それでも奇跡を信じる意味

それでも奇跡を信じる意味
原案・taka


 
「鳴海くん、君がどれだけ遙のことを大切に思ってくれているか、私達はよく知っている
つもりだ。だが、正直辛いんだよ。君を見ているのが。すまんが、もう遙に会いに来ない
でくれ。」
 孝之は、一瞬父の宗一郎が言った言葉が理解できなかった。
「!」
「わかってくれ。これは君の為でもあるんだよ。たのむ、鳴海くん、もう、娘のところに
は、来ないでください。」
「...」
 それから、先のことは、孝之は覚えていない。
 雨が降っている中、一緒に遙のお見舞いに来ていた水月が、病院の入り口で笑顔で迎え
てくれて、孝之は自分の家に帰っていった。
 家に帰ってからも、孝之は呆然としていた。
 部屋の電気もつけず、ベッドに背を向けて地べたに座っていた。
「風邪ひくわよ。」
 水月はタオルを孝之に投げた。
 だが、孝之は自分の体をふこうとはせず、ただ、呆然と窓の景色を眺めていた。
「もう、しっかりしなさいよ。気持ちはわかるけど、私だって、私だって辛いんだから。」
 水月が声をかけても、孝之は動じない。
「仕方ないじゃない、どうしたって起きないんだから...答えないんだから...どん
なに思っても答えてくれないんだから...」
 さらに声をかけても、孝之は動じない。
「どうしようもないのよ、だから...だから、孝之...」
 水月は側に来て、孝之の顔を覗き見るが、それでも、動じない。
「なんとかいいなさいよ!」
 突然、水月は孝之の胸ぐらをつかんで叫んだ。
「あなたは生きてるんでしょ!答えて!!あなたは答えてよ!!」
 胸ぐらをつかんだまま、孝之の体を激しく揺するが、動じない。
「バカ!!」
 何も答えない、孝之を見た水月は、平手打ちをして、体を離した。
 そして、孝之の唇にキスをした。
 突然のことに、孝之は驚いた。
「好きなの...ずっと、ずっと好きだった...」
 水月の告白に、孝之さらに驚いた。
「知らないフリしてた...自分で自分の気持ちに知らないフリしてた...」
 水月は涙を流し、泣き声を上げながら、静かに話していた。
「あなたを裏切れないから...でも...でも、もうダメなの...もう見ていられな
いの...孝之のことが...私のことも...」
 孝之は、水月が話したことを静かに聞いていた。
「私じゃ、ダメ...?」
 孝之は、下を向いて、しばらく、黙っていた。
 すると、水月は服を脱ぎ始めた。
 突然のことに、孝之は驚く。
 下着も脱ぎ、水月は全裸になると、孝之を抱きしめ、泣いていた。
 孝之は、水月に応じようとしたが、一瞬留まった。
「やめてくれ!」
 孝之は、水月を突き放した。
「た...か...ゆき...」
 あまりのことに、水月は呆然となる。
「やめてくれ!こんなことは!」
「孝之!私じゃダメなの?」
 孝之は黙ったまま答えようとしない。
 水月はその場で泣き出した。
 雨が、二人の様子を反映するかのように、ただ静かに降り続けていた。

 翌朝。
 孝之は、起きたが、そこに水月の姿はなかった。
 ちゃぶ台に朝食と、水月のメモが残されていた。
 いつものように食べ終わると、窓を開けて外の景色を見ていた。
「たのむ、鳴海くん、もう、娘のところには、来ないでください。」
 昨日の宗一郎の言葉が頭の中によぎる。
 いつものように、病院に行こうとするが、その度に、宗一郎の声がよぎる。
「遙...ごめん...ごめんよ...」
 遙の両親に迷惑をかけたくなかった孝之は、どうしても病院に行くことが出来ずに、
その場で泣き崩れた。
 その結果、孝之は一日中家の中にいた。
 夜、水月が帰ってきたが、昨日の出来事の影響で気まずい雰囲気にはならずに、いつ
もの口調で、夕食を作っていた。

