morning whisper
著:TAMAKI
 真っ白な朝。

 真っ白いシーツの中に二人の男女が寝ている。

 男のほうは眠っていて、女のほうは、たった今、目覚めたところ。

 二人の頬を柔らかな朝の風が撫でる。











 ───それは、二人を包み込んでいるように・・・。










 「兄さ〜〜ん、兄さ〜ん」

 兄さんの体を揺らす。

 でも、起きない。

 夕べは、あんなに愛し合ったんだから、仕方ないか・・・。

 そうやって、ベッドから出る。

 隣には兄さんが寝ていて、今も穏やかに眠っている。










 私は、兄さんのことを愛している。

 もう、毎日その顔を見れるのが嬉しくて、

 目覚めるのが待ち遠しい。










 ベッドの端に座る。

 窓を開ければ、もう蝉が鳴いている。

 季節はもう夏。

 この朝の少しひんやりとした雰囲気が好きで、目を閉じる。








 ───チリン








 首の鈴を鳴らす。

 兄さんにもらったもの。

 これがなかったら、二人は結ばれなかっただろう。

 愛しいと思った人と。

 隣を見れば、そんなこと考えているのがわかったのか、少し困った顔をしてる。

 多分、照れているんだろうっていう顔。

 その顔が愛しくて、頬にキスをした。










 でも、兄さんは起きない。

 今日はもう夏休みで、早起きする必要もない。

 だから、毎朝のような喧騒もないし、朝を満喫できる。

 まぁ、兄さんのことだから、「寝るのがいい」なんて言いそうだけれど。

 そういうのは照れているからで、私が腕にしがみついたりすると、「かったりぃ」って

 言って、隣にいて、私に合わせてくれる。

 それがたまらなく嬉しい。

 このままずっと、時間が止まればいいのに、と思う。

 でも、それ以上に、兄さんとの「これから」があるから、それを欲しいと願う。






 矛盾しているけれど、それが、今の私の心。






 私が起きてから、もう30分以上経った。

 まだ、兄さんは起きない。

 私は、兄さんの机の上のものを手に取った。

 ───それは砂時計で、造りは木製で、中身は真っ白な砂。

 反対向けると、さらさらという音を立てて、砂が流れ始めた。

 これは、兄さんに私がもらったものだけれど、毎朝、兄さんの部屋で寝ているから、

 こちらの部屋に持ってきた。

 毎朝、この砂時計の砂が流れるのを見てから、兄さんを起こす。

 この時計は約束。

 『二人でずっと一緒にいよう』

 と言って兄さんが私にくれたもの。

 だから、ものすごく大切なもの。

 もらった日は抱きながら、眠りたいって思ったくらいのものだ。









 下の居間の時計が鳴る音が聞こえる。

 それでも、兄さんの寝息がいとおしくて、側にいて、瞳を閉じる。

 あの日のこと。

 私を迎えに来てくれた日。

 そして、『おはよう』と迎えてくれた、あの空が蒼かった日を。

 ───そして、初めて、肌を重ねた日のことを・・・。

 ふと想う。

 兄さんは、小さい頃から、私の側にずっといて、守ってくれた。

 だから、たぶん、これからもずっと。










 蝉の声が響く。

 部屋には、朝日が射してきて兄さんの顔を照らしている。

 穏やかな寝顔と寝息。









 朝御飯を作ろうと、台所に向かう。

 今朝はコーヒー、ハムエッグとトースト。

 夏休みは兄さんと一緒にご飯が食べられるから嬉しい。

 そうやって、熱したフライパンに卵を4つ、落とす。

 じゅう、という音が、台所に響く。

 しばらくして、朝食が出来上がった。










 兄さんを起こしにいく。

 まだ、兄さんは眠っていて、開けた窓はカーテンが揺れている。

 その中で眠る兄さんは、とても、白くて、抱きしめたくなった。

 私は、兄さんの側に行って、肩を揺らす。

 それでも、起きない。











 何度か続けているけれど、兄さんは起きてくれない。











 ふぅっと息をする。





 カッターシャツ越しに私の胸が上下する。





 そして





 兄さんの唇に、私の唇を重ねた。






 
 「え?!」

 いきなり、口で息が出来なくなった兄さんが目を開ける。

 それでも、キスをやめない。

 しかし、兄さんは状況を把握したのか、私の体を抱き寄せた。

 私も兄さんに体を預けて、お互いを求めるようにキスをした。 
  





  そうやって、唇を離した。




 
  私は笑顔で言う。





  あの日、兄さんが私に言ったように・・・。









  『おはよう』








   ───と。










  さらさらと砂時計は砂を流し、

  二人の時を告げていた・・・。
END
あとがき
 TAMAKIです。
 多分、読んでくれるかわからないですが、音夢のSS。
 静謐な夏の朝、というのがコンセプトだったりします。
 では、また、どこかで。