或る夏の日
著:TAMAKI
  あれから一年が経ちました。

  私は、新しい目的を見つけ、ここ、長野県にいます。

  そして、今日、あの人が帰ってきます。








     彼の




       本当の




         故郷に・・・







   ───いつだったでしょう。私は庭で、あの男の子を見ました。

  彼は、私に、「こっちで遊ぼう」と誘います。でも私は出なかった。

  あの、狭い部屋に閉じ込められ、毎日毎日、来る日も来る日も、陵辱されるだけだった日々。

  あの子が羨ましかった。太陽の下で、いつも輝くように笑う。私もその中に入りたかった。

  妹の翡翠ちゃんのように・・・。

  それは出られなかっただけ。

  翡翠ちゃんを守るためにそれしか選べなかったから。

  「姉さん」として、守るために。









   ───やがて、彼は私を、本当に「外」に出してくれました。

        それまで、演じることだけしか、出来なかった私を。













   そして、今日、彼はここに来ます。

  












    ────いつだったでしょう。

  


   ・・・・・いつかはもう忘れてしまいましたが。

   槙久さまがいつものように私を陵辱し、気が治まって、いつもの優しい槙久さまに戻ったとき、私は

  その男の子について聞いてみました。


   ───それは、遠野家の敵であった家の跡取りだったこと、それを滅ぼしたのは槙久さまたち

  だということ、そして、彼の名前は、遠野家の跡取りのシキさまと同じ名前だった。だから生かした

  ということ。





    どうしてでしょう、心のどこかで男の子を憎んでいたのに、彼を本当の家に帰してあげたい、と思ったのです。









  一年前、私は、演じることを終えました。

  これからは、本当の「琥珀」になろうと。







   そこからでした。私は、いつもの夕食の買い物に行き、帰りに図書館で、古い新聞記事を探す。

  なかなか見つかりません。何度も、何度も探しました。

   最も、そう簡単に遠野家の行った殺戮などとは出るはずもありません。情報操作も行われた

  のでしょう。見つけるのに、半年くらいかかりました。

  そこからは、割と簡単に進みました。

   週一回、長野に行き、そのお屋敷の掃除をしたりする。私は翡翠ちゃんみたいに掃除が得意では

  ありません。そのお屋敷を綺麗にするためには、お屋敷を出ないと間に合いません。

   そして、今年の四月、秋葉さまにお願いをして、お暇をいただきました。

  そこからは毎日、庭の手入れをし、部屋のものを新しくしたりして、志貴さんの子供の頃のように

 お屋敷を使えるようにしました。このお屋敷は遠野のお屋敷のようにいいものを使っていたらしく

  そこまで復元しなければいけない、という風なことにはならなかったのです。

  







     ────そして、今年の初夏、すべての目処が立ったので、





        





            男の子に手紙を送りました。












    男の子には、なぜお暇をいただいたのか、教えてはいません。

  大好きな人を驚かせてみたいじゃないですか?だから、敢えて彼には知らせませんでした。

  でも、気付くでしょう。長野に行く、と言った時点で。

  私もずっと一人では寂しいですから、土日だけ遠野のお屋敷に帰ってはいました。

  だから、ここまで出来たのでしょう。秋葉さまは心配してくれます。「貴方一人で大丈夫?

  翡翠も連れて行けばいいのよ?」と。秋葉さまは優しいのです。

  




   私は秋葉さまが大好きです。変な意味じゃないですよ?

  志貴さんは誤解してますけど、とても優しい方です。だからお屋敷を出るとき、秋葉さま

  には申し訳なく思いました。






   話がズレてしまいましたね。

  どこまで話したでしょう・・・。そう手紙を送ったところですね。

  男の子がいた頃までの、使える状態にまで、このお屋敷を綺麗にしたのを、誰よりも早く見せたかった

  ので、手紙を書きました。もう緊張しましたよ。だって、私は今まで、自分の意思で手紙を書くなんて

  しなかったのですから。

  ようやく手紙も書き、男の子に届いたのでしょう。夏休みに一週間来る、という旨の電話をもらいました。

  










  














    ───そして、今日の昼、彼はここに来ます。



















    私は、あれから、心から笑うことができるようになりました。それまでは、私は笑うことを「演じて」

   いただけ。

   彼に出会い、そして、今では、嬉しい時、楽しい時、本当に笑っています。




    





    こちらに来て買い物をしていると、花屋のご主人が向日葵の種を沢山くれました。

   なにやら、私に似合うから、と言うことでした。









   今は、向日葵は私の背を越えて、誇らしく、明るく、この屋敷の庭で咲いています




   さぁ、もう1時を過ぎました。




   そろそろ、彼が着くころです。




   私はお屋敷の前で彼を迎えます。向日葵と同じくらいの明るい笑みで。





   そして、彼に言うのです






















        おかえりなさい、志貴さん








          ────と。
END
あとがき
 えっと、TAMAKIです。
 どうでしょう?最後は悩みました。琥珀さんの日記にするかどうかを。
 本当は先生の話を先に書こうと思ったのに。
 これは、琥珀さんのエンディングのところです。琥珀さん口調が出来ているか、微妙ですけど。
 一応、EDまでの間の、まぁ、志貴が長野の街に着くまでの時間のお話ですね。
 琥珀さんのEDは好きなんですよね。
 一番、遠野家ルートだと円満なのかなかぁ・・・。と思ってます。

 では別のお話で