日溜まり、木漏れ日の下で。
著:TAMAKI
 声が聞こえる。

 「やぁ、レン、ここにいたのかい?」

 そして志貴は私の頭を撫でる。私はこうされるのが好き。






 




 ───だって、











 人のぬくもりが感じられるから









 そして、私は、コクリ、と頷く。

 私はこの屋敷の中庭のベンチの下にちょこんと座っている。猫の姿でいるときは

 ここで、眠る。

 この温かい日溜まりの下。身を丸くして、熱を感じながら、眠る。

 志貴が、私に微笑む。別に、契約したから、というわけではないけれど、志貴の笑顔は好き。

 心の中の、寂しさで冷えきったところまで、温かくなるから。















 「来るかい?」

 志貴はベンチに座って、私に聞く。

 そう、志貴の膝に乗せてくれる。そして、そのまま、昼寝をする。

 何度か、志貴の寝顔は見たけれど、本当に死んでいるかと思うくらい穏やかに静かに眠る。

 一度、そんな志貴が、心配で、人間の姿になって揺らしたこともあった。

 そのときも、あの笑顔で、「ありがとう」と言って、微笑んで、頭を撫でてくれた。













 今日も、昼寝に来たのだろう。

 私が気持ちよくて、膝の上で、目を細めているのを見ると、そのまま、志貴は

 眠りに落ちたようだ。

 私も志貴の心地よさそうな寝顔を見て、考える。






 




 ───志貴は、なんで、そんなに他者を大切に想えるの?









  その笑顔の裏に、どんなことを、学んで、経験してきたの?

 










 日差しが心地いい。

 ここから見る、庭の風景は美しい。木漏れ日が光と影のコントラストを作っていて、

 とても、幻想的な雰囲気に見えるから。

 それに、ここにいると、屋敷の中の、喧騒が聞こえてきて、それに困っている

 志貴の顔を想像したりする。

 それを楽しんだりもする。

 










 そうしているうちに、私にも、睡魔が襲ってきた。

 実際、私は、夢魔だが、眠気というものは私の中にも存在する。

 











 そういえば、志貴の夢で、志貴と最後に話したのもここだった・・・。



 と思い出した途端、眠りの中に落ちた。








  













 ────それは、あの日の夢。

 私を創った魔術師と、あの街で、生活していたころの夢。

 最近は、あまり見ることがなかったのに。








 いつの頃だろう?もう遠い昔で時間なんて忘れてしまった。





 でも、覚えている。





 初めてのぬくもりを感じたとき。





 あの人の膝の上で、沈んでゆく、陽を見ていた時間。





 私の心の中の、宝石箱の中の風景






 でも、彼は、もういない。

 それが、私には辛かった。

 真祖の姫に預けられたときの私は孤独感で一杯で。

 心の中も、雪が降る日のように、寒くて、寂しくなって。

 それ以来、この夢は嫌いだった。

 だから、この夢は、見たくなかったのに。

 志貴の夢を見ていたいのに・・・。














 ───ぽふ、と、私を創った老魔術師が、頭に手を乗せる。

 そして、私の頭を撫でる。
 
 私は、今まで、そんなことをされたことがなかったから、驚く。

 










 でも、それだけ。







 ただ、それだけの思い出。







 それでも、私には、大切なぬくもりの記憶。







 いつもは、ここで、もう、彼は何もしない。

 そして、二人は月が出るまでそのまま。

 その日の月は忘れられない。

 否、忘れたくない。

 あの人と過ごした、私の大切な記憶。

 



 




 いつもは、ここで、終わる夢だった。





 蜃気楼みたいに

 

  
 あの人が消えて




 夕日も、霞んで




 あの月さえも


 

 闇という雲に飲み込まれ




 私は、その中で、



  
 孤独という寒さに




 耐えないといけないと




 感じてしまうから。 
  
 
 
 
  
  




 でも、不意に、声がした。

 しわがれた声。

 彼が、魔術師が、私に語りかける。




 「───レン、お前は今、幸せかい?」


 あまりのことに驚いたが、今の私は幸せだと感じている。

 だから、コクリ、と頷く。



 彼は、それだけ、ただそれだけ聞くと私の頭をもう一度撫でて、



 蜃気楼の中に溶けていった・・・。
















 ───夕日が私の頬を照らしているのに気付いて起きた。

 まだ、志貴は、ベンチに座って眠っている。





 私は人間の姿になり、


  


 志貴の頬に





 キスをした。














 ───そして、スカートの両裾をドレスのように持って






 微笑んで、






 行儀良く礼をした。










 



















  「これからもお願いします。




 私に楽しい夢を見せてくださいね





 ご主人様。」
END
あとがき
 TAMAKIです。
 今回はレンのお話。
 なんだか、とめどもなく終わったんですが最後に礼をするシーンは気に入ってます。
 レンは、その中に、「寂しさ」とか、「孤独」を抱えているキャラという認識があって、そこがネックでした。
 あの微笑み方とか、そこら辺をもっとうまく使いたい、というのが今回の反省点。
 レンは、最近は、結構、お気に入りなキャラですから、可愛く書きたかったんですがいかがでしたか?

 でわ