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修二絵
著:TAMAKI
―――秋葉、二人だけで旅行に行かないか? 俺は、不意に秋葉にそう言った。 その一言を居間で言ったのだが、当の秋葉は固まるし、翡翠は、眉毛をへの字にしてるし、 琥珀さんは琥珀さんで、いつもよりもなぜか笑顔だった。 そして、屋敷の3人の視線が集まる中、赤面していた秋葉は、 「わかりました。でも、行くのなら、3月ですよ?少し都合つけないといけないので。」 「わかってる。まぁ、和風なイベントなんだし、少し時期的には寒いかもしれないけれど、3月1 2日だからさ。」 俺はそう言って、刺さるような視線を2方向から受けながら、学校に向かった。 二人で、電車に揺られながら話す。 こうして、向かい合っているのだから、話すことも沢山ある。 幸い秋葉は、卒業したあとの大学が、遠野の屋敷の近くで(意図的にしたのだろう)、4月からも 二人で一緒に朝を過ごせる。 他愛ない会話を続けながらも景色は変わる。 そう、目的地まではまだまだある。 「そういえば、翡翠と琥珀さんはどうしたの?」 俺は唐突に秋葉に尋ねる。 「えぇ、二人には暇を取らせたから平気ですよ。今頃は二人で、出かけているでしょうし。」 そう答える秋葉は少し寂しそうだ。 それはそうだろう。いつも一緒にいた琥珀さんがいないのだから。 「兄さん、眠いので寝ますね。」 唐突に秋葉が俺の肩に寄りかかった。 ただ、答えず、頷いて、秋葉の体を受け止める。 そうして、髪の毛を撫で、頬を撫で肩に手を回した。 「すごい人だなぁ・・・。」 さっきから、秋葉はずっと俺の服の袖を握っている。 場所も場所で、東大寺二月堂。 そして、俺は、その秋葉の赤いコートの肩を抱きしめた。 「じゃ、行こうか。」 そう、できるだけ、優しい顔で微笑んで。 二人で甘酒を買って飲む。 「暖かいですね。兄さん。」 「あぁ。けど、寒くないか?」 俺がそう言うと、秋葉は 「寒くなんかないです。兄さんが買ってくれたこのコートは暖かいですから。」 そんなに答えて秋葉は微笑む。 ―――あぁ、こんなにも、幸せなんだな・・・。俺は。 心の中でそう呟く。 だから、今日、来た甲斐があるというものだ。 「けど、まだ時間あるなぁ・・・。」 メインの開始は7時。今はまだ、5時だ。 「そうですね。じゃ、そこのお店でお茶でも飲んでましょう。兄さん。」 秋葉がこういうことを言うのは珍しい。もしかしたら、初めてかもしれない。 そういう秋葉の変化には嬉しくて、俺はそれに従った。 店の中は人で混み合っていて、俺はとりあえず、店員に「二人だから」と合図をした。 「何にいたしますか?」 店員は明るく言う。それはいかに、地元の人にとって大きなイベントなのかを思い知らされる 活気だったりもする。 「じゃ、俺は月見うどんで・・・。秋葉も、同じでいいか?」 こくんっとうなづくだけの秋葉。 そうだろう、こんな人で一杯な店に入ることも秋葉には珍しいことなのだ。 「けど、人も多いなぁ・・・。」 「そうですね。」 秋葉は一息ついてから言う。俺はその言葉を外に視線を送りながら聞く。 しばらくすると、二人分のうどんが持ってこられ、二人で、「温まるな」「えぇ」と言うやりとりの まま、手短に済ませ、外に出た。 今日は走りの行法というものが行われる日で、いつもなら10本の松明だけが二月堂を舞うのと違い、 11本、松明が焚かれる、この祭りでは一番のメインになる日だ。 人も多く、傍に居て、顔を見ていなければ流されてしまいそうな秋葉の手を握った。 「えっ?兄さん?!」 「こうしたら、離れないだろう?」 聞いた秋葉は目を白黒させている。 少し向こう側になるが、歓声が上がる。 人の向こう側に、火の粉が見える。 「兄さん、何か見えるんですか?」 俺よりも身長の低い秋葉は、背伸びしている俺が気になるのだろう。 「う〜ん・・・少しだけ火の粉が見えたくらいかな。」 そう見た秋葉の肩には良弁椿がはらりと舞う。 俺はその椿をさりげなくポケットにしまう。その瞬間、 「おぉ!」 周りの歓声とともに火が舞う。 舞うと言うしかないような美しさ。 その松明の火に見とれながら俺は秋葉の手を握る。 その・・・凍りついたように冷たいその手を。 炎はいつか11本になり、二月堂は炎の滝になった・・・。 胸が痛い ただ願った 遠野の罪が 七夜の業が この炎に焼き尽くされてしまえば・・・・と。 そう見ているとどんどん松明は増える。 隣にいた老夫婦が「南無阿弥陀仏」と囁く。 こうなるまで・・・秋葉と過ごせたら・・・。 時間に制約があるのは知っている。 それでも傍に居たいと願う。 罪を祓い、業を焼き、ただ願う。 俺の隣に秋葉が・・・・永遠の存在でいるように、と 「兄さん、進んでますよ?兄さん?」 秋葉が俺を呼ぶ。 「あぁ・・・そうだな。」 帰りながら想う 幸せになろう。二人で・・・必ず。 約束をしよう・・・・。 幸せになろう・・・・ END
あとがき
こんばんは。 このSSは自分にとっては長いものでした。 実際に、場に行って、厳かな雰囲気、仏教の深さ、日本的な文化というのが物凄く感じられて、まだまだ昇華できていません。 ただ、「今」書きたいと思ったものなので、そこはまた来年も行ってトライしたいSSですね。 ちなみに、タイトルの修二絵というのは、この東大寺の2月末から3月中ごろ〜下旬に行われていて、もう・・・1500回以上なのかな?行われている火祭りです。 これが終わると、関西には春が来る、と言われていまして、ここから〜を書きたい僕にはちょうどいいお祭りでした。 本当はだったんという儀式までいたかったのですが、微章が頂けなかったので ここで終わりになってます。 ここからが来年のトライしたい点でもありますね。 では、また別のSSで 了
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