|
LUNAR ECLIPSE
著:TAMAKI
クスッ。 今、俺は、もの凄い後悔に駆られている。 あぁ、もう、考えることすらできない。 だって、 右を見れば、 そこに 俺の、首から下があるのだから。 今となれば、どうして、あの娘に声をかけてしまったのだろう。 俺は、藤井敦。隣には、俺と同期入社の、木村正樹、もう一人、先輩の柳井孝文さんとで、飲みにきていた。 柳井さんは、、俺たち二人の新入社員を教育してくれる人で、社内でも、いい人で通っている。 それに、彼は、温厚な性格をしており、社員の中でも、仕事に関しては人望が厚い、と、ここまでは、もの凄い人格者に 思える。しかし、彼は、酒が入ると、その「裏の顔」を出す。 その顔は、女に対して、酔うと必ずと言っていいくらい、肉体関係を持つらしい。 よって、彼は、社員とは、あまり飲みには行かない。今日も、彼は、ウーロン茶だけの予定が、俺たちの グチが物凄い量だったからだろう。それに勧めた、というのもあって、彼は飲んでしまった。 俺と、木村は、これが、自分たちにどのような結果を生むかを、 このときはまったく知らなかった。 俺たちは、しがないサラリーマン。これといった、特別な体験なんて、したこともない。 でも、嵐は突然やってくる。 それは、運命というものさえも、からめ取ってゆく。 俺たちは、バーに入って、まず、テーブルを陣取った。 そして、オーダーをする。 まず、俺と木村はビールを、柳井さんはウーロン茶を注文して、適当に食べ物を オーダーした。 そして、柳井さんが「お前ら、グチはないか?」 と聞いてくれたので、俺と木村は、その言葉に、甘え、散々、愚痴をこぼした。 途中、俺たちは、酒の勢いも手伝って、柳井さんのことにも触れた。 その後、柳井さんも、酒をあおり始めた。 それに、俺も含め、この三人、現在、彼女と言える者はいない。実際、柳井さんに 限れば、30歳になっても、結婚していない、というところまで来ている。 そんな、俺たちだ。話もワイ談になる。 「いやぁ、その女はさぁ・・・」 柳井さんは得意げに話していた。実際、彼の女性関係は多岐に渡るもので、 もう、何人目だろう、と思っていたとき、唐突に、柳井さんは、話を止めた。 そして、いきなり、下心丸出しの笑顔をする。 ハッキリ言って、俺のほうを向いてするのだから、物凄く気持ちがよくない。 「柳井さん、もしかして、女に飽きて男ですか?」 と俺も、冗談まじりに言う。 そうすると柳井さんは 「バ〜カ、お前の顔なんかに微笑むか。後ろ見ろよ。」 と、そちらに向かって手を振る。 俺も、そちらに、振り向くと、ツインテールに髪の毛をくくった、だいたい年は16、7に見える 女の子が手を振っていた。 「よし、木村、お前、行け!」 いきなり話を振られた木村は、「は?」と変な声を出す。 それに、柳井さんは 「あの娘をナンパしろっつってんだよ。」 と、半ば怒気の混じった言い方をした。木村も、バカではない。ここで失敗すれば いい笑いもの。酒の肴のような扱いをされるのはわかっていたらしい。 「柳井さん、俺よりも、ルックスのいい敦に行かせましょうよ。そのほうがいいでしょう?」 いきなりこっちに話を振ってきた。 柳井さんも、「確かにそうだな」とこちらに眼を向ける。 「・・・わかりましたよ。」 ふぅ、と深呼吸をし、俺はしぶしぶ、その娘のテーブルに向かう。 その間、その女の子は、こちらを見て微笑んでいる。 ハッキリ言うと、この娘は、童顔だと思う。しかし、ここの、酒の匂いとタバコの煙が この娘を妖艶に見せる。 俺も、ぎこちない笑みになりながら、その娘に話しかけた。 「誰かと待ち合わせ?俺たち、野郎ばっかりで飲んでるんだけど、よかったら 一緒の飲まない?」 その娘は、「ん〜?」とワザと考えるようなフリをして 「いいよ。私、今日は、一人だったから、誰かと飲みたかったの。」 と、妖艶な、その顔のあどけなさと対称な、雌のような笑みを浮かべて答えた。 実際、その彼女が着ている、真紅のキャミソールも、その妖艶さに拍車をかけていた。 そして、俺と、その女の子がテーブルに着くと、柳井さんは即座に話しかける。 「ねぇ、名前は?」 しかも、彼は、もう、彼女の鎖骨のあたり見ている。