうとしたクリスマス・初詣
 一緒に受けるはずだった受験
 一緒に門をくぐるはずだった卒業式も意味の無いものに変わっていた

 毎日通う病室だけに意味があった
 


 親の目を誤魔化す為にはじめたコンビニのアルバイト
 その為、仕送りがカットされた
 アルバイト代で病院へ通う交通費をまかなった
 遙が目を醒ましてすぐに「 大学受験する 」と言っても良い様に
 参考書だけは買い揃えておいた
 しかし、使う機会は訪れなかった・・・・・・


 
 落ち葉の頃

 雪の頃

 桜の頃

 新緑の頃


 そして再び暑い夏が訪れた


 
 病院への道にある本屋の前で絵本作家展のポスターを見た
 その時から、遙の目醒めを強く待ち望むようになった

 一年も経ったんだ
 一年も経ったんだぞ
 一年も待ったんだ
 一年も待ったんだぞ
 きっと変化が訪れるはず
 きっと何かが変わるはず
 絶対何かが
 絶対・・・・・・


 
 絵本作家展がはじまった

 今年こそ一緒に行きたい
 遙と一緒に行きたい
 行きたい・・・・・・
 去年の約束を果たしたい
 約束を果たしたい
 果たしたい・・・・・・
 絶対に・・・・・・・・・・・・

 

 もうあと数日しかない
 きっと遙は気付いていないんだ
 俺が教えてやらないと・・・・・・

 きっと会場に行けば遙も目を醒ます・・・・・・
 遙を連れて行こう・・・・・・
 絵本作家展に連れて行こう・・・・・・
 遙の為にいかなくちゃ・・・・・・
 はるかのためにいかなくちゃ・・・・・・
 はるかのために・・・・・・
 おれのために・・・・・・
 おれの・・・・・・






    Scene・5

 
 ドン!ドン!!ドン!!!
 
 その音に気が付いたのは、かなり時間が経っていた
 おれはいつの間にか眠っていたようで
 その音に耳を傾けると声も混じっていた
 気だるい身体を持ち上げると、外からもう一人の声が混じりはじめた
 それは此方へ向けたものではなく、会話しているようだった
 
 騒がしい扉の向こうとは、係わり合いになりたくなかった
 それでも申し訳ない気持ちもあって、少しだけ扉は開けた
 その途端扉を大きく開こうとする力が働いた
 しかし、チェーンロックに寄ってそれは拒まれた・・・・・・
 茜ちゃんがその隙間から顔を覗かせた
 その上から速瀬が顔を出した
 
 茜ちゃんの言う事に対しての答えを、俺は現在持っていなかった
 だから待ってくれとだけ云った
 納得するとは思えなかったが、仕方のない事だった

 速瀬は食事を届けに来たようだ
 今回は素直に受け取る事にした
 ただ、もう二度としないでくれと伝えた
 速瀬はなにも言わなかった
 返事もしなかった

 

 俺は再び自分の過ごしてきた今までを思い返していた
 遙のお父さんに言われた言葉がそれにかぶさる

 もう会えないのか
 もう会っちゃいけないのか
 もう会わせて貰えないのか
 なんで遙に会っちゃいけないんだ?
 なんで遙の側に居ちゃいけないんだ?
 なんで遙の事を思っちゃいけないんだ?

 なんで・・・・・・なんで・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・わかっている・・・・・・
 薄々とわかっている
 ぼんやりとわかっている
 本当は気が付いている
 本当は気が付いていた
 気が付いていた?
 
 ・・・・・・わかっていた・・・・・・
 
 遙の側に居る事を許されない理由
 遙に会ってはいけない理由



 理由 

    
 
 俺は遙の為にと思っていた
 俺は遙の為だと思っていた
 俺は遙の為と思っていた
 全て遙の為に・・・・・・・・・・・・
 


 俺は悔やんでいた
 でも俺は、遙の事で悔やんでいた
 でも俺は、遙の事を悔やんでいたんだ 
 遙にしてやれなかった事を悔やんでいたんだ
 俺が遙にしなければならなかった事が出来なかった事を悔やんでいたんだ 
 


