笑顔の先
著:TAMAKI
  静かに揺れる木々。




  木漏れ日が綺麗で暖かい。










 今日は掃除に来ているんです。

 とは言っても、遠野の屋敷の庭の掃除にですよ。

 翡翠ちゃんが一人でやるには広すぎますからね。

 






  思考を巡らせながら、落ち葉を掃く。

 この乾いた音は酷く優しい。









  ふと、門の外を眺めてみるんです。

 あの人が帰っていないかどうか、探してしまうんですよ。

 





  掃除の手を休め、門の外を見る。

 帰ってくるはずはない。まだ、平日の午前。彼が帰ってくるには、まだ早すぎる。

 




  今朝も、

 「今日は学校休もうかなぁ。琥珀さんがいるんだし。」

 と彼が呟いた瞬間に、

 「兄さん、琥珀がそんなに大事なんですね。それでも、学業は学生の本分なんですから、学校にはきっちりと
  行ってもらいますからね。」

 睨み付けられて、小さくなってしまったんですよ。

 そういう所も可愛いと思うんですけどね。

 可愛い、と言うよりは、彼の優しさが感じられるんです。









  ふと、坂を上ってくる人を見つける。

 少しだけ、よろり、とした歩き方で。

 思わず声をかけて、門に向かった。

 「志貴さん!」

 そう駆けていった私を見て、その愛しい人は微笑みを浮かべる。

 「あ、琥珀さん、大丈夫だよ。」

 ――――と。





  「それじゃ、志貴さんはゆっくり休まないといけませんから。」

 私は志貴さんの隣で体を支えながら部屋に送り、そして、ベッドに寝かせてそう言いました。

 「もうすぐお昼ですね。あまり胃に負担のかからないものを作りますから。」

 そう言って部屋を出ます。

 台所に向かう途中で翡翠ちゃんに出会いました。

 「姉さん?志貴さまの具合のほうは・・・?」

 心配そうな顔。

 私は、「大丈夫だから。」と笑顔で言って、台所に向かいます。

 







  ―――笑うことが、こんなに楽しいことだなんて・・・。





  


 
 台所に立つ。

 こんなに楽しく台所に立ったのは、久しぶりだと考えながら準備をする。

 自分で作って、自分で食べるという生活を送っていたせいか、充実した気分になる。









  「姉さん、手伝えることってありませんか?」

 いつもの表情で翡翠ちゃんが言う。

 少し固い表情。

 仕事の時にはいつもそう。もう少し笑えば、って思うんですけどね。

 でも、私と一緒にいてくれたから、だから、今の私があると考えると、本当に大切な妹です。

 「ううん。ありがとう。それなら、志貴さんの額に当てたタオルの水の交換お願いね。」

 「わかりました。姉さん。」

















   ふと、完全に視線が合う。

   






    この屋敷に来た頃とは逆転してしまった性格。









  それでも、あの日、窓から見つめるしか出来なかった私をあの男の子は外の大きな世界に

 連れ出してくれた。

 本当にあの日、あそこで、「助けて」と言わなかったのだろう、と考える。

 結論はただ、一つ。












  ―――あの男の子も何かすれば、私のように殴られる、ということ。












  私はそういうところもお姉さんだったんだな、と考えながら、お粥を炊く。

 そうそう、忘れないように、志貴さんの好きな梅の味をつけて。

 











   ―――沢山のことがあったんだ。











  ふと、心の中で呟く。

 誰も答える人はいない。

 







 「姉さん、姉さん?」

 「あっ、翡翠ちゃん!どうしたの?」

 怪訝そうに翡翠ちゃんは私を見つめます。

 その瞳の色の通りの名前。
 
 この瞳に何度救われたことか。

 「鍋、吹きそうですよ?」

 ハッと見ればその通りで、私は急いで止めました。

 「ありがとう、翡翠ちゃん。」

 そう言うと、翡翠ちゃんは頬を赤くして、

 「当然のこと・・・・ですから・・・・。」 

 そう言って、掃除に行ってしまった。
















  「―――本当にありがとう。」















  伝えたい言葉はいつか伝わるだろう。

 そして、翡翠ちゃんが元に戻るのも、もうすぐ。

 それまでは、私は絶対に笑顔でいよう。

 何があっても。














  「はい、志貴さん。お昼ですよ。」

 ドアをノックして、部屋に入って言う。

 「ありがとう。琥珀さん。」

 私は笑顔で、志貴さんに向かって言います。

 「じゃ、食べさせてあげましょうか?」

 「えっ?!」

 「冗談ですよ。」



















  大丈夫。この人が隣にいる限り、私は笑顔でいられるから―――。
END
あとがき
 更新してるなぁ・・・。自分(マテ
 今日のは琥珀さんですね。切り口変えてます。仕様です、ハイ(マテソコ
 で、これは友人の誕生日プレゼントだったりもします。
 一応、おめでとう。少し遅れたけど。
 あと、今回のは書き方を変えてみました。実験ですね。
 そして、bbs撤去したので、アニメの感想も。
 シエルと先生の声若すぎ(笑
 あと、公園で17分割はマズいと思います。(爆
 んー、絵は拒否反応しませんでしたねー。メルブラのヒロインの誰かが啓子さんだったとか(ぁ
 まぁ、そこまで、次回見たい、とは思いませんでした。正直なところ。

 では、別のSSで。