UTOPIA
著:TAMAKI
 「先輩!遅いですよ?!」

 瀬尾はコンビニの前に立っていた。

 今日はアタシが遅刻してしまった。

 「まぁ、いつも瀬尾が遅れて来てるんだし、まぁ、いいじゃないか?」

 と、返すと、

 「今日の話です!」

 なんていい返してきた。

 遠野なんかに言わせれば、コイツは小狐だが、ふと、思えば、コイツなら、

 将来、女狐になる可能性もあるかもな・・・。

 「いや・・・それはないか・・・。」

 想像するだけで、笑えてくる。

 「・・・あの?先輩?」

 「頼む、瀬尾、今、顔を近づけないでくれ。」

 瀬尾は、不思議そうな顔をしたり、ハッとして近くのガラスに顔を映して確認したり。

 ・・・つくづく面白い奴だよ。アンタは。





  今日は、瀬尾と約束していたので、随分早く来てしまった。

 昨日と同じ場所なのだが、えてして、今日は寒い。

 待っている人も昨日はロンTだけだった人が、今日はトレーナーを着ていたり、

 と言った風に寒い。

 「でも、先輩、今日は中は暑いんですよね?」

 瀬尾は心配そうに言う。

 ちなみにアタシも瀬尾も、下にTシャツを着ていて、上はスウェットである。

 アタシは普通のトレーナー。瀬尾はパーカー。

 いつものパターンとは逆だな・・・。と考えてしまう。

 そうこうしていれば、昨日とは違って定時に呼び出しが始まった。






  今日は500番代。

 昨日の経験から言って、左側に行くのは得策ではないと判断したアタシは

 瀬尾を連れて、右側の前に向かった。

 しかも、昨日よりも前の2層目。

 「先輩、私こういう前って始めてかもしれないです。」
 
 瀬尾は嬉しそうにいう。

 アタシは

 「昨日もこれくらいにいたが・・・?」

 と白々しく言ってやった。

 そんな他愛ない話をしながらも時間は過ぎる。

 そして、それは思い出になるんだろうな、と考えてしまう。

 「柄でもない・・・か・・・。」

 暗転していくステージに合わせて、そう呟いた。





 
 昨日と同じ始まり方。

 そして一発目にきたのは、INTO EVERYTHING。

 ミディアムテンポのヘヴィな空間が広がる。

 KENは挑発的に、INORANはハードにギターをかき鳴らす。

 インターバルに合わせて、パブロが跳び、HIKOが煽る。

 そして、すごいのはドラム。

 前回よりもパワフルになっている。

 これは、ベースと合っているのだろう。

 瀬尾はもうステージに夢中だ。

 アタシもリズムに合わせて体を揺らす。

 

 GET OUT!GET OUT!GET OUT!GET DOWN!

 


 KENのシャウトで流れ込むように、

 SOMEDAYのアルペジオに。

 合わせてジャンプする。

 そして、KENはアグレッシヴにステージを狭しと歌う。

 今日は、さらに調子がいいようだ。

 勢いがそのまま、次に流れ込む。

 HED FUCだ。

 この曲は昨日の聞き覚えでノったけれど、すごくノりやすい。

 ハイテンポに、他のメンバーのコーラスが楽しい。

 今日の、インパクトはこれかと、思う。

 あくまでも、動きのあるKENとは対称に静かに激しくギターをかき鳴らすINORAN。

 この対称さがいいんだろうな。

 と考える。

 そんな思考を吹き飛ばすように、爆音が投下され続ける。

 「新曲!」

 そう始まったのはHERE WE GO。

 ノりがポップだが、ミディアムっぽい面もあって、楽しい。

 アタシも瀬尾も踊るようにノる。

 瀬尾はもう声をかけても無駄ってくらいに前に夢中だ。

 アタシは前を向くと、HIKOがこちらを煽っていた。

  疾走感の後に来たのは、昨日も物凄いプレイだった、GARDEN。

 この曲は、CDで聴けばハードさがメインだが、ライヴで見ると、ハードさに

 破壊的なまでの歌い方があって、まるで、KENが魔王のように見える。

 しかし、本当にハードなのはINORANだ。

 彼のギターがすごい。

 かき鳴らすという言葉だが、ギターを掻き毟っていると思わせるくらいのハードさ。

 その破壊的な中のKENは本当に恐ろしいくらいの気迫で歌う。

 前回のツアーよりもグルーヴがすごいな・・・。と昨日以上に感じてしまう。

 襲い掛かるようなバンドのサウンドに気圧されそうになる。

 音圧も物凄い。

  そしてそのまま、BREATHING WATERに。

 ふと、思ったのは瀬尾はあまりこの曲は得意ではないということに。

 しかし、隣を見れば、笑顔で瀬尾がいる。

 「なんだ。平気じゃないか。」
 
 アタシも前を向く。

 このハードさは他にはない。

 