 すべて・・・・・・すべて自分の為だったんだ・・・・・・・・・・・・
 自分が納得する為にあわてていたんだ・・・・・・
 自分を納得させる為に焦っていたんだ・・・・・・
 すべて、自分の為だったんだ・・・・・・ 
 すべて自分のエゴ・・・・・・
 エゴ・・・・・・






    Scene・6


 遙が事故に遭って以来、俺はすべて遙を中心にしていたと思った
 俺はすべて遙を中心にしていたと思ったんだ
 ・・・・・・・・・・・・しかし・・・・・・・・・・・・
 俺が遙の為と思っていたことは、すべてが俺のエゴだった
 遙を中心に置く事で、俺のエゴを通していた
 遙を盾にして俺のエゴを通していたんだ
 だから・・・・・・・・・・・・


 あんな事を言われるのは当然だった
 どうすれば良い?
 どうすれば・・・・・・・・・・・・



 真っ暗な部屋の中を見回してみる
 カーテンからは外の光が差し込んでいた
 側にあった電話が点滅している
 留守録の点滅だ
 今日になって気が付いた
 ここ数日、ずっと家にこもっていた
 それはほんの2・3日の事に過ぎない
 慎二や速瀬では無いだろう
 考えてみると、その数日前からの事を覚えていなかった
 いや、数週間になるかもしれない
 俺の過ごしてきた数週間
 何をしていたのか?・・・・・・・・・・・・

 とりあえず再生してみる事にした
 一番初めに入っていたのはバイト先からだった
 二件・三件・もバイト先
 日付は2週間前のものだった
 あとは実家から定時の連絡が二件

 親の事は後回しにして、バイト先に電話をしてみようと手を伸ばした
 バイト先の番号を調べてボタンを押す
 すべてを押した直後、受話器を置いていた

 俺は何をしていたのだろう?
 何をしてしまったのだろう?
 バイトだからといって、こんな簡単に自分を許してしまって良いのだろうか?
 電話ですべて事が済む事ではない筈だ
 そんな簡単な世界じゃない事を遙の事故で知ったはずだ、解っていた筈だ
 だから・・・・・・・・・・・・

 部屋のカーテンを開けた
 久しぶりに日の光を浴びた気がする
 窓を開け放し、大きく息を吸った
 まだ気持ちの切り替えが済んだわけではない
 ただ、迷惑を掛けてしまった事だけは謝りたかった
 せめてバイト先にだけは顔を出す事にした