彼女が 「さつきっていうの」 と無邪気に答えると、木村も、下心丸出しの顔で、 「さつきちゃんは何歳なの?彼氏とかは?」 なんて聞いている。 俺は不快になってきたので、酒を飲むことに入り込んだ。 ビールから、そんなに、酒にも強くないのに、ウィスキーをオーダーして。 だから話など、聞いていない。 「おい!おい!藤井!お前も、さつきちゃんと話せよ。退屈させたら駄目じゃないか?!」 俺を呼ぶ柳井さんの声。 半ばこの人に呆れながら、 「わかりましたよ。でも、どういう話するんですか?」 と、俺が言葉を捜していると、彼女は唐突に、 「ねぇ、場所変えて飲もう?もっと、ゆっくり飲めるところ。」 と言って、微笑んだ。当然、柳井さんは、「にやり」と笑い、木村にいたっては、 「じゃ、じゃぁ、どこに行く?」 なんて今にも聞きそうな顔をしている。 そこを柳井さんは、 「それなら、俺の部屋にしよう。ウチは広いから、少々の人数が暴れても平気だから」 と、さつきの手を取った。 それに、さつきと名乗る少女は、小悪魔のような笑みでついていった。 勘定を済ませ、俺たちは、柳井さんの家に向かった。 途中、酒と食べ物を買い込むため、近くの店に寄った。 柳井さんは、料理の自慢をしたいらしく、かなりの素材を買い込み、 木村は彼女を酔わせるため、大量の酒を買った。 そうやって、俺たちは、柳井さんの家に着いた。 彼の家は、高級マンションで、4ルームもあり、各部屋が8畳以上の大きなものだ。 そして、まず、柳井さんは「料理するから、お前らで、飲んでろ」と言って台所に 向かった。 俺たちは居間で飲むことになった。 木村は木村で、TVを付けて、さつきちゃんに 「まぁ、飲もうよ。食前酒。結構、さつきちゃんってお酒強いの?」 と酒を勧めている。 と、TVから、最近、頻繁に起こっている殺人事件のニュースが流れた。 内容は、みんな同様で、殺されて、更に、失血しているということだった。 木村は、 「怖いねぇ。これ。本当に噂の吸血鬼なのかなぁ?さつきちゃんはどう思う?」 なんて聞いている。本当にデリカシーのないヤツだと見ていると さつきは 「うん。そうだと思うよ。だって、そんな沢山の血を、コウモリなんかが吸えるわけないでしょ?」 と、ピントのズレた答えを返した。 しかし、俺は気になった。 最近、ほぼ毎晩、3人以上の被害者が出ているのに、どうしてこの娘は一人であんな所にいたのだろう、 ───と。 まぁ、木村は、気にしていないので、俺は勝手に酒を飲み始めた。 相変わらず二人は話している。 しばらくして不意にさつきが 「私、柳井さんの所、見てくる。」 と言って席を立った。 「何してんの?」 と、弓塚さつきは、柳井に後ろから声をかけた。 柳井は 「あぁ、さつきちゃんの為に、料理を作ってるんだ。」 と言いながら、魚をおろしている。 不意に柳井は後ろから、抱きしめられる感覚に襲われた。 見ると、さつきが、柳井の背中に頬を当てていた。 柳井はにやけながら 「さつきちゃん、そのお楽しみは後で、だよ。」 と。しかし、さつきはそんなことなど聞いていないようなそぶりで、 柳井を振り向かせ、 押し倒した。 柳井は内心、ガッツポーズをしていた。 実際、最近、日照り気味だったし、この女の子は上玉。 しかも、上に乗ってくるくらいの女だ。 と、思考を巡らせていた。 しかし、彼は、そのさつきの行動に驚いた。 さつきは、下着を脱いで、 柳井のズボンのジッパーを下ろして 彼の性器を外気にさらしていったのだから。 そして、事は進む。 弓塚さつきは、柳井の上で跳ねる。 柳井はこのとき、今までに味わったことのない感覚に 襲われていた。 そう、彼女の膣はすべてを飲み込んでいくようで、 快楽は脳髄の芯に直接電流を流されたようで それを貪ろうと 柳井は腰を突き上げ続けた。 しかし、あっけなく、柳井は、弓塚さつきの膣に果てた。 そして次の瞬間、柳井の意識は暗転した。 自分が殺されたなんて気付くこともなく。 「ふふふ。やっぱり男の人って、こうなると脆いんだぁ。」 部屋には楽しそうな声が響く。 無邪気な声。 そこには、首がありえない方向に曲がった死体が一つ そして、言う。 「貴方はおいしくないから、このままだよ。」 ───と、微笑みを浮かべながら。 死体もまた、だらしない笑みを浮かべていた。 俺は、ひたすら飲んでいた。 