君が望む永遠SS

「やっべぇー、おくれちまったな…。」
柊町の駅の階段を降り、遙との待ち合わせ場所へ急ぐ。
時計を見ると15分を過ぎている。
「遙、帰っちまったかな?」
そんな事を考えながら改札を抜けた。
駅を出ると、そこには見慣れない光景が広がっていた。
救急車が止まっている。
「なんだ?事故か???」
他人事のように感じながら、遙との待ち合わせ場所へ向かう。
しかし、その方向には人だかりが見える。
「あそこがあんなじゃ、遙は場所を移動しちまっただろうな…。」
周りを見ながら遙らしき人物をさがす。
ふと会社員の二人組みが脇を通り抜けた。
「可愛そうに、待ち合わせだったのかな……」
「……そんな事、駅前なら皆そうだろう?」
心の中で思った。
すると今度は女子高生がやがやしゃべりながらすれ違う。
「ちょっと、救急車来るの遅くない?」
「へぇ、そんな大きな事故なんだ……。大変だな…………。
 っと、そうそう遙を探さなくっちゃ。」
一瞬気を取られていた事態を頭から振り払い、再び遙の姿を探す事にした。
でも、少しだけ心配事が心の隅に残っている。
それも直ぐに振り払われた。
遙の後姿らしき人、発見!!!
「遙!」
っと、その人の前に廻ると別人だった。
再び心配事が蘇って来る。
だって、事故の場所は待ち合わせしていた所だ。
「まさか。」
自分の心で否定する。
しかし、気持ちは居た堪れなくなって、いつしか遙を声を出して探し始めた。
「遙?はるか??」
そして、人ごみの後ろ。
もしかしたらその人ごみの中に居るかもしれない。
ふっと眺めるとそれらしき人物を発見した。
「遙!」
「あ、たかゆきくん。」
「はぁ、よかったよ。まさか遙が事故にあったんじゃないかって心配になっちまったんだ。」
「あっ、うん、ごめんなさい。」
「いや、こっちこそゴメンな。だいぶ遅れちまった。」
「ううん、いいの。きてくれればそれでいいの……」
「よし、じゃぁ行こうか?」
っと、振り返り歩き始めた。
そして、遙に向かって話しかけようと振り返ると、そこに遙の姿は無かった。
「???」
そして再び事故現場へ。
「遙?」
人だかりの中、掻き分けてロープの前まで来た。
そこで目にしたものは、血に染まったピンクのリボンだった。
近くで警察官が何かを言っていた。
「………涼宮………遙………」
「……嘘だろう?……そんなことあるわけが無い!!!」








ガバッと身体を起こし部屋の中を見つめる。
真っ暗な中に食べかけのコンビ二弁当が散らかっている。
手をベッドのシーツを滑らすと、そこには温もりがあった。
振り向いてみると、背中を見せている肌が呼吸していた。
髪の毛にはピンクのリボンがある。
自分の突然の行動に、横にいた遙が起きたのか
「どうしたの?」
っと、もぞもぞと身体を寝返らせた。
俺は安心して、ベッドに腰を掛けなおし、
「………いや、なんでもない。
…………ちょっと、怖い夢を見ていたんだ………。」
と答える。
「怖い夢って、どんな………?」
おれは頭を掻き揚げ、人心地付いた。
「ん、ああ、遙との待ち合わせに遅れて行った夢なんだ………」
振り返る。
遙の姿を確認する。
しかし、ベッドの上にあるはずの姿が見えない。
「えっ!?」
再び部屋の中を見回す。
「遙?はるかー?」
しかし、そこには人の気配は無い。
「まさか、そんな……!」








「はぁ はぁ はぁ ………」
再び身体が飛び起きる。
ベッドに腰掛けなおす。
体が寝汗で気持ち悪い。
夢を見ていた?
わざと振り返り、ベッドの上の遙の姿を探す。
しかしそこには何も無い。
人のいた形跡すら見えない。
次第に落ち着いていく自分の目にぶわっと涙が溢れ出す。
「はるかぁ……。」
髪の毛を掻き揚げる。
額に掌を当てて顔を覆う。
「はるかぁ…………。」
部屋の暗黒が自分の心に流れ込んでくる。
「はるかあーーーーー!」



目の前に薄く霞がかかる。
その中に遙の姿があらわれる。
遙は笑っている。
「遙!」
孝之は駆け出してすがりついた。
「そばにいてくれ、頼む。
もう、何がなんだかわからなくなっちまった。
怖いんだ。お前が居てくれないと、俺は駄目だ。
はるか…………はるかぁーー………………」
遙に縋り付こうとする孝之の腕は空を切る。













ベッドの上に静かに起き上がる。
静かに部屋の中を見回す。
しかし、それまで見ていた事が夢だったと静かに認める。
その途端、見開かれた目から涙が溢れ出してくる。

「もう、俺には遙しか見えない。
俺の過ちは消える事が無い。
しかし、今更その事を悔やんだって、何も変わらないじゃないか?
どうすればいいんだ?どうすれば……」

心が張り裂けそうになる。
大声に出してさけびたい気持ちを少しだけこらえて枕にすがりつく。
すがりついた途端、抑えていた気持ちのありったけを大声で泣き叫んだ…………















「 は る か ぁ ― ― ― ― ― !! 
  は る か ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ !!!! 」 














         君が望む永遠SS『 君以外見えない 』END
                             04.07.29



後書きです 夢の中で夢を見ると言う話があります。 今回は、私的に書いてみたらどうなるかと思いました。 結果がこのように為りましたが如何でしたか? もし宜しければ感想など頂けると幸いです。 それではまた近日(!?) たくと
     

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