ラブプラスSS
作・たくと
Long Good-bye



  またゲーセンで不良に絡まれた凛子さん
  相手はまた彼だった
  前回は二発喰らった
  今回はどうなることやら
  そんな事を考えながら凛子さんを庇いに入った

  彼女とは付き合い始めて400日が過ぎた
  とは言っても、それはスキップモードでの話し
  リアルタイムモードなら、まだまだ一ヶ月を過ぎたばかり
  先日、ラッキーな事に自分の誕生日を迎えた
  彼女は真剣に悩んで僕のためにプレゼントを選んでくれた
  そんな彼女が愛しくて、僕は彼女に見合う男になることを決めた……はずだった……
  彼女は青凛子さん
  普段はクールで物静かだが、格ゲーに関してはまったくの別人に変わる……

 『 そんな奴、1・2発でやっつけちゃってよ! 』
  無責任な言葉は相変わらずだ
  僕はそんなに腕っ節は強くない
  喧嘩はおろか人を殴ることだってしたくない
 『 えぇ、無理だよぉ 』
 『 泣き言言わない!ほらほらぁっ!! 』
  彼を見上げるとやっぱりどうしたって萎縮する
  僕にもっと何か勇気に代わるものがあれば……
  そんな事を知ってか知らずか、青凛子さんが再び口を開いた
 『 君にはそのバッグがあるでしょ!私が誕生日にあげたバッグが…… 』
  そう、僕の手には彼女から貰ったバッグが握られていた
  初めて付き合った彼女からの最初のプレゼント
  そう言えば、バッグの注意書きに書いてあった
 『 振り回せば武器にもなります 』
  そうか!思い出したよ
  僕は俄然やる気が出てきた
 『 そう、僕には彼女が付いている!
 彼女が一生懸命に選んでくれたプレゼントはきちんと身に着けている!!
 それが僕に力をくれる!!!
 バッグが腕時計が僕の支えだ!!!!! 』
  相手を見据え片手に握ったバッグを振り回し始めた僕を見て、彼は薄ら笑いを浮かべている
 『 くそぉ、馬鹿にしてんじゃないぞ!!!僕だって、僕だって…… 』
  そう思った瞬間、後ろから僕の肩が叩かれた
 『 ? 』
  肩を叩いたのは青凛子さんだった
  けど、彼女はムスッとした表情を浮かべている
 『 ……どうしたの???…… 』
  彼女は僕を見据え一言ポツリと漏らした
 『 私、あんたに腕時計なんて贈っていない…… 』
 『 えっ!? 』
  僕はさっきの言葉を声にしていたのだった
  青凛子さんとは付き合い始めて400日は過ぎているけど、
  実際にはまだ一ヶ月しか付き合っていない
  確かに先日僕の誕生日を迎えたけど、その時貰ったプレゼントは一つ
  青凛子さんから二つ貰った覚えはない
  腕時計を貰ったのは、別のデータの緑凛子さんからだった
  僕はしてはいけないミスをしてしまった
 『 最低ぇ! 』
  彼女は不満をいっぱいに表情に表し、喧嘩相手の彼に向かって歩き出した
 『 あんな奴、思いっきりボコッちゃって良いよ…… 』
  彼は呆気にとられた
  その上で僕に同情の眼差しを向けた
  青凛子さんは、彼の背に隠れ僕を見据えている
  全てを理解して僕を侮蔑する表情
  僕は力が抜け、そばにあった椅子に腰を落とした
  彼は彼で同情の眼差しで近づいてきた
  僕の目の前に立ちふさがる彼の手は僕の右肩に優しく下ろされた
 『 今日はこの位にしておくよ…… 』
  僕は助かったのだ!
  彼はそのまま僕の横を通り過ぎた
  一気に気持ちが緩んだ
  体の力を抜き脱力した僕の目の前に再び影が覆いかぶさった
  そこには青凛子さんが仁王立ちしていた
  彼女の右手は一瞬で僕の目の前に差し出された
 『 DS、出して…… 』
  最初、僕は何の事か判らなかった
 『 持ってきているんでしょ?DS、貸しな! 』
  言葉はぶっきらぼうで、僕には抵抗の文字は無かった
  さっきまで振り回していたバッグの中からDSを出し、彼女に手渡す
  青凛子さんはすぐさまゲームを起動させ、データを確認している
 『 どっち? 』
  乱暴に投げられた言葉に僕の返答は無かった
  その間にも彼女はゲームにペンを指し、ピロリン!ピロリン!!っとデータを弄っている
 『 じゃぁ、もういいっ!! 』
  彼女は適当にゲームを操作しはじめた
  すると、あまりにも聞きなれない音楽が流れ始めた
 『 何をするの? 』
  僕は不安に駆られ、彼女に聞いた
 『 データ削除するに決まってんじゃん! 』
 『 !? 』
  と驚いた瞬間、再びピロリンと明るい音が耳に届いた
  同時に目の前には床に落ちていくDSと
  さっきまで青凛子さんの手に握られていたはずのペンがスローモーションで落下していく
  重たげな音と乾いた軽い音をさせ、目の前にいたはずの人影は跡形も無く消えていた
  彼女は自分のセーブデータを消してしまったのだ

  その後、僕は再び彼女と出会いたくて、ゲームを何度もプレイした
  けど、新しい青凛子さんに会うたび、どうしても彼女と比べてしまう
  同じ青凛子さんのはずなのに、何故か違うところを見つけてしまい勝手に幻滅する
  それを何度か繰り返した後、僕は青凛子さんを追うことを諦めた

  今でも青凛子さんの事を考えてしまう
  セーブデータを消すのを躊躇わなかった彼女は、
  最初から自分のデータを消そうとしていたんだろうか?
  それとも間違えて自分のデータを消してしまったのだろうか?
  なんにしても僕の二股が彼女を失う事につながってしまった事だけは
  紛れも無い事実だった……

              Bad End


 なんてSSを思いついてしまい、現在書きかけ中のSSを中断して書いてしまいました(笑)
これじゃまるで『 カオスヘッド 』の主人公だよね!
SSの中にはある意味『 ネタばれ 』になる部分もありますが、全ての人がこの部分に行き着くかが不明だったので、
思い切って使わせてもらいました。 まぁ何処が……という部分は伏せさせていただきます。
取り急ぎで書いたので、読み辛い部分も多々あると思われますが、
最後までお付き合いしていただけた方、まことにありがとうございました m(_ _)m







     

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