花弁
著:TAMAKI
 ふと、見上げた。
 
 隣には、純白の姫君。

 そして、視線の先には、静かに桜が・・・・。






    「綺麗だねー。」
  





 なんて、完全に棒読みに近い状態で言うあたり、アルクェイドは相当、この桜の色に

 惹かれたのかもしれない。





    「あぁ、そうだな。」





 なんて、遠野志貴は相槌を打つ。

 それでも、そんな返事を当のアルクェイドは期待していなかったのか。





    「むー。」





 なんて、こちらに視線を向けて、何か言って欲しそうな顔をする。





    「そうだ・・・なぁ。桜って、昔はその下に死人が埋まってる、とか言うんだけど。」





 言いかけてやめた。

 なんでこんなこと、この世界で一番、遠野志貴が想う相手にしなければならないんだ。

 そう考えると、





    「うん。それでも、やっぱり俺はこれもいい思い出になると思うんだ。」





 と答えた。





    「そうだねっ。これも二人の思い出になるんだよね。」





 そう笑って、くるり、と回るアルクェイドに、完全に見惚れてしまう。















       その髪の色に。







  

       その瞳の朱に。









       その白い肌に。









       その笑顔に。













 「ねぇ、志貴、あの人たちは?」

 見れば、小さい男の子と、恐らくはその母親らしき人が手を繋いでこちらに歩いてきていた。





 「あぁ、あれは、多分入学式だろうね。今日は・・・そうか。もう春だもんな・・・。」





 自分は大学の春休みがまだあって、そしてそれを利用して、桜が綺麗、ということで有名なスポットに

 来たんだ。

 最初「桜を見に行くぞ。」と言ったときに、「えー。もっと別のにしようよ。」なんてことを言っていたアルクェイドが、今では、これ
 
 だけのはしゃぎよう。




 「そっかー。あの子、入学したんだ。」




 「あぁ、そうだな。」




 と、相槌を軽く打った遠野志貴に、アルクェイドは、さりげなく。




 「ねぇ?志貴と私の子どもなら、どんな子になるかな?」




 と答えに困るようなことを唐突に言った。




 「・・・ぁ?!えーっと、そうだな。まぁ、俺に似れば素直で優しい子だろうけど、アルクェイドに似れば、我侭な子どもだろうな。」




 照れ隠しなのも判っている。




 「もう、どうしてそういうこと言うかなぁ。」




 とアルクェイドが言っているあたり、こちらの冗談をわかってくれている。

 そして、巡る季節は、出会いの夏から2回目になる春。





   「あぁ、それでも・・・。俺はアルクェイドとの子ども、欲しいな。」





 遠野志貴は先が永くないことを知っていて、アルクェイドもそれを理解している。

 だから、今、という時間に告げておきたかった。
 




   「・・・!そんなこと言うなんて、志貴のえっちー。」





   「って、どうしてそういうことになるっ?!」





 桜の木の下で戯れる二人を包むような風が吹く。

 そして舞い上がり、舞い散る桜の花弁。









 「ぁ・・・。」
 「ん・・・・。」









 それに反応して、二人とも息を呑んで、





 「・・・綺麗、だね。」

 「あぁ。」





 とだけ言葉を紡ぎ。












 小さい子を連れた母親は、二人の脇を通り過ぎる。










   「ねぇ、志貴?」








  金色の髪にピンク色の花弁が、はらり、と乗り、










   「やっぱり、子ども、欲しいね。」
 








   と、まばゆい笑顔で告げた、真祖の姫君の髪の毛から、















    「・・・そうだな。」















   はらり、と花弁は流れ、






















    答えた俺は、その姿に、「綺麗だ」という呟きを残した。
END
あとがき
 お久しぶりです。
 なんとなく書いてみたかったのでアルクェイドのSS。
 少し時期が過ぎたようにも思うんですけど、書いて、残しておきたくなったので一つ。
 Fateもどうなの?というお話をよく聞きます。
 書いたとしても恐らくは1、2回になるかもしれません。