 『 君に何があったかは知らない。全然連絡をもらえなかったんだからねぇ 』
 そう言って店長は部屋を出て行った。

 俺は店長と会った瞬間からすべての事情を説明した
 店長は40前後、ちょっと太目の身体を貧乏ゆすりさせながら店内を見ていた
 俺の話を黙って聞いてくれたが、その後はずっとこの調子
 こんな調子で責められていたから、少しだけ息がつけた
 しかし、店長は直ぐに戻ってきた。
 『 連絡も無く二週間が過ぎてしまったんだ。覚悟は決めてきたんだろうね? 』
 そんな言葉をつぶやきながら、俺の前に缶コーヒーを置き、
  向かいの席へやっと腰掛けた
 『 君がシフトを二回続けて無断欠勤した事で、
   自動的にバイトを募集かける事は知っているね? 』
 『 はい 』
 『 そう、もうバイトは決まってしまった、それも気付いているよね? 』
 『 はい 』
 『 それでも来たんだ・・・・・・どうして? 』
 『 ・・・・・・はい? 』
 正直、言い訳を聞いてくれると思っていなかった
 言い訳をする事も考えていなかったから、俺は黙り込むしかなかった
 『 どうせなら電話一本で済ませれば気楽だったろう?
   バイト料は振り込みだし、電話なら嫌な小言を聞かないで済む。 』
 『 ・・・・・・・・・・・・ 』
 『 そういう事を考えなかった?・・・・・・・・・・・・ 』
 『 ・・・・・・・・・・・・はい・・・・・・・・・・・・ 』
 『 ・・・・・・・・・・・・・・・、まぁ、そういう事が大切なんだけどね・・・・・・・・・・・・ 』
 『 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 』
 『 僕はね、これでも君を信用していたんだ。
   バイトの中ではまじめな方だったしね、
   欠勤もほとんど無かったから今回の事を大目に見たかったのも本当だよ。 』
 『 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 』
 『 社会人になると、たとえ僅かな約束でも守る事が大切なんだ。
   その一つ一つが小さな物でも最終的に大きな信頼に変わる事がある。
   しかし、一度大きな過ちを犯してしまうと、その信用も揺るいだ物になる。
   だからと言ってそこで諦めると、信用は失ったままだ 』
 『 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 』
 『 だからこそ、君の行動は僕も評価する。そういう小さな事を続ける事で、
   失った信用を取り戻せる事もある。
   それは100に満たないかもしれない。
   でも続けていれば何が起きるかわからない。
   100になれない物も、チャンスが来れば200に出来る事もある。 』
 『 ・・・・・・・・・・・・えっ?・・・・・・・・・・・・ 』
 『 それでもこんな小さな店ではどうしようもない事もある。
   それはわかって欲しい。僕にも示しという物が必要だし、
   今回の事は勉強になったと諦めてくれ・・・・・・ 』
 『 ・・・・・・はい・・・・・・・・・・・・覚悟していましたから・・・・・・ 』
 『 大分説教くさくなってしまったね。
   兎に角君にはその姿勢を続けて欲しい。
   たとえ周りと違ったスタイルでも、
   君の良い所を理解してくれる人はきっといるから。 』
 『 はい。 』
 店長は不意に後ろを向き、机の周りでごそごそし始めた
 振り向いた時には茶色の封筒を握っていた
 『 これは今回支払われるはずのバイト料だ。
   何かと物入りだろう?
   ・・・・・・面倒だから今、領収書にサインをしてくれ 』
 『 ・・・・・・はい 』
 中身を確認すると少しだけ少しだけ多かった
 『 あの・・・・・・、これ・・・・・・・・・・・・ 』
 『 まぁ気にするな。それくらいの金額ならなんとでもなるから 』
 『 はい!ありがとうございます 』
 俺は領収書にサインをして、店長に渡した
 『 はい、・・・・・・今までご苦労さん 』
 『 どうもお世話になりました 』
 『 元気でな。・・・・・・近くに寄ったら、たまには顔を出せよ 』
 『 はい、必ず 』
 俺は一礼して事務所に背を向けた
 『 あ、そう言えば、隣町のファミレスで従業員を募集していたぞ
   時給は此処より少しは良いくらいだな 』
 俺は振り返り、店長に向って深々とお辞儀をした






    Scene・7

  
 部屋に帰る途中、俺は店長の話を思い返していた
 確かに説教ばかりできつかったが、少しだけ引っ掛かる所があった
 自分の部屋に少しだけ日が差し込んだような、そんな感覚がした 

 次のバイトは直ぐに決まった
 親に対しても、その晩に電話を入れた
 すると、慎二から電話がいっていたらしい
 あいつはなにも言わずにそんなことまでしてくれていた
 改めて色々な人に世話になったのだと知った
 親への電話を切ったあと、直ぐに慎二へ電話した
 相変わらず忙しそうにしている親友に、どうしてもありがとうを伝えたかった
 慎二は心配している様子だったが、
 俺の声を聞いて、少しだけ安心しているみたいだった
 本当は、結構無理している
 でも、今はそんな無理をしないといけない時だと思った

 電話の最後に、慎二は速瀬の名前を出した
 俺は当分速瀬には近づかない事を話した   
 速瀬には慎二から『 ありがとう 』を伝えてもらう事にした
 慎二ははじめ納得しなかった、が、俺の話を聞いて了解してくれた



 茜ちゃんには自分から会いに行った
 当分見舞いに出向けない事、そして俺の無様な姿をすべてぶちまけた
 その際、彼女の父親に言われた等とは口に出せなかった
 それは、俺の不甲斐なさから言わせてしまった言葉だったからだ
 それを言ってしまったら、自分をもっと貶めてしまいそうで
 場合に寄っては涼宮家にも問題を起こしてしまいそうで怖かったのもある
 はじめ軽蔑するような眼差しをされたが、
 俺の考えている事をすべて伝えたら励ましてくれた


 それからはバイト中心の生活に変わった
 それと同時に受験用の参考書を揃えた
 時間があると少しでも参考書を開くようにした
 以前ほど進めるペースは早くなかったけど、しないよりましだと思った
 慎二には迷惑かもしれないが、週に一回は電話を入れるようにした
 そうする事で、慎二に少しでも認めてもらいたかった
 俺はもう大丈夫だと・・・・・・・・・・・・
 速瀬からは電話が掛かってくる
 俺は3回に2回は無視した
 あいつには気を許すと甘えてしまいそうで・・・・・・・・・・・・



