ただ、温かな雪の中...
著:TAMAKI

  イルミネーションに囲まれた街の中を歩く。

  隣には・・・否、腕にしがみつくように腕を組んでいるのは翡翠だ。

  服は俺も、翡翠もコートで、翡翠はロングスカート、俺はジーンズだ。

  「志貴さま・・・。」

  少し不安そうに翡翠が俺を呼ぶ。

  翡翠とは沢山の場所に行ったけれど、人が多すぎるところにはあまり行かなかった。

  俺は

  「あぁ、翡翠、もうすぐだよ。予約していたレストランは。」

  今日はクリスマスまで、あと3日の21日。

  土曜日ということもあって、街には人が溢れている。

  翡翠は・・・秋葉や琥珀さんがいなくなってから、街に出て、買い物をしてくれるようになった。

  それでも、やっぱり、あまりに人が多いと、すこし恐怖心にも似た、何かそういう感情を

  抱いてしまうみたいだった。















   「あ・・・・。」

  いきなり翡翠が声を上げた。

  声を上げる、というよりは呟く、というニュアンスのほうが近い。

  見れば綺麗にライトアップされたツリーがあった。

  去年、聞いた話によれば、毎年、屋敷でクリスマスのパーティーをすることはなかったようで、

  琥珀さんがケーキを作るだけだったそうだ。

  「なぁ、翡翠?予約した時間までしばらくあるし、ここで見ていようか?」

  出来るだけ優しく言った。

  今にも消えてなくなりそうな、この雪を手に乗せるように優しく。

  「え?!・・・そうしていただけますか?」

  照れたようだが、嬉しそうに目を輝かせて見る翡翠。

  俺は、ツリーなんかよりも、その翡翠の顔を見ていた。

  優しく、ほんの少し、寒さで頬を赤くしている。

  それがなぜか可愛らしくて、俺の腕に絡ませている、翡翠の手を握った。
























    ・・・え?!・・・





















   私はツリーに見入ってしまっていたので気付かなかった。

  志貴さまに手を握られた瞬間、小さいけれど、声を上げてしまった。

  でも、その手は暖かくて、この寒さの中、冷え切った私の手を温めてくれていた。

  いつも、優しい志貴さまは、去年もずっと一緒にいてくれて、私の

  心を暖め続けてくれた。

  悪夢を見た日も、あの日、姉さんをなくした日を夢見た日も。

  そして・・・今も、それは続いている。

  「志貴さま・・・。」

  私は心の中でそう、小さく呟いて、志貴さまの手を握り返した。

























   二人を包み込む風景は、雪とライトアップされたツリーだけになっていた。

  それでも、志貴はレストランの予約の時間を過ぎたのも忘れるように見入っていた。

  翡翠も同じ。

  ただ、その風景を見ていた。

  どこからか、少し前に流行ったようなラブソングが聴こえてくる。

  それさえも、二人には何よりのものに思えた。

  翡翠は志貴にもたれるように、腕を絡ませて、ただ、そのツリーを見上げて、そこにいた。

  それは絵にすれば、なんて綺麗なものだっただろう。

  街は、時間を刻々と刻んでいて、止まらない。

  それでも、二人の世界は、時間が止まっているようだった。

  動くものは二人の吐く、白い息だけ。





   
















   「翡翠・・・ごめん・・・。」

  「いいです。だってあんな綺麗だったんですから・・・。」

  翡翠はそうやって微笑んでくれる。

  遠野志貴という男は、これにどれだけ救われただろう。

  だから、今日は、その感謝を込めて、レストランまで取ったのに。

  それを推し量ったかのように翡翠が言う。

  「志貴さまとあぁやって、一緒に同じ景色を見ていられただけでも、私は幸せです。
   
   だから、気になさらないでください。」

  自然に言う。

  翡翠の、こういうところに惹かれたのだと、つくづく思わせてくれる。

  俺は、ただそれが嬉しくて、翡翠の手を、ぎゅっと握った。

  ・・・翡翠もそれに応えるように握り返してくれた。

  だから、俺は言った。

  「翡翠、24日、ちゃんと、二人でパーティーしような・・・。」

  その翡翠色の瞳を見て、見つめて・・・・。

  「はい。志貴さま。」














   二人は静かに降る雪に下、お互いの手を握り合い、














     街の中を歩いていった・・・。
END
あとがき
 こんばんは。
 お久しぶり・・・になります。
 以前から来てくれている方はいるのでしょうか?
 というわけで、少し早い、クリスマスシーズンのSSです。
 ちょっと、今回は実験をしてみました。
 ・・・いえ、単純に、翡翠視点、志貴視点、第三者視点、というだけなのですが、
 この第三者、なんか画家の卵という裏設定まで自分の中にあったりします。
 あまりウチのページでは触れていない話ですが、月姫のアニメはどうなるんでしょう。
 多分、そうなれば、SSも爆発的に増えるのかなぁ・・・。(遠い目)

 では