惜別
著:TAMAKI
  ―――見上げれば、凍てつくような冷たい月。




     そこに佇むは、温かな笑みを浮かべた・・・・










 「あぁ、待ったか?アルクェイド。」

 遠野志貴は静かに、そしていつものように声をかけた。

 「待ったよー」なんて頬を膨らましているあたり、まだ子どもだな、なんて思って笑う。

 「何がおかしいのよ?志貴。あんまりからかうと・・・」

 あぁ、いつものパターン。

 「いや、ごめん。アルクェイドが可愛いな、って。それだけだぞ。」

 上目がちに言う。

 最近も、ずっと眼鏡をかけているし、線は外せば見える。

 それでも、遠野志貴には、幸せな一年だった。

 別段、特別というわけではなく、ただ、好きな者と過ごしていけるという幸せ。

 





  ―――そこに行き着くまで、永かったけれど。





  遠野志貴は長い命ではない。

 それは自身も知っているし、そこから逃れようと、見苦しく足掻きたいとも思わない。




 ―――けれど。




  「ねぇ、志貴。側に居て?」




  ある夜、ベッドの中で呟いた言葉。

 恐らくは、遠野志貴は、この言葉をもう一度聞けば、見苦しかろうが、どうだろうが足掻くことだろう。

 それでも、今の遠野志貴、という存在はここに在って、アルクェイド・ブリュンスタッドと一緒に夜の

 庭を歩く。

 「寒いねー。」
  
 無邪気にくるり、と回りながら、そんなことないような表情で笑うアルクェイド。

 「あ・・あぁ。確かにな。」

 そう言って、遠野志貴はコートの右ポケットから、缶コーヒーを出す。

 まだ温かいそれは、この、しん、と冷えた夜には、最高の飲み物だった。


 



  「ねぇ、志貴?」

  唐突にアルクェイドは微笑む。

  「ん?なんだ?アルクェイド。」

  それに答えるけれど、そう言葉を投げた本人は、そこで微笑むだけ。

  
 
 
  そこで気づいた。


























  ―――あぁ、なんて













     ―――都合のいい、

















        ―――ユメ。
































   ばさり、と何か劇の幕が取り払われるように、景色が変わる。

  そこには、遠野志貴が、コートを着たまま、部屋にただ、佇んでいて、アルクェイド・ブリュンスタッドの気配は

  全く無い。

  部屋の生活感は皆無で、そこに長い間、主がいないのだと、無言で告げているようだった。

  







  「あ・・・アルクェイド・・・・・」








  静かに跪く、その姿は、神に乞うように見える。


  けれど、時と現実は残酷で、それでも遠野志貴の願いは叶えられない。

  
  









  風が吹いて、カーテンが揺れる。








   そこには、写真が在った。







  何の戸惑いも、後悔も、惜別なんてものもない、ただ、純粋な笑顔で笑うアルクェイドに少し困った顔の遠野志貴。

  
  







   ―――あぁ、どうして笑わなかったんだ。俺。









  という惜別の言葉しか思い浮かばない。









   ふと思い出せば、今日は12月25日。






   「そう・・・か。アイツの誕生日か。」






   そう、木霊した部屋には、もう既に人影は無かった・・・・・。
END
あとがき
 お久し振りです、こんばんは。
 石投げないで下さい(笑
 というか、アンハッピーですなぁ。
 事実、トゥルーエンドの続きな訳ですが、これも、ちょっとキツイ話ですねぇ。

 お久し振りでヘヴィパンチですいません(w
 ではでは、また春のサクラの咲く頃にでも、また。