 しかし、数日もしないうち速瀬は俺のアパートを訪れた・・・・・・・・・・・・

    


 

    Scene・8


 土曜日の夜だった
 速瀬は仕事から直接此処へ来たようだ
 スーツ姿で部屋の入り口に立っていた
 
 『 何か用か? 』
 『 ・・・・・・孝之、・・・・・・・・・・・・少し話がしたいの・・・・・・・・・・・・ 』
 速瀬は何かを含んでいる感じがした
 先日の事はうろ覚えだけど、何をしようとしていたかはわかった
 俺は二人っきりになるのを嫌って、飯を食う事を口実に駅前に連れ出した
 それでも不安を覚えた俺は、慎二を電話で呼び出していた           
 


 駅前の居酒屋で久しぶりに3人顔を合わせた
 本当は1・2週間前に顔を合わせているのかも知れないが、
 俺の記憶が定かでないのでそういう事にしておく

 俺はわざとアルコールを頼んだ
 速瀬の話を少しでも遠ざけるようにアルコールを進めた
 慎二は慣れた物で、一杯目を煽って『 美味い! 』なんてほざいている
 しかし速瀬は渋った
 それでも俺が一気に酒を煽ったので、諦めたのか少しだけなめた
 アルコールを入れたから気が大きくなったのか、
 俺は自分から自分の近況報告をしはじめた
 新しいバイトを始めた事、今まで迷惑を掛けてしまったこと
 あのあとにずっと考えていたこと・・・・・・・
 そして
 ・・・・・・解けかけている答え・・・・・・


 『 慎二は聞いているんだろう?俺が遙にしてしまった事、 
   病院からあいつを連れ出そうとした事を・・・・・・、
   そして見舞いに来るなと言われた事も・・・・・・ 』 
 『 う・・・・・・あぁ、・・・まぁ・・・・・・大体はな・・・・・・ 』
 『 まあ、これは俺が不甲斐無いばかりに起こしてしまった事だ、
   もう何を言われても仕方ない 』
 『 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 』
 『 涼宮の親父さんには悪い事をしたと思っている・・・・・・ 』
 『 ・・・・・・ああ・・・・・・ 』
 『 そして感謝もしているんだ 』
 『 ? 』
 『 あれだけ言ってくれるのは、
   俺の事を本当に考えてくれた事なんだと思う
   だから、俺はその思いに答えないといけないと思った・・・・・・ 』
 『 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 』
 『 だから遙を諦めようと思ったんだ・・・・・・・・・・・・ 』
 『 ああ、そのほうが良いかも知れないな 』
 『 そう思って、ずっとずっと考えて・・・・・・・・・・・・それでも・・・・・・ 』
 『 それでも? 』
 『 それでも俺は、諦められない。今でも遙が好きだ
   これからもずっと遙を好きでいたい 』
 『 おい、孝之! 』
 『 ああ、都合の良い事はわかっているよ
   だから当分会いに行く事は無いと思う
   俺が自分を認められる様になるまでは、今のままで良い・・・・・・ 』
 『 それじゃぁお前・・・・・・ 』
 『 ・・・・・・・・・・・・、おれさ、大学受験しようと思っているんだ 』
 『 えっ? 』
 『 参考書も揃えた。目標は白陵大。・・・・・・・・・・・・ただし、今年じゃぁ無い 』
 『 ? 』
 『 俺の目標は、遙と受験する事。同じ学年で同じ時間を過ごして
   同じ日に卒業する。社会にでた時には違う道を進むだろうけど
   俺はそれでも遙と一緒に歩きたいんだ 』
 『 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 』
 『 ・・・・・・・・・・・・どう思う?・・・・・・正直な事を聞かせて欲しい・・・・・・ 』
 『 ・・・・・・いや、・・・・・・もう決めたのか? 』
 『 ああ 』
 『 ・・・・・・・・・・・・、それだけスッキリした顔で言われたら反対もでねぇよ 』
 『 サンキュー 』
 
