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月光
著:TAMAKI 酷く、時間が過ぎた気がする。 それは、自分の過ぎた時間を、一秒ずつ数えるに等しい、ウェイトと理由を持った気持ち。 「・・・・・・。」 ただ、ベッドに座る。 彼女との思い出が残った、この部屋で。 〜月光〜 あれから、5年が過ぎた。 俺・・・遠野志貴は、高校を卒業し、そのまま大学に入学した。 学力面は、と聞かれれば、無難に大学に入ったレヴェル。 とは言え、経済面に関しては、相変わらず、秋葉に頼ったままで、有彦になんかは、 「遠野、お前ってさぁ。どうしてこう、妹に小遣い貰ってるかなぁ・・・。」 なんて言う。 実際、バイトをしたい、という意見は、ものの見事に却下されたし、もちろん、大学生として 一番簡単そうな、家庭教師も琥珀さんの耳打ちの後、猛反対で却下されたからだ。 けれども、秋葉には十分すぎるほどの、小遣い、というよりは、俺が生きている限り、秋葉を 裏切らないと約束した代価として、あのアルクェイドと過ごした部屋を、あのまま、遠野志貴の ものとして契約してもらった。 「全く、兄さんをそこまでさせる女性なんて・・・。」 という小言は、星の数ほど聞いたけれども、それでも、俺はあの部屋をあのままで置いておくことを 望んだ。 「ここが始まり・・・だもん・・・な。」 玄関のドアノブに手をかけながら言う。 あの日、あの白昼に、あの白い彼女を・・・「殺して」しまったこの場所。 多分、彼女がこれで「壊れた」と言っていたけれども、同時に遠野志貴も「壊れた」場所なのかもしれない。 「違う、な。壊れたじゃなくて、壊した・・・だろ。俺。」 呟くソレは呪詛にも似た言葉。 あれがなければ、今の遠野志貴はなかったし、こんな感情、想いはせずに生きていられたかもしれない。 ドクン・・・・。 「ぁ・・・ヤバ。」 眩暈がする。 最近は少しマシになったのだけれども、時南先生曰く、「風前の灯火かもしれんぞ。」という状態らしい。 意識はそのまま、真っ暗に沈んでいく―――― 深く・・・また夢の中へ。 窓から光が漏れる。 目覚めれば、そこはあの日の学校。 眼下には・・・・あの日の笑顔の彼女。 そして過ごすのは、何気ない、あの日は、先に何の不安もなく、彼女と過ごした時間。 ―――あぁ、またこのユメ。 もっと、このユメを・・・ 否。望むのは・・・・・・・。 「むー。」 と唸りながら、ハンバーガーを食べる彼女。 そして、笑いながら、同じものを食べる、遠野志貴。 ―――彼女との時間、そのものだろう? 現実に引き戻されるように、目を覚ます。 見回せば彼女の部屋。 ふと、ドアノブを見る。 ―――なんて莫迦な行為。 あの日、遠い城に去っていった彼女に、再び逢える筈はない。 それでも、気がつけば、いつでも傍にいるような・・・気が、した。 ―――がちゃり。 ドアが開く音がする。 遠野志貴は体中のすべてのバネを使ったように飛び起き、そこを見る。 「また、ここにいたんですね。兄さん。」 そこに佇むのは、秋葉の姿。 「そう・・・だよな。」 ひとしきり、自分を納得させた後、空を見上げた。 宙に浮かぶは、月光を纏った球体。 そう、遠野志貴は、最期の時間まで、ここで待つ。 最愛の彼女、アルクェイド・ブリュンスタッドを待って。 END
あとがき
お久しぶりです。というか、多分、大半の人は初めまして。 久しぶりな方は、もしかすると忘却の彼方な人かもしれません。 さて、ということで志貴くんには痛い話かもしれませんが、楽しんでもらえればいいかなぁ、と。 それでは、また、の機会があれば。 了
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