光の中。
著:TAMAKI
   やわらかな風が吹く。

   風は夏の匂いをしていて、志貴とすごす、幾度目かの夏という

   季節を告げているようだった。

   今日は、街で、一番高くて、自然のあるところにやってきた。

   ここは、志貴と、私の秘密の場所。

   ここで、二人で、寝転がって、空を一緒に眺めたこともあった。

   







    そして今日はここで志貴を待つ。









   風が吹いて頬を撫でて心地よい。

   こんなに気持ちいいと思うことは少ない。

   でも、多分、志貴と過ごしていられるのが嬉しいからだと思う。

   私は志貴に会えるのが嬉しくて、ここに早くから来てしまった。

   ここに来る途中、自転車に乗って、楽しそうに笑う子どもたちの
 
   声が響いてきて、なんとなく、気持ちが温かくなった。

   時間に余裕があったので、ゆっくりここに向かっている途中、普段ならば

   あまり気にすることがないものを見た。

   それは、道端に咲く花だったり、道の端で、ひび割れを避けるように

   急ぐ蟻など、「生きている」って実感するような気持ちにさせてくれるものが沢山あった。

   それに、ここまで日光が強いと暑いけれど、でも、木漏れ日は気持ちいい。

   適度に涼しくて、でも、温かくて、というのが気持ちいい。

   眠っていてばかりだった私には、何もが新鮮で、この季節は、昼間活動するのに

   体力がいるけれど、それ以上に、感動することが一杯で、

   もっと志貴と一緒にいたいって思うんだ。

   













   深く息を吸い込むと、緑の匂いがした。

   この温かい匂いは私は好き。

   温かさは志貴みたいに優しく私を包み込んでくれるから。
















   「お〜い。アルクェイド〜。」

   瞳を開けると、目の前に志貴の顔があった。

   「ふあぁぁ、って私寝てたの?」

   寝ていたのは自分でもわかっている。

   「あぁ。あまりにも気持ちよさそうだったから、起こさなかったんだ。」

   志貴が微笑んで答える。

   ふと思うと、太陽はもう西に傾いてきている。

   待ち合わせたのは1時のはずだから、この傾き方はおかしい。

   「ねぇ、志貴、今は何時?」

   ちょっと、怒ったフリをして聞いてみる。

   「え?あぁ、今は4時半だよ。」

   腕時計を見て、志貴が答える。

   「って、どうしてよ。」

   「だから、言ったろう?気持ちよさそうに寝ていたから、起こさなかったんだって。」

   う〜、と恨めしそうに志貴を見る。

   でも、志貴はマイペースで、

   「まぁ、こういうのもいいかなって思ったんだ。何もしないで、過ごすって。前に言っただろう?

    無意味なことをするって話。俺は、その、こういうのも好きで、思い出になったからさ。」

   最後の方は照れた風に志貴は言う。

   だから、許してあげることにした。まぁ、許さないことなんてないのだけれど。

   














   今度は、木にもたれて、志貴の肩にもたれて、ぼうっとしている。

   志貴は、小説を持ってきていて、それをずっと読んでいる。

   最近、志貴は本を読むことが多いみたいだ。

   「ねぇ、志貴、その本、面白い?」

   聞いてみる。

   「う〜ん、どうだろう、さして面白いわけでもないよ。」

   わからない。どうして面白くないのを読めるのか。

   「でも、いつかこういう話を読んだなぁって思い出したときに、面白いって感じるかも

    しれないしさ。」

   笑顔で言う。

   私は、そんな笑顔が大好きで、志貴の肩に体を預けた。

   志貴は苦笑いして、私の肩を抱いて、一緒に街を見下ろしていた。

   














   志貴といると、時間が止まったように感じて、でも、早く時間が流れてしまう。

   それが心地よくて、でも、もっていなくて、志貴ともっと思い出を作りたいから、

   一緒のことをする。

   それは、本当に意味のないことだけれど、実は、私には意味がある。

   だって、優しい気持ちになれる。志貴の優しさを分けてもらって、どんどん
 
   優しくなれる。

   そうなっていくのが自分でも、わかる。

   そんな自分がすごく心地いい。

   そうしてくれる志貴のことがやっぱり私は好き。













   コクンと、体がぶれる。

   「あれ?」

   驚いた。

   見ると志貴が、コクコクと首を前後に揺らして、眠っている。

   ちょっといたずらしてみたくなった私は志貴の鼻をつまんでみた。

   「ん〜〜、ぐっ?!」

   と、志貴は目を覚ました。
  
   顔は「何事だ?!」って顔をして、目をぱちくりしている。

   その顔がおかしくて、つい吹き出してしまった。

   それを見た志貴は、

   一瞬、考えて、

   「・・・アルクェイド、何したんだ?」

   と笑いながら言った。

   私は、ふふっと笑って、

   「志貴の鼻をつまんでみた〜」

   と言ってやった。そうしたら

   「コラ。もう夕べ、秋葉から、散々、しかられたんだよ。それで、夜中まで

    琥珀さんに監視されるし・・・、眠れなかったんだ。だから、ちょっとでも、寝たかったんだけどな。」

   ちょっと悔しそうに言う。

   でも、顔は笑ってる。

   「ねぇ、志貴、そんなにゆっくり寝たいなら、今日は私のところで寝よ?」

   一緒にいたかったから、って言うのは言わない。だって、切り札だから。

   少し上目遣いで聞いてみる。

   でも、志貴には、それだけでも、効果があるみたいで

   「・・・解った。でも、有彦のところに泊まるってことにしないと面倒だ。」

   と言って、立ち上がる。

   そして、私の手を握って、立たせてくれる。

   ちょっと志貴を照れさせたくなったので

   「ねぇ、このまま手、つないで行こう?」

   と言った。

   案の定、志貴は照れ照れで、視線を逸らして、黙ってしまった。











   そうこうして、有彦って子の家と自分の家に電話した志貴は、

   私の部屋に来た。

   合鍵をこの前渡したから、

   「ねぇ、志貴が開けて。」

   と言って、開けてもらった。





   ───なんだか嬉しい。

   秘密を一緒に持っているみたいで。

   部屋に入ると、私は鍵を閉めて、チェーンをかけた。

   これはおまじない。

   二人でいるときはこうしている。

   少しだけでも一緒にいたいから。

   









   「志貴」



   「え?」










   私は志貴に抱きついた。





   そうして、見詰め合って、キスをした。





   重ねるだけのキス。











   そして、見つめて言った。





















       「大好きだよ。志貴。」
END
あとがき
 脳ミソ蕩けきっているTAMAKIです。
 あぁ、もう書いていて、こう自分の脳ミソのとろけていくのがわかるくらいです。
 特に、最後は、メルトダウンしています。
 本当に甘いお話になりました。
 ちなみにこのあと、志貴くんはバレて怒られてしまうんですねぇ。
 でも、また繰り返す、そんな日々のお話です。

 では
 別のお話で。