 この間、ずっと黙っていた速瀬が口を開いた

 『 じゃぁ、たかゆきは・・・孝之はこれからの数年間、無駄に過ごすんだ・・・・・・? 』
 『 無駄?・・・・・・何が無駄なんだ? 』
 『 遙はいつ目覚めるかわからないのよ?その間、ずっとバイトして勉強して・・・・・・
   やっていけると思う?・・・・・・無理だよ・・・・・・だって、保障は無いのよ! 』
 『 ああ、きっと何年かした時には、後悔すかも知れないな 』
 『 年を取ってから仕事探したって、不利になるだけだよ。それでもいいの? 』
 『 ああ、なにを言われても、俺はもう決めたんだ 』
 『 だからって・・・・・・・・・・・・ 』
 『 速瀬!・・・・・・もう・・・・・・いいだろう?孝之の決心は固い
   俺たちが何言ったって聞く奴じゃない。お前も判っているんだろう? 』
 『 ・・・・・・・・・・・・ 』
 慎二は速瀬の肩に手を掛け、諭すように声を掛けた
 多分これで、速瀬も理解してくれたと思う


 ・・・・・・もし、馬鹿やっていた高校時代の俺だったら、
 速瀬に気持ちが動いたかもしれない
 ・・・・・・でも、今の俺は、もう迷わない
 俺の気持ちは揺るがない
 俺は遙に教えてもらった
 遙が教えてくれたんだ






    Scene・9
 

 別れ際、俺は二人に頼んだ事があった
 それは遙の見舞いに行く事
 俺が出来ない分、変わりに行って欲しい、
 そして何か変わったことがあったら教えて欲しいと・・・・・・

 慎二は快く引き受けてくれた
 速瀬は元々遙の親友なのだから、なにも言わずに通ってくれる
 そして俺は毎日真面目にバイトを続ける日々に戻った

 しかし、あの日を境に俺の周りに変化が起こっていった
 慎二とは会う機会が増えていった
 慎二は、病院へ頻繁に通えていない事を謝っていた
 俺はそれで良いと言った
 確かに遙の情報は欲しかったが、
 無理やりやらせるのは違うとわかっていた
 むしろ高校の頃のように、
 二人で馬鹿を言える時間を作ってくれる事が嬉しかった
 
 最近では速瀬もそれに付き合うように顔を出してくる
 慎二から情報が得られない分、速瀬からは色々と話が聞けた
 遙のこと、茜ちゃんのこと、ご両親の事・・・・・・
 速瀬と二人で会うことは無かった
 速瀬は慎二がいる事を必ず確認してからやってくる
 だから安心して会うことが出来たし
 二人の思いやりが、ありがたいと思った
 そんな日々を重ねていた



 冬も終わりのある日、速瀬から電話があった
 遙のお母さんが倒れたらしい
 最近顔色が悪かったと聞いてはいたけど、それ程とは考えていなかった
 かなり無理をしていたらしい
 速瀬からの電話を切って、俺は直ぐに病院へ駆けつけた
 

 通いなれたはずの病院も、時間の経過を感じさせた
 遙のお母さんの病室がわからない
 だから遙の病室へ向った
 きっとそこに行けば何かがわかるはずだから
 何かが変わるはずだから・・・・・・



 あるはずの病室は無かった
 自分の覚え間違いかもしれないと思い、別の階も調べてみた
 ・・・・・・何があったんだ?・・・・・・
 不安な気持ちを抑えて、
 以前何度も前を通ったナースステーションに顔を出した 
 ほとんどの人が変わっていた
 半年という時間は、短いようで長かった事を思い知らされた
 
