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marry christmas Ms&Mr...
著:TAMAKI
「じゃ、いってくる。」 僕は、さも、近所に煙草を買いに行くような気軽さで茜に伝えた。 「うん。あ、あと、明日から、二宮さんのところに行くの、お兄ちゃんに言ってたよね?」 ドアを隔てて茜の声が鼓膜に響く。 それに向かって、 「あぁ。えっと、確か・・・年末も二宮さんのところだって言ってたな。 くれぐれも邪魔にならないようにな。」 やんわりと言う。 「わかったよ。お兄ちゃんこそ、透子お姉ちゃんとゆっくりね。」 靴紐を結ぶ僕の背中に茜の声が届いた。 あの日以来、茜は少しずつ、確実に僕と距離を取るようになった。 それでも、茜は茜なりに考えてくれたのだろう。 僕が、透子と会いやすくするために。 事実もわかっている。 すべて・・・透子の望むままになったことを・・・。 僕は、カウンセリングをやめた日から、週末は透子の部屋で過ごすようになった。 というよりも、週の半分になるくらいの時間を透子と過ごしていた。 言ってしまえば、半同棲である。 大学も同じ講義だし、何よりも、透子がそれを望んだ。 僕も、それは望んだことだし・・・、今まで以上に、透子を求めるようにもなった。 それは、茜にもわかっていたのだろう。 ――――不意に頭をよぎる言葉。 なぁ、透子はそれでよかったんだよな・・・? それを、望んだんだよな・・・? 最近、特に思う。 夏の頃よりも、僕の中の透子の占有率は大きくなっていた。 多分、あの深い青い空を見上げながら考えていたことが大きいのだろう。 僕は「愛」というものに飢えていた。 それは、僕に母親がいないことが起因しているのだろう。 でも、透子の「愛」はそういうものとは違う。 男女としての「愛」だ。 周りから見れば滑稽かもしれない。 僕は透子に踊らされているのだから。 でも、それでもいいと思う、それを望んだ。 不完全なカタチをしているのかもしれないが、僕はそれで満足だから。 なぜなら、一番僕が・・・不完全なものだとわかっているのだから。 「よし。」 ブーツの紐を結び終え、透子の部屋に向かう。 僕の家から、透子の部屋までは歩いて、ほんの10分を少し越えるくらい。 とは言っても、もう12月の末になっている24日だ。 コートを着ないと寒いと思うくらい風が吹いていた。 常磐村は日本の中でそこまで北というわけでもないが、やはり冬は寒い。 ポケットに手を突っ込み、僕は透子の部屋に向かった。 途中、いつもは気にもしない建物の形や、仕事を終えて帰る人を眺めた。 そういえば・・・僕に、餞別の言葉として、「僕はキミのことが嫌い」と 言った人はどうなったのだろう。 もしも、透子の賭けが外れていたら、彼が一番、得をしたのだろう。 しかし、勝者は透子と僕だ。 僕らの破滅を望んだ人も、今日は誰かと過ごし、一日を終えるのだろう。 ふと思う。 茜は・・・茜は本当はどう思っているのだろうか? ―――コンコン。 僕は透子の部屋についた。 「はい。」 中から、少し遠慮がちなような、それでも、上品な声が聞こえる。 「あぁ、良和だけど・・・。」 それを聞いた瞬間、がちゃりという音とともに透子が現れた。 細い肩、女性にしては少し背の高い、言うなればモデルのような透子が 僕の目の前にいる。 「あ、入って、良和。」 透子が部屋の中に促す。 僕も、玄関でブーツを脱いで、透子の部屋に入っていった。 中に入れば、透子が「そっちでくつろいでいて」 と言ったので、その言葉に頷き、テーブルの前に座って本を読んでいた。 透子はと言うと、台所で、料理を作っていた。 いつものように、昼間、 「良和は、今日は何が食べたい?」 と聞く。 もう、麻痺してきているのかもしれないが、僕は、 「うん、透子と二人でのクリスマスなんだから、パーティーっぽいものでいいよ。 あと、あまり多いと食べられないだろうから、そんなに作らないでいいし・・・。」 