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未来
著:TAMAKI
ここに来るのは久々だ。 私、瀬尾晶はここ、数日、アーネンエルベには近寄らないようにしていた。 忘れもしない、2ヶ月前、ここで、物凄いものを見てしまったから。 そう、あの時は─── 私は志貴さんとの待ち合わせで、アーネンエルベにいた。 「式、あなたの仕業ね・・・!」 「馬鹿言うなオレだって被害者だ・・・。」 女の子・・・、あれは、私でも知っている、礼園女学院の制服の二人と これはまた、個性的な橙色の紬を着た女の人(だと思う)が見合って、 というか、睨みあっている。 実際は、気の強そうな礼園の女の子が大きな声で言うから驚いて、見てしまった。 私だけじゃなくて、店の中のみんなが見ている。 式と呼ばれた人は礼園の制服を着たもう一人に、一言、二言呟いたあと、 店を去ろうとした。 その瞬間に視えてしまった。 それは、あの凄いバラバラ殺人を視た私も、吐き気に襲われるくらいのものだった。 あの紬を着た人と、 礼園の女の子が 殺しあって、 笑っていたから・・・。 ハッキリ言って、もの凄かった。 それに、礼園の二人の気が弱そうなほうの女の子のほうが凄かった。 凄惨、という言葉はこういうのだろう。 目の前で、男の人の手足がよじれて、ちぎれていくのだから。 しかも、一人じゃない。 同じように、人が「壊れて」いくところがしばらく続いた。 私は、喉にこみ上げてくるのを感じて、トイレに入ってもどしてしまった。 あんな光景は、二度と見たくない。 視える、ということにこれほど恐ろしいと思うことは滅多にない。 そして、同時だったから、気付きにくかったが、あの紬を着た人もだ。 あの人と同じ姿をした人にナイフを突き立てられたかと思えば、その人にナイフを 突き立てていて、もう物凄い光景だった。 「・・・今日は志貴さんとお茶会の予定だったのに・・・、何も食べられそうにないです。」 トイレから出て、そう呟いた。 これで、救いだったのは、あの二人も店から去っていたということだろう。 二人が座っていたテーブルにはティーカップだけが残っていたから・・・。 そういった理由から、私は、しばらくアーネンエルベには行かなかった。 行けなかった、というほうが正しい。 あの、紬を着た人は、ハッキリ言うと怖い。 でも、笑うと優しい顔をするんだろうなぁ、と思う顔だった。 ただ、私には、志貴さんがメガネを外した志貴さんの眼よりも底がないように映った。 実際、私は知っていたのかもしれない。志貴さんと紬を着た人を会わせることはしては いけないことだと。 でも、今日は、志貴さんに、半ば誘導尋問されるみたいに(私が会いたかっただけだが)ここに 来てしまった。 いつも志貴さんと会う前は、かなり時間に余裕を持ってくる。否、持ちすぎて来る。 今日なんて、待ち合わせの時間を間違えて、1時間半も早く着いてしまった。 仕方ないので、中に入って、紅茶をオーダーして、ぼうっとしていた。 周りの家族連れ、恋人同士、友達。 みんなが団欒のように笑って話している。 私だけが憂鬱な顔をしているみたいだ。 カラン そこには、紬を着た女の人と、左目のあたりまで前髪を伸ばして、黒縁のメガネをかけた 二人が、入ってきた。 ドクンと心臓が跳ね上がる。 でも、不思議と怖さはなかった。紬を着ていた女の人は、穏やかな顔で それを見ている男の人も、優しい眼をしていたから。 そして、男の人は言った。 「式、君はここのラズベリーパイを食べたことはないのかい?」 式と呼ばれた女の人は答える。 「あぁ。食べたことはないさ。以前、来た時なんかは、鮮花にオマエの伝言を頼まれて 伝えにきただけだからな。幹也、それに私はとびきりの甘党というわけじゃないんだ。 それに、女は皆、甘党ではないとトウコが言っただろう?」 幹也と呼ばれた男の人は、優しく笑う。 そうして、店員さんに、彼は言った。 「あの、ラズベリーパイ2枚、お願いしていた、黒桐ですけど。」 店員さんが確認して、テイクアウト用の入れ物を持って、男の人に渡した。 それを受け取って、二人は店を出ようとした。 ───そのとき、視えた。 幹也、と呼ばれた人と式と呼ばれた二人が台所に立っていて、 一緒に料理しているところを。 そして、二人が見つめあって キスをした。 もう一度、見つめあって微笑む二人を 窓から注ぐ光が 包み込んでいたのを。 「アキラちゃん、どうしたんだい?」 志貴さんが来た。 いつもの優しい笑顔の志貴さんが。 「ねぇ、どうしたんだい?そんなうれしそうな顔をして。」 「え?あぁ、お似合いの二人だなぁって。」 志貴さんは不思議そうな顔をしたけれど、 「そうか。それはよかった。」 と一人納得したみたいで、 微笑んでいた。 私は心の中で呟いた。 「お幸せに、」 ───と。 END
あとがき
これは、アキラちゃんの視点ですね。 一応、クロスさせてみたお話で、僕の中では 実験的な要素があるものです。 でも、あまりクドクド書かなかったのは「刹那的な」関係を書きたかったんです。 だから、アキラちゃんにはアキラちゃんの式や幹也には彼らの、カタチがあると思うので。 結構、淡白な文章になってしまったのが反省点ですね。 では 了
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