 それでも、医師の回診時間だったらしく、ちょうど遙の担当医師がいた

 『 ・・・・・・君は・・・・・・涼宮さんの・・・・・・ 』
 『 あっ、先生!・・・・・・ご無沙汰していました 』
 『 ・・・・・・・・・・・・ 』
 『 あの時はご迷惑お掛けしました 』
 俺は頭を深く下げた
 『 ・・・・・・大分、顔色が良くなったみたいね? 』
 『 はい、何とかやっています。・・・・・・ところで遙、涼宮遙さんは・・・・・・ 』
 『 ・・・・・・君は出入り禁止になっていたはずよね? 』
 『 ・・・・・・はい、そうですけど・・・・・・、今は・・・・・・ 』
 『 ・・・・・・聞いたのね?・・・・・・彼女のお母さんの事 』
 『 はい 』
 『 ・・・・・・・・・・・・、ちょっと目を見せてくれる? 』
 そう言って先生は俺のあごをつかんで、目の奥まで見透かすように睨みつけた
 『 ・・・・・・そう。・・・・・・・・・・・・ついて来て・・・・・・ 』
 先生は手を離すと直ぐに歩き始めた
 『 ・・・・・・あの? 』
 『 ちょうど涼宮さんもいらしているから、話はその時にね 』
 『 ・・・・・・はい・・・・・・ 』
 
 程なくして一つの病室の前に立っていた
 先生は「 ここで待つように 」と言って中に入っていった
 時間は掛からなかった
 すぐに先生と後ろから遙のお父さんが現れた
 『 ・・・・・・鳴海君・・・・・・ 』
 『 ご無沙汰しています 』
 俺は直ぐに頭を深々と下げた
 『 涼宮さん、お話は此方で・・・・・・ 』
 
 通された場所は先生の個室らしい
 いつでも診察できるよう整理されている
 ついたての奥へ通されると、そこにソファーが現れた
 『 どうぞ適当に掛けて・・・・・・
   コーヒーでしたらご用意できますけど・・・・・・ 』
 『 いえ、私は結構です 』
 『 あ、俺も要りません 』
 『 ・・・・・・そう・・・・・・ 』
 先生はコーヒーメーカーのコーヒーをカップに注ぎながら話しはじめた
 『 此処でならどんな事になっても大丈夫、鳴海君、話を聞きましょうか? 』
 『 あ・・・・・・はい 』
 『 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 』
 『 何と言えば良いか・・・・・・・・・・・・あの、
   おれ・・・・・・私、聞きました。奥様の事を・・・・・・ 』
 『 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 』
 『 それで・・・・・・それで、なにかお手伝い・・・・・・できればと・・・・・・ 』
 『 ・・・・・・・・・・・・それで・・・・・・来たのかね? 』
 『 ・・・・・・はい・・・・・・。もちろん何も出来る事が無いかもしれませんが・・・・・・
   それでも・・・・・・何か手伝える事があればと思って・・・・・・ 』
 『 ・・・・・・・・・・・・ 』
 


 少しの間が重かった
 それでも俺の気持ちは伝えたと思う
 
 沈黙を壊すように俺は話し続けることにした
 『 あの・・・・・・ 』
 しかし、それを遮るように先生が話し始めた
 『 涼宮さん。私が彼に引き合わせた事を考慮に入れていただけますか? 』
 『 ・・・・・・香月先生・・・・・・? 』
 『 私もあの時立ち会いました。・・・・・・今の彼なら大丈夫です・・・・・・ 』
 

 再び沈黙が訪れる
 ・・・・・・やはり重い・・・・・・
 急に涼宮のお父さんが顔をあげた
 『 私はあの時、君に諦めるように言ったね? 』
 『 ・・・・・・はい・・・・・・ 』
 『 君は・・・・・・今、どう考えているのだね? 』
 『 ・・・・・・・・・・・・あ、お、・・・・・・私・・・・・・ 』
 『 俺でいいよ、・・・・・・使い慣れない言葉を使うのは大変だ 』
 そう言った遙のお父さんは、少しだけ口を緩ませた
 そんな仕草一つで気持ちが楽になった
 『 あ、じゃあ、お言葉に甘えて・・・・・・、俺、あの時、少しの間放心状態でした
   なにも考えられなくって、考えるのもめんどくさくて・・・・・・
   でも、お父さんに言われた事が頭に浮かんできたんです 』
 『 ・・・・・・・・・・・・ 』
 『 何でそんな事言われなくっちゃいけないんだ?って考えはじめたら
   なんか自分を見つめてて、自分がそれまでやっていた事が思い返されて、
   自分の間違いに気付いたんです。一緒に、人に迷惑を掛けていた事も・・・・・・ 』
 『 うむ・・・・・・・・・・・・ 』
 『 それに気が付いて、それら全てに感謝して、改めて考えたんです
   今後自分がどうしたいのか・・・・・・・・・・・・
   俺、今でも・・・・・・遙のことが・・・・・・好きです。これからもずっと側に居たい
   ただ、あの頃の自分は情けなかった。自分がしっかりしていないのに
   誰かの・・・・・・遙の事だけを求めるなんて・・・・・・求めるだけなんて卑怯だと
   ・・・・・・・・・・・・だから俺・・・・・・オレ・・・・・・ 』
 『 ・・・・・・もういいよ、鳴海君 』
 『 いえ、まだ俺、きちんと言えていない・・・・・・・・・・・・
   何で上手く言えないのだろう・・・・・・ 』
 『 君の事は、茜達から聞いていた。・・・・・・頑張ていたんだね・・・・・・ 』
 『 いえ、オレはまだまだで・・・・・・ 』
 『 それでも、一人でやってきたんだろう?
   それに、友達も今は快く応援してくれているみたいだね?
   家内のことは・・・・・・速瀬君に聞いたのだろう?
   彼女のことは、茜と家内から良く聞いていたよ、
   そんな彼女が、君を助けてくれているんだ、
   もう、自分を見失ったりしないだろう? 』
 『 ・・・・・・・・・・・・はい・・・・・・・・・・・・ 』
 『 正直、困っていたんだ。私と茜では少しだけ手が足りなくってね
   君さえよければ・・・・・・いや・・・・・・・・・・・・
   鳴海君、申し訳ないが手伝ってくれ、お願いします 』
 オレは深々と頭を下げられ困惑した
 凄く居心地が悪い