「わかったわ。それじゃ、待ってるから。」 そんなやりとりがずっとだ。 僕はといえば、透子の主体性のなさにも慣れた。 僕も、養父の敷いたレールから外れることなど出来ないので、二人とも主体性のない 人間なんだと思う。 それでも、そんな僕を、透子は「愛している」と言う。 わからない・・・。 でも、僕も透子を愛しているのは事実。 今、目の前で透子がいなくなってしまったら、発狂して、狂人と化するのだろう。 それくらい、「二人でいる」ということは当たり前に、かつ、重要になってしまった。 でも、そんな囚われたような生活を心地いいと思う僕がいる。 「はい。良和。」 透子が夕食を作ってしまったようだ。 テーブルには、「いかにもパーティー」な料理が沢山あった。 その向こうには透子の顔。 その二重の瞳は僕を見ていた。 そして、僕は本を置いて、 「じゃ、食べようか。」 そう言って、ローストチキンに手をつけた。 「うまい!」 素直な感想。 「よかった。良和に言われるとほっとするから。」 そう言って、透子も料理に手を付け始める。 こういうスタンスにも、僕は慣れた。 時間を見れば、透子の部屋について3時間が過ぎていた。 いつもとは違うことに、今日は、透子が、僕に話しかける回数が多い。 「良和はどう?」と、よく聞かれるけれど、それでも話題を透子が 振ってくる、というのは珍しく、僕にはそれが新鮮で、話し込んでしまった。 話題とは言っても、まだ、二人が子供だった頃、まだ、付き合い始める前の話だ。 あの時は、まさかこうなるとは思いもよらなかったし、透子は、僕が さりげなく話題を変えようとしても、なぜか出会った日のことを、ずっと 話したがった。 理由はわからなかったけれど、僕もそれを望んだ気がする。 「実はあの時、自分から行動したのって透子が始めてだったんだ。」 そう僕が言うと、透子は嬉しがった。 「・・・そう、茜ちゃんがいつもあぁだったから、私・・・。」 そう、言った、透子は少し気弱そうに見えた。 僕は、その細い、透子の肩を抱き寄せた。 「良和?」 耳元で、透子の声が聞こえる。 それでも、僕は透子を抱き締めた。 「良和・・・?」 困惑したように言う透子だが、それでも、僕を抱いてくれた。 そこで、僕は、腕と体を一旦離し、ポケットから、あるものを 取り出した。 ―――透子、大学、卒業したら、結婚しよう。 そう、ポケットから指輪を出して言った。 「・・・良和・・・、いいの?私で・・・?」 今まで見たことのない、不安そうな透子の顔。 いつもよりも、小さく見えた体は、ひどく不安で、もう一度、僕は透子の 体を抱き締めた。 「いいんだ。透子じゃなきゃ、ダメだから。」 そう、耳元で言って、透子と目線を合わせた。 「・・・嬉しい・・・。」 そう、言った、透子の瞳から、一雫の涙が流れた・・・。 二人以外、誰もいない部屋の中、愛を確かめ合うように、抱き合っていた。 END
あとがき
こんばんは。 あえて、誰も好きとは言わない、水夏3章を題材にしました。 基本的に「暗いから嫌い」という方が多いですね。 まぁ、そういう方にはひどく不快でしょう。 でも、僕はこういうのが好きです。 理解できない、と言われそうですが、事実そうだし、書きたいものを 書く、それがオンラインのTAMAKIというモノだからです。 媚びないって姿勢でサーカスのものは書いています。 それは、妥協したくないし、何よりも「自分が納得できるものを書く為ですから。 そして、タイトルのmarryはスペルミスではありません。 あえて、間違えているものを使いました。 造語になっちゃうかもしれませんが、あくまでも、二人の関係のイメージ優先です。 水夏は、「死」と「鏡」がコンセプトにあるとすれば、 3章は「鏡」という面の強さが、「死」というテーマを強めているように思います。 だから、好きですね。こういう話は。 了
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