Whiskey
著:TAMAKI
 「終わったな。組織も。」

 持っていた煙草と報告用の紙切れを見ながら俺は呟いた。

 あの「レギーナ」という名だけがわかっていた組織は、俺の捜査の終わりと同時に炎の中に消えた。

 加えて言えば、あそこに居た連中全員が死んだことになる。

 「長かったもんだ。」

 ふと、思い出すのは同じ職場から潜入捜査に向かった者たち。

 マーガス、ヘフナー、ハインツ・・・・。

 俺の前には5人の捜査官が潜入したらしい。

 しかし、帰ってきたのは俺だけ。

 しかも、俺がそこに潜入したときには、マーガスの奴はクスリでジャンキーにされていて、組織の

 資金源の一つである人身売買の調教の道具に成り下がっていた。









  ―――古い話だな。







  俺のオフィスは一人しかおらず、そこには乱雑に資料が置かれているだけ。

 まぁ、国の諜報機関とは言っても、実際はそう警察の連中とは同じというわけでもない。

 さっき思い出した名前も同業者だから覚えていたようなもので、そこまで仲のよかったような奴もいない。

 「長かったんだな。ここを空けていた時間も。」

 オフィスの中にあった新聞は3年前の新聞。

 それにテーブルには最早必要ではない資料。

 「そうか。もうこれもいらんか。」

 『REGINA』という名前の組織はもうない。

 あえて言うなら、その領主と呼ばれた女の死体の確認も俺がした。

 続けて資料を捨てていくと、途中で手紙らしきものが出てきた。

 ・・・・差出人は、「ジョシュア・マイヤー」と言う名前。











 ―――俺の両親のことを知っていたのか?











 ―――この世界でマイヤー夫妻を知らない奴はモグリだぜ。










 あの時を思い出す。

 いつも俺を監視していたヴァネッサの視線が感じないので、屋敷の玄関に行くとカオルコとともに既に

 殺されたあとだった。

 俺は直感・・・まぁ、長年の勘ってやつだろう。やったのはレギーナであると瞬時に判断した。

 おそらくこれがチャンスだろうと、機関に連絡をし、そのまま俺はあの連れてこられた・・・、そう

 マイヤーの息子を見つけたのだ。

 手紙は、こう始まっている。

 『私が信頼する捜査員のカインへ。』

 ―――あぁ、そうか。俺はあの男に最後に会ったときの名前はカインだった。

 裏切りの名前。

 俺はカーンになる前から、潜入捜査をしていた。

 仕事の過程で、マイヤー夫妻と知り合い、俺は彼等と協力することも多かった。

 あの夫婦は、独り者の俺がいうのもなんだが、理想的な夫婦だった。

 そして、あの半年前、レギーナに連れてこられた男の顔を見て驚いたのだ。

 紛れもなく、あれはマイヤー夫妻の長男で、あの目つきは間違えるはずもない。

 しかし、レギーナの近くだ。迂闊に声もかけられないし、洗脳されているであろう、あの男に声をかけるのは

 俺にはできなかった。





















 雨の中、片付けを済ませた俺は、潜入する前からの行き着けの店に向かった。

 幸いその店は数年経った今も変わりなく、あの頃と変わらないままで営業されていた。

 店に入って、カウンターの端に座る。

 俺のよく座っていたところだ。

 「ロックで。」

 それだけ言うと、マスターは「かしこまりました。」とだけ言ってすぐにロックを俺に出してきた。

 ―――お久しぶりですね。という言葉とともに。

 俺は、それを「ふん。」と笑って受け取る。

 「マイヤー、お前の頼みはなんとかこなしたぞ。」

 手紙をジャケットのポケットから出す。

 ―――おそらくクリスのことだ。『レギーナ』という言葉を追うだろう。そして、辿り着く。

 ―――その時にクリス一人では何もできないだろう。カイン、お前に頼みがある。クリスを助けてやってくれ。

 という内容。

 「まったく。お前じゃなかったら、思い切り金取るんだがな。こんな無茶言いやがって。」

 ロックを煽りながら、過去を想う。

 カウンターに座っていた金髪の男が店を出て行った。












 「―――カーン、いつからだ?この仕事は。」

 クリスとリタを車を運転していた俺に、投げかけられた質問。

 「あぁ、お前さんの親父が探偵始めた頃か。」

 「親父が?」

 珍しくクリスは食いついてきた。

 屋敷で思ったことなんだが、クリスという人間は、やはり探偵気質で、それに関係しないと直感したもの以外は

 話題として食いついてこない。

 食いついたとしても、そのフリをしているだけだった。

 「そうだ。俺の最初の潜入捜査の仕事中にな。まぁ・・・あれだ。一回目はお前さんの親父に命を救われたようなモンさ。」

 そう言って俺は前を見据えた。

 それ以外に、あの車の中で交わされた会話は覚えていない。














 「思い出に耽っていますね。その癖が変わらなくて少し安心しました。」

 マスターはカウンターに人がいないので、俺に話しかけてきた。

 「ふん。簡単に癖なんて変わるもんじゃない。マスター、少し老けただろ?」

 「おや、手厳しい。」

 とマスターはいつもの強面気味な顔を少しだけ崩して、笑った。

 「そうそう。先ほどのお客様からです。」

 そう言って、空になったグラスの代わりに、同じものが出されてきた。

 「それと、伝言で、『飲みすぎるなよ。』だそうです。」

 マスターがそう言って、「お知り合いですか?」と聞いてきた。

 俺は、

 「あぁ、同業者みたいなモンだ。」

 とだけ答え、琥珀色の液体を見つめた。












  ―――お前さんこそ、リタを大事にしろ。













 そう皮肉を言って、ロックを喉に流し込んだ。
END
あとがき
 カーンです。なんでかカーンです。BGMはSmorky Quartz推奨で(笑
 んー。少しカッコイイ話を書きたかったんですよ。
 あと、こういう生活かなぁと。
 吉澤さんに質問したんですけど、こういうお話になりました。(ぉ
 あぁ、もうすぐジョンブラのアニメだ。金も用意しないといけないなぁ。
 では、別のお話で。