 でも、これでスタートに立てたのだと思った






    Scene・10


 見舞いを許された時、条件がついた
 一人で抱え込まない事
 そして無理をしない事
 自分の事を優先する事等、きつく言い渡された
 俺は全てクリアして、毎日遙の病室に通った
 時には慎二や速瀬を伴って見舞いに訪れた

 俺に出来た事はほとんど無かった
 それでも、遙のお父さんは感謝してくれた
 何より茜ちゃんが明るくなった事が嬉しいと・・・・・・

 茜ちゃんは一人で何でも抱え込もうとしていた
 お母さんが倒れたから、そんな状況が余計に加速しそうだった
 しかし俺の登場で、一気に減速したらしい
 ・・・・・・案外、俺が新たな負担になっていたかも・・・・・・と考えてしまう事もある
 それでも、茜ちゃんの笑顔が見られることが嬉しいと言われた
 
 俺が遙の病室に居ると、茜ちゃんは明るい笑顔で入ってくる
 時には世間話もした
 俺が戻ってきた時は、かなり複雑な顔をしていたけど
 今ではそれも無い

 茜ちゃんといえば、
 速瀬に対してもきつく当たっていたことがあったようだ 
 何でも水泳を辞めた事を残念がってのいきさつらしい

 速瀬が水泳を辞めた理由、何となく察しが付いていた
 俺が不甲斐無いばかりに、こいつにはホント世話になったと思う
 ・・・・・・あの駅前で飲んだ日から、速瀬は再び水泳に戻っていた
 確かに一年のブランクは大きいと思う
 しかし、
 速瀬はそんな事を感じさせない活躍をしているようだった
 
 ちょうどそんなタイミングと重なり、
 茜ちゃんの態度は急変していったらしい
 今でも相変わらず『 水月先輩!水月先輩!! 』と慕っている
 このまま量産型が強化していくのは問題だと思うのだけど・・・・・・・・・・・・

 お母さんの方は、直ぐに退院した
 しかし、無理は禁物と遙の看病を減らしていた
 その分、俺は遙の家へ訪れるようになった
 必要な物を揃えた袋を届けるだけだが
 それだけでも助かると言ってくれる
 そんなこんなで、月日は過ぎていった・・・・・・・・・・・・






    Last Scene


 俺は相変わらず、バイトと見舞いと勉強の毎日を過ごしていた
 勉強に関しては、今なら遙にも教えられえる自信がある
 バイトで稼いだ金は、入学金なら簡単に払えるほどになった
 一年以上こんな生活をしているというのに、
 俺の不安定な部分は見せる事が無かった
 『 少しは遙を支えてやれる位になったか? 』
 なんて自分で過大評価もしている
 