 それから、三日。
 孝之は、毎日外にも出ずに、一日中家にいた。
 この日は休日。
 水月は孝之の家にいたが、外の景色を眺める姿を見て声をかけづらかった。
 そして、そのまま夕方になった。
「私、夕食作るね。」
 水月はいつものようにキッチンへと向かって歩き始めた。
 そのとき、玄関のドアが静かに開いた。
「お兄ちゃん、いる?」
 しばらく、病院に来ない孝之を心配した茜が様子を見にきていた。
 茜は、玄関に水月の靴を見つけた。
「あっ、水月先輩、来てるんだ...フフフ...」
 茜が中に入ると、部屋の奥で孝之の姿を見つける。
「お兄ちゃん、どうしたの?お見舞いに来ないなんて。風邪でもひいたの?」
 孝之が振り向くと、そこには、茜の姿があった。
「あ...か...ねちゃん...」
 途切れた声で茜の名前をつぶやく。
「ど、どうしたの...お兄ちゃん...」
 茜も孝之の状態が尋常でないことに気づいた。
「ウッ...ごめん、ごめんよ...遙...」
 孝之は、突然その場に座って泣き始めた。
「お、お兄ちゃん?」
 孝之の行動に茜は戸惑っていた。
「孝之!」
 キッチンにいた水月が孝之の泣き声を聞いて急いでやってきた。
 そして、孝之を抱きしめる。
 茜も黙ったまま、その様子を見つめていた。

「お、お父さんがそんなことを?」
 茜は気分が落ち着いた孝之から事情を聞いて、ひどく驚いていた。 
 すると、茜は突然、スポーツバッグの中から携帯を取り出した。
 そして、どこかに電話をかけていた。
 その様子は、明らかに興奮していた。
「ちょっと、お父さん!お兄ちゃんにお見舞いに来るなって!いったい、どういうこと!」
 茜は近所にはっきりと聞こえる程の大きな声で、相手に向かって叫んだ。
「茜...」
 突然の大きな声に孝之と水月は驚いていた。
「見ているのが辛いって、お父さんはお兄ちゃんが、お見舞いに来れなくて、今どれほど
辛い思いしているかわかってんの!」
 茜は興奮した声で叫んでいた。
「そう!今お兄ちゃんの部屋にいるの!何日も来ないから心配になって様子を見に来たのよ!」
 二人は、その様子を黙って見ているしかなかった。
「えっ!お兄ちゃんともう会っちゃダメだって?なんで、そんなことをいうのよ!」
 茜の怒りはもはや、最高潮に達していた。
「もう、お父さんなんか大っキライ!!最っっ低っっ!!」
 茜は言葉を吐き捨てると、電話を一方的に切っていた。
「茜...」
 水月はその様子を見ていて、呆然としていた。
「ホント最っ低っ!お兄ちゃんの人生を台無しにするつもりかって言われたって、今は
それどころじゃないっていうのが、ホントわかってないんだから!」
 水月は茜のこの言葉を聞いて、冷静になっていた。
「茜、お父さんの言う通りよ。もう、孝之とは会わないほうがいい。」
「水月先輩まで何言ってるんですか!」
 茜は水月の言葉を聞いてひどく興奮していた。
 だが、水月は茜のほうではなく、孝之のほうに体を向けた。
「孝之!いつまで落ち込んでいるの!」
 そういうと、孝之のほうに歩み寄り、胸ぐらをつかんだ。
「せ、先輩...?」
 茜は水月の行動に怒りを忘れ、驚いていた。
「遙が起きないのは、確かに辛いけど、私も、茜も辛いの!みんな、辛いのは同じなの!
でも、私も茜もちゃんと日常を送ってるの!いつまでも、落ち込んでちゃいけないことく
らいわかってるでしょ!だから、お父さんにあんなこと言われるのよ!悔しくないの!」
 水月は体を激しく揺らしながら、涙混じりの声で叫んでいた。
「先輩...」
 茜も何も出来ずにただ立ち尽くしていた。
 水月は今度は茜のほうに向き直る。
「茜、もう帰って!」
「え?」
「早く!」
「は、はい!」
 水月の突然の叫び声に驚き、スポーツバッグを肩に担いで玄関に向かって歩き出した。
「茜、もう来なくていいから!」
「え?」
「病院なんかに行ったら、未練を残したままになってしまうから、孝之には近づけちゃダメなの。
ホント、慎二くんの言った通りよ。ちょっとは突き放さないと、いつまでもこの苦しみから逃れ
られないわ。お父さんには、孝之が社会復帰したら病院にまたお見舞いに来ると言っといて。」
 茜は無言だった。
「あたしももう帰るから。」
「せ、先輩?」
 今度は驚いていた。
「言ったでしょ。ちょっとは突き放さないといけないって。だから、しばらくここには来ないこと
にしたから。茜も、もうここには絶対に来ないでよ。」
 茜は無言のままだった。
「茜、返事は?3、2、1、はい!」
「わ、わかりました。先輩!」
 茜は、水月の興奮した態度にしぶしぶだが、従うしかなかった。
「孝之、ちゃんと社会復帰出来たときだけ、連絡してきて。それ以外は、連絡してきたら即効で切
るから、そのつもりでいて。」
 水月は孝之に向かって、興奮した態度で言った。
「速瀬、行くな!行かないでくれ!」
 孝之は、水月に向かって歩み寄りながら、叫んでいた。
「ほら、そうやってすぐ私に甘えるところが、いけないのよ!いい!私はもう、孝之を捨てた
の!だから、私が孝之に付き合う義理なんかないの!わかる?」
 そう言うと、水月は孝之を突き飛ばした。
 バランスを崩して、孝之は床に倒れこむ。
「先輩、言いすぎですよ。お兄ちゃんがおかしくなったらどうするんですか?」
「そのときは、そのときよ。長い人生の中で、こんなことよりも大きくて辛いことが数え切れ
ないほどあるのよ。その度にこんなふうになってたら、今の時代を生きられるわけないでしょ!」
「そ、そんな、先輩はお兄ちゃんを見捨てるって言うんですか?」
「そうよ。私達が介入しなければ、孝之はちょっとは周りを見れるようになるんだから、それで
廃人になってしまったら、この時代には、不適格な、それまでの人間だったってことよ。」
「そんな、ひどすぎます。そんなこと。」
 茜は目に涙を浮かべていた。
「ほらほら、泣かないの。さっさと帰るわよ。」
「速瀬〜!茜ちゃん、行かないでくれ!」
 孝之の助けを求める声を無視して、水月と茜は帰っていった。
 一人部屋に取り残された孝之は、しばらく、泣き続けていた。
 
