花煙
著:TAMAKI
   「・・・・」

   ただ、静かに手を合わせる。
   桜の木の下に眠る、俺が好きだった、あの日の君へ。
   今日の桜も綺麗だ、なんて思いながら。




   舞い散るのは、桜。







 この2年、どれだけの月を見ただろう。
 欠けた月、満ちた月。半分に欠けた月。
 それを見た君は、「人の心みたいだね。」
 なんて笑って言ったっけ・・・。







 ぽつり、ぽつりと雨が頬に当たる。
 今も、俺は手を合わせたまま。
 そして思い出すのは、君と過ごした、あの日々。
 今は、この墓地には誰も居ない。
 



 「ねぇ、見て。やっぱり、この儚さが綺麗なんだよね。」
 君は浴衣で、俺の隣で言ったね。
 俺は、そのわざとらしいけれど、それでもそれを受け入れる君が好きだったのだけれど。
 




 「・・・・くっ・・・・。」

 今でも、街を歩くと、君に逢えそうな気がするんだ。
 そんなこと出来ないってわかっているのに。
 判っているのに、判っているのに、君といつも待ち合わせをしていた場所で
 立ち止まってしまうんだ。
 




 頬に涙が流れる。
 雨と混ざるけれど、瞳から、君を想って流す涙。
 




 君が空に旅立ったあの日。
 俺は何も言葉を発せずに、ずっと・・・そう、ずっと、空を見ていた。
 あの雲に覆われた、グレイの空を。
 そして、君の骨が土に埋まる時、同席させてもらい、君への想いも一緒に埋めていたんだ。
 あの日も、桜の舞い散る日だった。
 「俺は大丈夫ですから。」
 君の両親に「大丈夫?」と何度も言われ、俺が応えた言葉。
 あの日、多分、俺は壊れた機械のように、同じ言葉だけ発していたのかもしれない。
 








   でも、桜を見ると君を思い出すんだ。







 二人で見たあの花煙を。
 花煙の向こうで、微笑む君を。
















   雨が降る。
 
   桜よ、散れ、と言わんばかりに。






















 「・・・・。」

 俺はまだ、桜の木の下で、君の眠る墓石を見つめている。
 見上げると、そこに欠けた月。
 もしかすると俺の心なのかもしれない。
 君を失って、大きく欠けた俺の心と同じ・・・。
 











   「ど・・・う・・・して?」
   呟いた想いは、本音。
   それでも、裏腹に現実は知っている。
   あの日、俺が君を泊めていたら。
   そうすれば、君は・・・・。














  噛み締めた唇から、壊れたように、言葉があふれ出す。

  










  君を抱いた、あの感触を、胸を掻き毟るように思い出しながら。














  「お願いだから、戻ってきてくれないか。許されるなら、本当に、君と・・・」














  現実に戻ることはないのを知っている。
  けれど、血が滲むほどにまで、叫ぶ。
  胸を引っ掻き、引っ掻いて、あの日の君に逢えないのか、と。
  












  ――――傍に居て、と。


















   桜よ、どうか、俺の願いを・・・・。
END
  あとがき。

  衝動です。
  後悔しつづけるというのも本当は何処かにはあって、この主人公の人は
  彼女を泊めていたら、彼女はあの事故に巻き込まれて、死なずに済んだ、と
  ずっと自分を責め続けています。
  なんて設定とか考えたら、筆が進みました。
  んー。ダウナーなお話ですね。
  もっとポジティヴなの書けるように頑張りますね。
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