君が望む永遠SS
見つめずにはいられない





「 あっ、鳴海君! 」
学校近くの図書館の中、偶然鳴海君を見つけてしまった。
私は彼から身を隠すように、本棚の影に隠れた。
手に持っていた絵本で顔を隠す、視線だけは彼に向けていた。
彼は気付いていない。
ううん、彼は私の事を知らない。
なのに私は彼から姿を隠す。
お友達と楽しく交わす会話。


何を話しているんだろう?
学校の事かな?
それとも遊びの事かな?
すごく気になる。
…………
あっ!? 図書館の人に注意された!!!


お友達と気まずそうに顔を見合わせて、二人は別々の行動を取り始めた。
お友達は奥のリファレンス室に向かっていくみたい…。
鳴海君は、新刊コーナーの本を手に取っていた。
でも、直ぐに戻して別の場所へ歩いて行った。


……鳴海君、どんな本を読むのかな?……


すると彼は、まっすぐに此方の方へ向かってくる。

……えっ!?(どきっ!)
…………ええっ!?!?(どきっどきっ!!)
……………………え、えーーーーーっ!?!?!?!?(どきどきどき……)


私の胸がどきどきをはじめる。
収まる事を忘れ、ドンドンドンドン早く鳴っている。
近づいてくる距離
私の足は震えている。
足が動かない!!!
逃げ出したい気持ちも、言う事の聞かない足が邪魔をする。
頭がぐるぐるぐるぐる廻りはじめる。


彼がもうすぐそこまで……!!?
…………………………………………………………………………………………………!!!!!!!!!


彼と目が合わないように、ぎっちり目を瞑った。


もう絶対そばにいる!!!


顔中に力が入る。


心臓の音が聞こえそう!!!
顔からぎゅうーーーーっって音が聞こえそう!!!
変な子に見られないかな?
見られたらどうしよう???



そう思った瞬間、私の横を風が抜けていった。
ふっと、顔をあげるとそこには誰もいない。
後ろを振り向くと、彼が雑誌のコーナーへまっすぐにむかっている。
彼の背中だけがまぶたに焼き付いていく……。





気が付くと、いつの間にか私の心臓は落ち着いていた。
頭はボーゼンとしたままだった。
でも、心に何かが残っている。




 寂しい気持ち?

 虚しい気持ち?

 切ない気持ち?

 悲しい気持ち?

 そのどれもが当てはまるようで、

 そのどれもが当てはまらない。


 次第に目頭が熱くなる。


だってしょうがないよ。鳴海君はまだ私の事を知らないんだもん。
私は彼を知っているけど、彼は私を知らないんだもん。
クラスは違うし、合同の授業もない。
仲の良いお友達だって、彼のクラスにいるわけでもない。
そんな人とどうしたらお友達になれるのかな?
どうしたら、私の事を知ってもらえるのかな?
………………………………………………。
知らない子がいきなり『 付き合ってください! 』なんてやったって、
駄目に決まっている。
失敗するのが目に見えている。
このままずっと見ているだけなのかな?
それとも諦めなさいって神様が言っているのかな?
………………………………………………。
あきらめる…………なんて…………出来ないよ。
だって、私の目はもう彼を追っている。
彼の姿が見えると、見つめずにはいられない。
だって、もう彼を知ってしまったから………… 





いつしか、鳴海君はお友達と一緒に図書館を出て行った。
私はその出口の向こうの鳴海君を目で追いかけ続けている……………













      君が望む永遠SS『 見つめずにはいられない 』END
                 04.08.04


   後書き

 いきなりこんな話が浮かんでしまいました。
 かなりショートなので、一気に書き上げました。
 遙が1・2年生の頃のお話のつもりです。
 上手く描けたか解りません。
 もし宜しければ感想など掲示板に頂けると嬉しいです。


     

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