 それから、一週間が過ぎた。
 水月と茜は、ファミリーレストラン「すかいてんぷる」にいた。
 さすがに、水月はやり過ぎたと思って、しばらくは眠れぬ日々を過ごしていた。
 朝は必ず朝刊の地方記事に目を通し、ニュース番組を見た。
 孝之が、自殺でも図るのではないかと心配したからだ。
 仕事の帰りに、孝之の家の前を通ったが、水月は心を鬼にして、そこを素通りした。
「水月先輩、ちゃんと眠れているんですか?それにしても、あれから、一週間...何も連絡はないですね。
もしかして、部屋で餓死してるんじゃないですか?」
「茜!孝之の話はやめて!」
「はい。」
 二人はしばらく黙ったままだった。
 その長い沈黙を破ったのは、店員のオーダーを取る声だった。
 でも、その声は、二人のよく知っている声だった。
「た、孝之!」
「お、お兄ちゃん!」
 孝之のほうも、二人だと知らずに対応していたので、ひどく驚いていた。
「げ、元気してた、孝之?」
 水月はひきつり笑いをしながら、孝之に向かって言った。
「この野郎!人がせっかく、人生を取り戻したっていうのに、その第一声は何だ?」
 孝之は、オーダーコードを打ち込むリモコンで水月の頭をペシペシ叩きながら言った。
 だが、水月は孝之の様子に怒りもせず、ただ呆然としていた。
 茜も同様の表情をしている。
「た、孝之...」
「お、お兄ちゃん...」
「な、何だよ、二人して。」
「お帰り、孝之!戻ってきてくれたのね。」
 水月は孝之に思わず、抱きついていた。
「お兄ちゃん、ほんとお帰り。心配してたんだよ。」
 茜も孝之に抱きついていた。
 孝之は、予想外の二人の態度に驚いていた。
 そのとき、カウンタのほうから店長の罵声がとんできた。
「わっ、うるせいな、あの変態店長!ちょっと、二人とも離れて。続きは仕事が終わってから。」
 孝之は、カウンタにいる店長に怒られた後、再びこちらのほうに向かってきた。
「どうしたの、孝之?」
「お兄ちゃん?」
 二人とも、首を傾げていた。
「あの〜、オーダー聞くのを忘れた。」

