手 紙
著:TAMAKI
   はらり、はらり、はらり。






  桜の舞う公園にいる。

  なにをするというわけでもない。

  ただ、ベンチに座って考えていたりするだけ。








   気付くと、いつもここにいる。

  逢えなくても、私は、ここにいる。

  そう、ここで、初めて「約束」をしたから。

   





    あぁ、どうして、こんなに、




       風が




       優しく




       痛むのだろう・・・。







  
   志貴と一緒に過ごした街。

  今は、私の隣には誰も居ない。

  でも、確かにここにいる。

  なぜなら、志貴は、この私の体の中にいるから。








   ここに来る途中に見た、バラのつぼみが綺麗で、

  それは、空の蒼さに、届いて、吸い込まれそうだった。

  志貴が私にくれた花。

  だから、私の大好きな花でもある。

  つい出た言葉。







    ―――どうして、私を連れていってくれないの?志貴・・・。







   最近、ふと気付いた。

  よく、人間のラブソングで歌われる、「愛する孤独」っていう言葉が。

  私には、多分、志貴だけだったんだろうなって思う。

  






   ふぅ、と息を吐く。

  最近思うのは、こんなことばかり。

  多分、私は、あの志貴に、17個に分割されたときに、色が付いたんだと思う。






   ―――なんて皮肉なのだろう。





   自分が好きになれる人間と出会って、それが二人にとって終わりの始まりだったということに。
 
  志貴は、最期に、

  「どんな夜が、二人を引き裂いても『つながった』この絆は、切れないから。」

  と言っていたけれど・・・






    でも、不安になる。





      私には、確かなものが志貴だけしかいなかったから。





         ―――自分の存在も、信じられなくて・・・。








   どうして、志貴は、もういないのに

  風は頬を撫でるの?

  私は、痛みしか感じないのに。

  






   トンッとベンチから立ち上がって、街を歩く。

  ふと、志貴に会いそうで、いるはずもないのに、探してしまう。

  「これも、意味なんてないのに。それがわかっているのに。」

  呟く。

  自分の内側に。







   それでも、私の中の遠野志貴は微笑んでいる。




  


  私も、そっちに行きたい。

  志貴と二人でいたい。

  無駄なこと、もっと一杯したかった。

  











   ふと、想う。


   なんで、志貴がいないのに


   私はここにいるのだろう・・・と。

  
   どんなに綺麗な花が愛しいと想うくらい揺れていても

   
   志貴がいないと、意味がない











    志貴がいないと










           意味がないんだよ。






















   ―――そういうこと言うなよ。アルクェイド。





   ハッと後ろを見る。

  見覚えのある、

   否、

  大好きな後姿が、私の、視界の隅にいた。

  ゆっくりと、私はそちらに向かう。

  それは、私を待っているようで。

  気付けば公園の入り口にいた。

  




   息を呑んで、公園に入る。

  心なしか、いつもよりも、桜が多いような気がした。

  









  その中に志貴はいた。

  いつものように微笑んで。

  「どうした?アルクェイド。」

  なんて言葉もいつもどおりに。

  「志・・・貴?」

  うまく息が出来なくなるくらい嬉しかった。

  「どうしたんだよ?口パクパクするのは、いつも、俺のほうだっただろう?」

  そのいつもどおりの振る舞いが嬉しかった。











   近づきたい、抱き締めたいと思うのに、体が前に進まないのは

  どうしてだろう?

  よく、志貴を見つめる。

  









     瞳を・・・






     その体を・・・











   なぜか、その瞳に、私は映っているのに、私が近づくことを

  拒否しているように、見えた。

  否、多分、それが、今の私と、志貴の距離なのだろう。

  








  「―――なぁ、アルクェイド・・・。」

  志貴が唐突に呟くように言った。

  私は、眼で、その後を促した。

  「多分、今は、寂しいし、俺は何もしてあげられないんだけど、それでも

   やっぱり、アルクェイドには、幸せで居て欲しいって思うんだ。」

  少し恥ずかしそうに志貴は言う。

  「変わらないね。志貴って。」
 
  私も、はにかんで言った。

  なんだか、今まで、考え込んでいたことが、馬鹿みたいに、思えた。

  志貴が、少し、怒ったフリをして、

  「って、お前なぁ、あんな顔してたら、気にもなるさ。」

  と、私の眼を見つめて言った。

  「・・・でも、どうして?志貴は魔術師でもないのに・・・。」

  それを聞いた志貴は、少し申し訳なさそうに、

  「うん、先生に頼んだんだ。あの人、俺が死んでから、『その直死の魔眼を調べたいから魂を見せなさい』

   なんてことを言うんよ。まぁ、そういうのは冗談だったみたいだけど、それでも、アルクェイドに、

   俺も会いたかったからさ。」

  桜の匂いが、辺りを包んで、私にも、その香りが届く。

  それは、むせ返るようなのではなく、優しい匂いだった。

  そして、志貴は続ける。

  「だから、先生に頼んだんだ。まぁ、先生ときたらさ、『それは若さの特権よね』なんて言うんだ。」

  志貴は、笑顔で言う。でも、映る瞳は、何か、覚悟を決めた光が宿っていて、

  「なぁ、アルクェイド、俺はさ、やっぱり、お前には笑っていて欲しいって思う。

   今のお前を見てると辛いんだ。だから、ちゃんと伝えに来た。」










    そう呟いて志貴は私に手を伸ばす。










  「どんなに、離れても、お前が『永遠』の存在で、俺には限りがあったとしても、この気持ちだけは

   側にいるから・・・。」














   風が辺りを包み込む。

   そこは、ピンク色で包まれたせかいだった。

   「わぁ・・・」

   つい感嘆の言葉が出てしまう。

   その私を見た志貴は、

   「また、思い出が増えたな。」

   そう、言って、私の中に溶け込んだ。






























        ―――好きだよ。アルクェイド。















            ―――私も、志貴のこと、愛してるよ。





























         そこには、ただ、桜の匂いが、ずっと、残って、










           真っ白な姫君を包み込んでいた・・・・。
END
あとがき
 季節感ない、節操のないSSですいません。
 たまたま、思いついたから、書いたものです
 今回、模索もしていたので、結構、自信がないです。
 また、感想などくれましたら...

 では
 別のSSで