―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 遙へ…… 久しぶり、元気してた? 私は……まぁ元気。 こっちでなんとかやってる。 そういえば、遙が退院してもう一年半経ったんだね? あ、そうだ。 HAPPY BIRTHDAY 遙!!! もう、22歳だね? でも、遙は3年も損をしているから、 それを取り戻すのも大変だよね? そう言えば聞いたよ、大学受かったんだって? 今更だけど、 おめでとう! 一緒に孝之も受かってたんだって? あいつも結構やるね? 最初、冗談かと思っちゃった。 だって、『やる気ねぇ…』っていつも言ってたんだよ。 私には信じられない。 やっぱり遙と一緒だったからかな? 一緒に受かるなんて、あいつも随分やるじゃん! ……でも、良かったね。 やっと、一緒に学校へ通えることが出来るんだね。 本当によかったね。 私も新しい街に来て一年半、新しい職場で頑張っているんだよ。 これでもね、段々やる気を出せるようになってきたんだ。 今まで、めんどくさい事から逃げていたんだよ。 もちろん、仕事の事もね。 今までは適当に働いていたんだ。 一人になったからかな、気が付いたの。 自分を見つめ直す時間が取れたんだ。 ………… 今では孝之と別れて、良かったと思う。 だってね、あの頃は私、全然周りの事が見えていなかったんだよ。 孝之の事はもちろん、慎二君の事、茜のこと、遙の事、そして、自分の事。 一人で落ち着いて考えれば、何故あそこまで固執していたんだろう…… って、思うんだよね。 あの頃、一人になるのが怖かったんだ。 だってね、遙が事情を知らない事で、私はいつも不安になっていた。 遙がこの事情を知ってしまったら、どんな風に思うだろう?って。 遙の寝ていた3年間の間に、私の一番側に居るのが孝之になっていた。 3年前に戻って孝之よりも、遙と一緒に居たなら、 こんな事にはならなかったと思う。 私、子供だった。 ううん、今だに子供かもしれない。 だってね、学生の頃、遙に言われた 『水月がうらやましい。私、水月の強さに憧れちゃうな。』って一言に、 勝手に『私は遙より大人』なんだって、思っていたんだから。 ね、とんだ勘違いだよね? 恥かきついでにもう一つ言わせてね。 今、一人で居る事にやっと慣れてきたんだ。 でも、私そんなに強くないから、どうしても寂しくなっちゃうの。 そんな時、『孝之に会いたい』って、初めの頃は思っていたんだけど、 最近は、『遙に会いたい』気持ちが強くなってるんだ。 私、あの頃遙に言った事が無かったけど、 遙が『とても強い女の子』だって知っていたよ。 いつも前向きになろうと努力して、ずっとずっと前ばかり見ていた事、 知っているんだから。 だから、今、一番に会いたいのは、遙なんだ。 遙が学生の頃にくれた言葉が、今、一番の宝物に変わったの。 それは部活の時の遙の掛け声。 『水月―、頑張って!』って言葉。 私が、毎日を元気で過ごす為の活力元だよ。 今でもこの声だけは耳から離れない。 確かな言葉。 こんな言葉を教えてくれた遙、 ありがとう! 今、素直に言えます。 そして、親友として、 これからも変わらずに居てくれる事を 信じています。 なんか、めちゃめちゃ恥じ曝しているね? 久しぶりに遙と話しているつもりで書いたから、 恥ずかしい言葉や、告白ばかりになっちゃった。 この手紙は、読み返さないで出す事にするね。 私の正直な気持ちと、遙への愛が込められていると思うから……。 あちゃー、滅茶苦茶恥ずかしいわ。 でも、これが遙への誕生日のお祝いかな? じゃあ、またね。 そのうち気が向いたら、また書くね。 from 速瀬 水月 PS・住所は教えない。今、本当の遙に会ったら、私挫けると思う。 だから、まだ今は会えないんだ。ゴメンね、許して。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 部屋の片隅に封を切られた封筒が落ちている。 中身は手の中に大切に握られている。 その手首の辺りには、涙を拭った跡がある。 そして、手紙にも少しだけ、うれしなみだの跡が……。 『 ………水月………ありがとう……… 』 君が望む永遠SS『Love Letter』END 04.03.17 |
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