 KEEP BEATHING・・・


 ハイトーンで聴かせ、そのまま、シャウトになる。

 これが凄い。

 ただ、凄い。こんな歌い方できるアーティストなんてほかにいない。

 これがカッコイイんだなぁ、と思う。

 ミディアムテンポにシャウトはこんなに合うのだと考える。
 
  そして、少しインターバル。

 いきなり鳴り始めたのはターンテーブル。

 聞き覚えのあるギターはCHEMICAL IN MEだ。

 これはふと思えば、初めてライヴで聴く。

 しかも、原曲はそんなターンテーブルの音がないのだが、今日は

 なによりターンテーブルのスクラッチが曲の出来をよくしている。

 それが、昨日のSNOWの代わりだと思っていたら、

 始まったのは3×3。

 オーディエンスの温度は5度は上昇しただろう、と思うくらい物凄いアクション。

 昨日は1曲目だからそうは思わなかったが、すごくハードなアレンジに。

 KENは右に左に煽りながら歌い、INORANは初めて右に来た。

 パブロはジャンプするし、HIKOはアグレッシヴにベースをかき鳴らす。

 かき鳴らすが、その音は一つ一つが銃弾のよう。

 フロアはタテノリの嵐になる。

 ダイヴの凄い。

 ステージに向かってどんどん人が流れる。

 いきなりMC。

 「昨日もよかったんだけど、今日は、もっとよくしようぜ!」

 それに合わせて始まった新曲。

 昨日も聴いたけれど、ハードすぎるくらにハード。

 それでも、このハイテンポさがいいみたいで、瀬尾はリズムに身体を預けている。

 そのまま、さらに新曲。

 そして、LEMONTUNEに。

 昨日よりも演奏がいいような気がする。

 メンバーはフリーに動き回っているし、このノリとグルーヴが心地いい。

  ノンストップにUTOPIAに。

 アタシが今まで聴いたUTOPIAの中で、ベストな出来だと思う。

 オーディエンスの一体感がすごく気持ちいい。

 これがライヴだ!と言わんばかりのノリだ。

 「カモン!LET’S JUMP!」

 KENの声に合わせてフロアは怒涛のタテノリに。

 モッシュもすごい。

 こんな面白いのは久々だ。

 もう誰も周りなんか気にしない。

 アタシも瀬尾のことを忘れてしまうくらいのノリ方をする。

 
 UTOPIA!UTOPIA!


 もしかしたら、アタシにとってはここがそうなのかもしれない。

 そしてギターソロにはモッシュに飛び込んで一緒になってモッシュをする。

 煽りもすごい。

 このままこの時間が続けば、と思う。

  そして、ラストと思ったら新曲。

 笑ったのはKENの瓶底メガネ。

 ときどきおどけているのだが、曲がハードなので丁度いいくらいだ。

 瀬尾も笑っている。

 アタシも見た瞬間、噴き出したが、それでも、身体を揺らすのはやめられない。

 フロアもジャンプ、モッシュ、ダイヴ、だけになる。

 楽しいライヴだと心底思う。

  そう思っていれば、聴きなれているTASTE MAXIMUM。

 昨日は、まだ、明日があるだろうと、温存されていたのだろう。

 今日は凄い。

 メンバーのアクセルがフルスロットルになったようだ。

 さらにダイヴやモッシュが加速する。

 もう止まることなんてないような勢い。

 KENはもう止まらない勢いでステージを動き回り、INORANまでも、アグレッシヴに。

 ダイヴもさらに加速。

 アタシも、周りも、物凄い。

 熱も凄い。

 それにモッシュに参加する人数も増えてきている。

 一体感がすごい。

 元は、ハードなのだが、更にハード。

 ラストにはKENがドラムセットに乗って破壊するまで、

 ずっとハイテンションな空間は続いた。

 






  「ふぅ」

 アタシたちは、外に出た。

 ドリンクは二人とも、軽めのリキュール。

 「瀬尾、どうだった?」

 瀬尾は心の底から楽しそうに言う。

 「UTOPIAがよかったです!」

 アタシもそれに笑顔で言う。

 「そうだな。今日も最高にCOOLだったな。」

 「そうですね。」

 そう言って、アタシたちは、リキュールの瓶で乾杯をした。




  チンッと軽い音が、夜の闇に響き渡った。
END
あとがき
 お疲れ様です。
 自分に当てた一言。
 この2DAYSのあとは身体が痛かったです。
 本当に。
 でも、楽しかったですね。
 あぁ、FAKE?のファンサイト作りたいなぁ・・・。
 では、この辺で。