 
 そして再び夏が近づく・・・・・・・・・・・・





 6月のある日、異変は起こった
 普段どおりに病室へ見舞いに行った日
 病室はあわただしかった
 茜ちゃんは病室の前で立ちすくんでいた

 『 何があった? 』
 『 ・・・・・・・・・・・・!? 』
 茜ちゃんは、言葉に出来なかった
 俺は慌てて病室を覗いた
 ベッドの周りには看護士と先生が忙しく動き回っていた
 再び茜ちゃんの方へ向き直った時、茜ちゃんはやっと声を出した

 『 おねぇちゃんが・・・・・・おねぇちゃんの手が・・・・・・・・・・・・ 』
 『 ・・・・・・手?・・・・・・遙の手がどうしたんだ! 』
 『 おねぇちゃんの手が・・・・・・・・・・・・動いた・・・・・・・・・・・・ 』
 『 !? 』

 俺は驚きでその場で立ちすくんだ
 それは滑稽だったと思う
 茜ちゃんと俺が同じ様に呆然と立ちすくんでいるのだから
 

 結局その日は見舞いにならなかった
 色々と検査や何かで、俺たちがお邪魔する余裕は無かった
 あとからやってきた遙の両親と、そのまま引き取る事になった

 それからの数日は確実に良い兆しが増えていった
 俺も喜びを隠せなかった
 それでも生活は普通に続けた
 普通に続けている気になっていたのかも知れない
 もしかしたら気色悪い奴になっていたかも・・・・・・
 それでも、遙のお父さんとの約束だけは守る事を忘れないよう心がけた

 

 見舞いから帰って来た所へ一本の電話が入った
 茜ちゃんからだった
 それは突然の、
 本当に突然の知らせだった
 『 お姉ちゃんの目が醒めたよ 』
 俺は直ぐにでも病院へ駆けつけたかった
 しかし、それは許されなかった
 目覚めたばかりの人間にショックを与えるのは危険だと言われた
 数日間、面会謝絶になってしまうらしい



 俺は数日待たされる事になった
 それでも、今までの事を思えば、許せる事だった
 そしてついにその日が来た



 俺は速瀬と慎二と連れ立って、病院へ向った
 手には抱えきれないほどの花束を持って・・・・・・





 病室の扉を握る

 静かに開けたその先には

 待ち焦がれていた

 遙の笑顔があった






 『 おはよう、はるかっ! 』










    PS・後日談 


 その後、遙は順調に回復
 リハビリも難なくこなし
 無事に退院した




 そして・・・・・・・・・・・・










 『 ハァハァハァ・・・・・・やっぱりきついよ・・・・・・ 』
 『 だから言っただろう、まだ無理だって・・・・・・ 』
 『 だって、早く来たかったんだもん 』
 『 ・・・・・・しょうがない奴だな・・・・・・ 』 
 『 でも、・・・・・・辿り着けたよ、・・・・・・無事に・・・・・・ 』
 『 それでもきちんと歩いて帰れるなら、俺も文句は言わない 』
 『 じゃぁいいよ、何処へでも置いていけば! 』
 『 ああ、・・・・・・そうするかな? 』
 『 ・・・・・・!?・・・・・・あ、やっぱり嘘!! 』
 『 はは、冗談だよ。あ、ほら見えてきたぞ 』
 『 うん、・・・・・・また此処からの景色が見られるなんて・・・・・・ 』

 『 ・・・・・・・・・・・・これから幾らでも見られるさ・・・・・・・・・・・・





   ・・・・・・・・・・・・俺たちはこれからも一緒に歩いていくのだから・・・・・・・・・・・・ 』










                  君が望む永遠if・SS 
                  『 孝之へ・・・・・・ 』END
                        04.08.31






      あとがき  takaさんの原案で書き始めたIF・SSですが如何でしたでしょうか?  孝之が遙を待ち続けると言うのが、原案でした。  今までmaoshuさん・takaさんと、この原案で発表されていますが  大分気色の違った物になったようですね。  この孝之、かなりしっかりした人間になりました。  でもこれぐらいで無いと遙を任せられませんから(笑)  水月には損な役所を押し付けてしまいました  私には良い手立てが思いつきませんでした  水月FANの方々、申し訳ありません  きっと異論や意見、不満があると思います  もし良ければ掲示板にカキコお願いいたしますm(_ _)m   本日は長々とお付き合い、ありがとうございました。
     

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