しかし、ゆっくりは出来ない。なぜなら木村がうるさいからだ。 「なぁ、敦、お前、あの娘、狙ってないの?アイツはかなりやらしいぜ。お前も 便乗しないともったいないぞ。」 とか言い始めた。 俺だって男だし、性欲もある。 しかし、俺は彼女と話したときの奇妙な感覚が忘れられなかった。 それはどういったものだろう。 えもいえぬ高揚感があって、その感覚は生物として、危険な感じがした。 だから俺は、木村のようになることは出来なかった。 唐突なことに、さつきは、いきなり戻ってきて、木村に 「柳井さんが呼んでるよ?」 と言って部屋をでていった。 木村はさつきについて行く。 それは期待に満ちたものだったろう・・・。 そうこうして、なぜか寝室に着いた。 木村は内心、やっぱり、と思っていた。 この娘は淫乱な娘に違いないと予想していたのが当たっていると思っているからだ。 木村は最近、事実として、女運に恵まれていなかった。 それは、木村自身にも、原因があるのだが・・・。 しかし、さつきはドアにもたれて微笑む。 「さつきちゃん、そんなにしたかったの?」 だらしない顔をして木村は言う。普通なら、嫌悪されてしまう顔のはずなのに さつきの表情は変わらない。 そんなさつきに、木村はむしゃぶりついた。 「ふふ・・・ふ。」 くぐもった声と、湿った音が室内に響きわたる。 その中に、木村の、雄の、荒々しい息が加わって、異界のようになっていた。 木村は、さつきの乳首を、甘噛みしたり、そのスレンダーな肢体を嘗め回したりしている。 弓塚さつきは、あくまでも、表情は変わらない。 「ねぇ?気持ちいい?さつきちゃん。」 木村は荒くなった息遣いで聞いてみた。 それでも、弓塚さつきは笑うだけ。 ―――直後、「ごきり」という音と同時に、 木村という男は、ただの骸になって果てた。 「・・・・クス・・・・。」 その骸の首筋に牙をつき立てて、血液を貪う。 「・・・・この血、マズイ。」 そう、冷たく言い放って、弓塚さつきは、その骸をぐしゃり、と潰した。 「ふふふ。でも、もう一人はこんなのじゃないよね・・・?」 そして部屋に向かった。 俺は酒を煽っていた。 ・・・なんというか、さっきから、妙に室内が乾いているような気分がする。 事実、喉も渇くし、観葉植物もしおれてきている。 けれど、酒を飲んで、酔っているせいだろう、と思って、俺はそのまま飲み続けた。 「どうして一人だけで飲んでるの?」 無邪気に、そして服を一枚も着ていない少女がいた。 「・・・・いや、別に?」 俺は視線を外しながら、酒を飲む。 ――けれど、その瞬間、俺の体を締め上げる少女の姿があった。 「な・・・・!なんでっ!?」 俺が言うけれど、さつきという少女は笑うだけ。 「貴方は志貴くんに似てるから、私と一緒にしてあげる。」 そう告げた。 けれど、 「俺は俺だ!そんな奴なんて知らない!知ったことか?!」 わめいた。 腕を振り回して、その異常な力を解こうとした。 「・・・・そう。やっぱり来てくれないんだね。」 そう告げられると同時に俺の体が軋む。 いや、血液が器官に流れて吐きそうなのだが、首を絞められているので 血は吐けない。 「だ・・・・誰と勘違いしてるのかは知らないが・・・・お・・俺は化け物と一緒なん・・・」 次の言葉を告げようとしたが、声は出ない。 声帯のあたりを握りつぶされたからだ。 ・・・・あぁ、そうか。この子は、 まだ、何か、人間の所があるのか・・・・。 そう、最期に残った俺の思考は、そんな言葉を出した。 「ねぇ?遠野くん?私が、今度は会いに行ってあげる。そして、遠野くんを、助け出してあげる。」 マンションの屋上に登った弓塚さつきは呟いた。 月光の下、少女の身体のシルエットが浮かび上がる。 その姿に気づくものなどあるはずもなく、街は時を進める。 「次は・・・遠野くん、だからね。」 月はそれに怯えるかのように、欠けていった。 END
あとがき
こんばんは。 妖艶さっちんです。 まぁ、こういうのは原作からいけばかけ離れてるものかもしれませ んが、個人的にはこういうのもアリかなぁ、とか。 で、まぁ、本年最初の月姫ですけど、しばらく更新はない予定です。 まぁ、一時撤退ですね。 しばらくピジョンブラッドのほうに力入れたいので。 では、またどこかで。 了
|