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Winter Color
著:TAMAKI
「良和、どうしたの?」 「あぁ、透子か。うん。空眺めてたんだ。」 しばらく透子は何か考えた後、僕の隣に並んで空を見上げた。 二人が一緒になってから、もう二年が経った。 茜はと言えば、水泳の才能を買われて学園から、本州の大学に進学した。 「良和、今日は何が食べたい?」 微笑みながら透子は言う。 その笑顔の裏には何もない子どものような綺麗な瞳で、俺はつい微笑んでしまう。 俺はその透子の顔を見つめ、吸い込まれるようにキスをした。 もう空は朱色の似合う季節になって、僕と透子をその夕陽が照らし出す。 「うん・・・今日は和風のモノがいいな。肉じゃがなんてどうだろう?」 「わかったわ。それじゃ、帰りには、じゃがいも買って帰らないと。」 頬に手を添えながら透子は言う。 その仕草はずっと変わらず、あの夏の日そのまま。 「透子の料理、楽しみにしてるよ。」 僕も笑顔を浮かべて、そう言った。 季節はもう冬で。 もうすぐクリスマスという12月に入ったところだ。 僕と透子は、学園祭に参加せず、二人だけで過ごした。 最も、僕らはゼミが少しあって、その結果を纏めたりしていて、遊ぶ暇さえ なかったのだから。 「良和、お前はこの後、専攻をどうするんだ?父さんとしては、内科でこの街の病院を継いで欲しいのだが・・・。」 少し前に父親、母親、僕で食事に行った日の事を思い出す。 「あぁ、その話か。僕は、内科、外科どちらでもかまいません。それに、貴方たち夫婦は、僕を病院の跡取りにするために 養子にしたんでしょう?なら、僕がなるしかないでしょうから。一向にかまいません。」 その言葉を聞いて父親は安心したのか、 「そ・・・そうか。それなら、問題ない。さ、母さんも料理を頂くとしようか。今日は久しぶりに家族で団欒なのだから。」 なんとなく僕の言葉に安心した父親は、急かすように母親に料理を勧めた。 僕は、それを見て、言いようのない気持ちになりながらも、二人に、透子とのことを聞かれないので 安心していた。 「良和?どうしたの?」 八百屋で野菜を買ってきた透子が言う。 「いや、何もないよ。少し考え事していただけ。」 微笑みを浮かべながら言う。 透子は、そんな僕に、微笑み返して、家路についた。 「そういえば、この前の食事は何だったの?」 唐突に透子が聞いてきた。 僕はありのままを話した。 このまま、大学を卒業したら、父親の病院に研修医として入り、そのまま医師として病院にいつづけること。 そして・・・・、いつか透子と一緒になりたい、ということ。 最後は照れながらだったけれど、透子は喜んでくれて、僕もその笑顔に救われた気持ちになった。 「やぁ、相変わらず仲がいいんだね。」 僕らが駅の前を通ると、僕が嫌いな男の声が聞こえた。 「あぁ・・・。若林先生。お久しぶりです。」 よくもできるものだ、と自分で嘲笑いながら愛想笑いの混じった挨拶をする。 「良和くんも久しぶり。透子くんも・・・久しぶりだね。」 その声に透子は反応した。それは僕も驚くくらいに、笑顔で、 「えぇ、お久しぶりですね。」 と言った。 「今日は二人で夕飯かい?良和くん。」 不気味な、そして能面のような顔で若林先生は俺に言う。 ・・・・どうやら、透子のリアクションが意外だったらしい。 「えぇ。最近はずっとですよ。透子の料理はおいしいから。それでは、僕らはここで失礼します。」 そう言って、僕は透子を促した。透子も、うん、とだけ頷いて僕と立ち去ろうとした。 「そうそう。僕はずっと待ってるよ。透子くん!」 その声は虚しく宙を舞った。 けれど、その舞った言葉の破片は僕の背中を突き刺していた・・・。 そこからは無言だった。 あれ以来、僕はカウンセリングを受けていないし、透子も受けに行くようには言わない。 かと言って、父親に「若林先生をクビにしてくれ」などと言えるはずもなく、まだ、彼はこの村にいる。 蛇のように、その機会をうかがうように。 あの能面のような顔の下に、その表情を隠して。 「それにしても、今日は寒いわね・・・。」 風に吹かれた透子が不意に言った。 「ん?そうだね。風邪には注意しないと。」 僕は的外れな答えになりながらも返す。 そう答えなければ、空気がもたないような気がするから。 ―――不意に、透子が ―――僕に後ろから抱きついた。 「どうしたんだよ?透子。」 何も答えない。 僕はもう一度だけ、 「どうしたの?」 と聞いた。 少しの沈黙のあと、透子がか細い声で、僕に言った。 「私には・・・・良和しか見えていないから。」 そう告げて、透子は顔を背中に埋めてきた。 「あぁ・・・。僕も透子しか・・・・見えないから。」 肩口にあたる透子の髪を撫でながら、告げた。 そのまま、僕たちは少し寄り添って、部屋に一緒に帰った。 そう、二人を引き裂ける者なんてない。 静かな蒼い空に、そう、僕は無言で語りかけた。 END
あとがき
久々、水夏のSS。 しかも3章(笑 まぁ、わからない人は読まなくていいです(笑 あの良さとか、空気とかって理解できる人も稀なので(’’ 今回は、なぜか帰宅の道。 少し踏み出した感じにはなったかな?とは思いますね。 そして、今回のはクリスマス前になります。 前回、というか、去年のクリスマスSSとは全くの別物ですので。 あれは自分の中のサーカスのSSでは一番、好きなんですけど、なかなか越えられませんね。 あー。でも、少し嫌なこと思い出しそうなので、ここまで(笑 では、別の話で。 了
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