 仕事が終わった後、孝之は二人がいる席に戻ってきた。
「店長〜!コーヒーひとつ!」
 孝之が終わる時間帯は、あまり客がいないので、店員といえば店長だけだった。
「鳴海く〜ん、いくらあがったとはいえ...自分のことは...自分でしなさい!」
 店長はひきつり笑いをして、コーヒーをドンッと音を立ててテーブルに置いた。
 コーヒーの中身が少し、テーブルにこぼれている。
 水月は慌てて、おしぼりを開けて、テーブルを拭く。
「何、あの店長?感じわるっ!」
「自業自得よ、孝之!」
 孝之は、水月の隣に座った。
「あの店長、いつもこういう性格だからさ。たまには、こういうことをやらないと気がすまない
んだよ。」
 水月が孝之のほうに向き直る。
「孝之?」
「ん?」
「おかえり、本当に戻ってきてくれたんだね。」
「おかえり、お兄ちゃん。」
「ああ、ただいま、速瀬、茜ちゃん。」
「でも、孝之よく戻って来れたわよね。あたし、孝之が自殺でもするんじゃないかと思って、毎
日、新聞やニュースを見てたのよ。社会復帰したら、すぐに知らせてって言ったでしょ。」
「ごめん、ごめん。あれから...本当に辛かったよ。」
 孝之は急に真面目な表情になった。
「あのときは、本当に死のうと思ってた。水月が夕食の準備したまま出て行ったから、そこにあ
る包丁を見つけて...これで、心臓を一突きすれば、楽になれるなって...」
「孝之...」
「お兄ちゃん...」
 二人は、で孝之の言っていることを静かに聞いていた。
「これで、楽になれるって包丁を持ったときに...遙の声が聞こえてきた...そのときにふ
と冷静になって考えてみたんだ...俺が死んだら、遙が目覚めたときにどう思うだろうって.
..」
 二人は無言だった。
「それで、今のこんな俺を見て、遙はどう思うだろうって考えてみたら、急に情けなくなって.
..遙が目覚めたときに、俺がこんなんだったら、きっと悲しむだろうって...被害妄想に悩
まされたままになるって...そう思ったときに考えてみたんだ...俺がしっかりしないと、
遙を支えてやることなんか無理だって...会わせる顔がないんじゃないかって...何年かか
るか知らないけど、いつか遙が目覚めたときに、俺が遙の事故にも負けずに頑張っていると知っ
たら、遙も頑張れるんじゃないかって...」
「孝之!」
「お兄ちゃん!」
 二人は、孝之の言葉を聞いて泣いていた。

 その夜、水月は孝之の家に来ていた。
 水月は帰りにスーパーで買い物をしていたので、両手いっぱいに買い物袋を抱えていた。
「はぁ、社会復帰出来たっていっても、やっぱり、部屋は散らかってるのね。」
「仕方ないだろ。仕事が終わったら、疲れて寝てしまうんだから。それで、起きたらもう時間で
そんな毎日だからさ、掃除する時間がないんだよ。」
「それで、電話をかけてこなかったの?」
 水月はそう言うと、キッチンのほうに向かった。
「今日は、お帰りなさいってことで、久しぶりに夕食ごちそうするね。恋しかったんじゃないの?」
 水月は孝之をからかいながら、夕食の準備をしていた。
「ねぇ、孝之、今遙に会いたい?」
 孝之は、急に下を向いた。
「どうせ、病院に行っても迷惑がかかるだけだよ。」
「本音はどうなの?」
「会いたいに決まってるだろ!茜ちゃんの様子からして、遙がまだ目覚めてないのはわかってるけ
ど、それでも、会いたい...」
 すると、水月は包丁を動かす手を止めて、孝之に向き直った。
「孝之、明日仕事休み?」
「ああ、そうだけど、どうしたんだよ、急に。」
「それじゃ、明日...病院行く?」
 孝之は、しばらく無言だった。
「でも、行ってもどうせ...」
「孝之が説得出来れば、大丈夫だよ。」
 水月は孝之の言葉を遮って、話した。
「説得...」
「そう、孝之が今、社会で頑張ってるって知ったら、遙のお父さんもわかってくれるよ。」
 水月の言葉を聞いても、孝之はしばらく黙ったままだった。

 翌日の朝。
 孝之と水月は病院にいた。
 二人の目の前には、遙の父宗一郎と、母の薫がいた。
 茜は両親の後ろで静かに様子を見守っていた。
「鳴海くん、もう遙には会わないでくれって言ったのに、どうして、また来たんですか?」
 宗一郎が静かに言った。
「今の俺を見ているのは辛いですか?」
 孝之の静かな言葉に遙の両親は驚いていた。
「答えてください!俺は、遙を支えるために自分を取り戻しました。今はフリーターですが、
ちゃんと働いて、自分の人生を歩んでいます。こんな俺でも、遙に会う資格はないというんで
すか!」
 遙の両親は無言だった。
「どうして、何も言ってくれないんですか!」
 水月も茜も、静かに孝之のやり取りを見守っている。
 孝之の言葉を聞いた両親は、何も言わずに、待合室のほうに歩き始めた。
「変わったな、鳴海くん。」
 孝之には、背を向けたまま、父の宗一郎は言った。
「私を見る目つきがちがうよ。こんなことを私が言う資格はありませんが、たまには、遙に会
いに来てください。」
 宗一郎の声を聞いて、茜は目に涙を浮かべた。
「それじゃ、お父さん...」
「私は、待合室で待っているから、どうか、遙に会ってやってください。」
 そういうと、両親は歩き始めた。
「あ、ありがとうございます。」
 孝之は、何度も両親に向けて頭を下げていた。

 孝之は、遙のいる病室に入った。
 以前と変わりはない、病室の雰囲気である。
 窓は開けられて、そこから入ってくる涼しい風が、ベッドに横たわっている遙の髪を揺らす。
「遙...」
 孝之は、ベッドに寝たままになっている遙に向かって静かにつぶやいた。
 病室のドアの向こうから、茜はその様子を見ている。
 中に入ろうとする茜を、水月は止めた。
「今はそっとしておいてあげて。」
 水月と茜はその様子を静かに見守っていた。
「遙...俺は元気でやってるから。いつか、目覚めたら俺が遙を支える...ずっと...
ずっとそばにいるから...」
 孝之は、遙に向かって新たな誓いを言葉にしていた。


僕がそばにいるよ 君を笑わせるから 桜舞う季節かぞえ 君と歩いていこう 僕がそばにいるよ 君を笑わせるから 桜舞う季節かぞえ 君と歩いていこう まぶしい朝は何故か切なくて 理由をさがすように君を見つめていた 涙の夜は月の光に震えていたよ 二人で 僕がそばにいるよ 君を笑わせるから 空のない街抜け出し 虹を探しに行こう いつもそばにいるよ 君を笑わせるから やわらかな風に吹かれ 君と歩いていこう 君と歩いていこう 君がいる 君がいる いつもそばにいるよ
河口 恭吾  「桜」 ―「それでも奇跡を信じる意味」 終―


あとがき

 takaさんのリクエストに答えて書いてみました。
 400字詰め原稿用紙26枚分です。
 原案を考えて頂いたtakaさん、いかがでしたでしょうか?
 遙が目覚めるところまでは書いていませんが、この後の様子は、考えなくてもわかると思います。

 タイトルの「それでも奇跡を信じる意味」ですが、二つの意味があります。
 ひとつは、遙を目を覚ますこと。
 もうひとつは、水月と茜が孝之が人生を散り戻すかということを意味しています。

 遙の事故から1年後、孝之は遙の父から「・・・もうこないで下さい」と言われズタズタの精神状態になり、
それでも支えてくれた水月と付き合うようになるのですが、もし、孝之が遙の父の言葉にも負けず一途に
遙を待ちつづけていたら・・というifストーリーになったでしょうか?

 SF、ラブコメときて、次はシリアスな話になりました。
 でも、泣きゲーとして知られている「家族計画」のようなシリアスの中にコメディを入れてみました。

 もし、あの状態で、遙の父の言葉にも負けず一途に遙を待ちつづけるには、
孝之の精神状態を正常にしないといけないと思いました。
ですので、荒療治ですが、水月が孝之を見捨ててるという部分を入れました。
 もし、自分も孝之みたいな友達がいたら、かかわりあいにならずに見捨てると思います。
慎二と考え方は同じです。
 みなさんは、どうでしょうか? 
 水月のように、世話を焼くか、慎二のように見捨てるか...

 SSの感想を待っていますので、よろしくお願いします...
  

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