単独で南アルプスの茶臼岳&上河内岳へ登頂した時の日誌。
宿泊は前日に畑薙第一ダム駐車場で車中泊、登山中は茶臼小屋で二泊。
標高差約1,400mを一気に登る。ガイドブックには「体力と気力を要する厳しい登り」と書かれ、登りだけで8〜9時間の登山、重いザックを背負い大丈夫か?と心配になるが、無理だと思ったらすぐに引き返そう…そんな感じで登山に挑んだ。


畑薙大吊り橋
落ち葉で道が消えている
15日 登山前日
12時前に自宅を出発。
15時頃、温泉にはいるため『白樺荘』に到着!
この白樺荘、入浴料がなんと
タダ!
素晴らしい〜!!!
タダなので設備はあまり整ってないけど、硫黄の臭いがムンムンする温泉がとっても素晴らしかったです!

そんな素晴らしい温泉に入り、今夜の宿泊地の畑薙第一ダムに16時頃到着。(標高約980m)
先日ここへは来た時に、トイレがある事を確認したのでここで車中泊ができると思った。
夕飯は途中コンビニで買ったおにぎりとインスタントの固形スープ。
22時頃就寝。

4:45 起床
寝ていると遠くで「キー!」と鹿の鳴き声が聞こえる。
女性の悲鳴に似ていてちょっと怖かった…
起床して朝食の準備。
朝食は昨日コンビニで買ったパンとお湯を沸かしてインスタントコーヒー。
まだまだ外は真っ暗。
ストーブでお湯を沸かしコーヒーを作り朝食のパンを食べる。

6:15 登山開始
予定では5時半から登山を開始する予定だったが、まだ暗くキケンなのでのんびりと準備をして、クルマに乗って林道のゲートへ移動。
このゲートからは一般車は入れないので、手前の駐車スペースへクルマを停め、登山計画書に記入してポストへ投函。
ついでに3日間ほどクルマをここに放置するのでダッシュボードにルートと下山予定日を書いた紙を置く。
この頃には周囲はだいぶ明るくなり、重たいザックを背負いゲートをくぐり登山開始!
先日行った大谷嶺トレーニング登山で、ザックの上にテントをくくり付けると安定性が非常に悪かったので、テントはザック内に収納して、軽い衣類などを防水バッグに入れて、防水バッグをザックの横にくくり付ける事にした。 見栄えが悪いけどこの方が安定性があってよろしい。
結局ザックの重量は23kgになってしまった。
服装は上はユニクロのヒートテックのアンダーウェア、モンベルのクリマブロックロッシュジャケット、下はノースフェイスのサポートタイツに、フェニックスの3シーズン用のパンツ。
気温は5度、この分だと今日の目的地の茶臼小屋は約標高24,000mあたりなので氷点下になると思われる…

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6:50 畑薙大吊り橋到着
林道をトコトコ歩き約30分ほどで畑薙大吊り橋に到着。
吊り橋を渡っていると視界が空に変わった!
なんと吊り橋の上で、板が凍っていてすっ転んでしまった…
幸い落とし物もなく今思うとかなりの恐怖…

7:30 ヤレヤレ峠到着
吊り橋を渡り終わると、目の前に張り紙が…
張り紙には今年の5月にヤレヤレ峠付近で親子連れのクマに襲われた新聞の記事が張られていて
要注意!
歩きだすと木々に覆われたきつい登りが始まる。
やがて上の方に鉄塔が見えてきた。 道は落ち葉が異常に多く、登山道が解りにくくなる…
しまいには登山道らしい道が二つに分かれている場所があり、地形図とガイドブックとにらめっこに…
出だしでかなり不安になり、
クマも怖いので声を出しながら歩く。
クマ除けの鈴を持ってくればと後悔! 昨年の登山では鈴を付けていたがルチャド〜ル副隊長が
鈴はうるさい!と言うことで付けなくなってしまったがやっぱり必要だ…
道に迷いクマの恐怖に怯え、ヤレヤレと思いながらようやくヤレヤレ峠に到着。
休憩したかったがクマが怖いので素通り…

8:50 ウソッコ沢小屋到着
ヤレヤレ峠を越えても落ち葉が多く、解り難い登山道をエッチラ、コッチララッセル状態で歩く。
途中吊り橋を4ヶ所渡りウソッコ沢小屋に到着。
古びて隙間だらけの小屋で、茶臼小屋もこんな感じなのかなぁ…とちょっと不安になる。
地形図を見るとここから先はかなり急な登りになると思われるので休憩する事に。
周りは紅葉がとてもきれいだった。
15分ほど写真を撮ったりして休憩。

11:10 横窪沢小屋到着
休憩を終えて登山開始。 すぐにまた吊り橋があり、この登山ルートは
吊り橋マニアにはなかなかいい登山ルートかも…なんて思いながら、予想通りきつく展望の悪い登りをひたすら登る。
天気も良く暑くなってきたのでジャケットを脱ぐ。
しばらく歩き横窪峠に到着。 そのまま素通りすると急な下りになり、せっかく辛い思いをして登ったのに、こんなに急な下りになりもったいない!と思いながら、ほんとにこの道でいいのか?と少々不安になりながら歩き横窪沢小屋に到着。

横窪沢小屋はとてもきれいな小屋だったが冬季は閉鎖になっていて、少し離れた古ぼけた小屋は開放されているらしい。
ここまでガイドブックに記載されているタイムより早いタイムで来たので十分時間をとってランチタイムにした。
ランチは前日コンビニで買っておいたパンとお湯を沸かしてインスタントコーヒー。
近くに沢があるので消費した分の水を補充。
ほんとは少しでも重量を軽くしたいが、茶臼小屋を管理する井川観光協会に問い合わせした時に、水場が凍っているかもと言われたので、水場がないと今後の行動が辛くなるので仕方がない…
1時間ほどランチタイムで休憩した。

ランチタイムも終わり登山開始!
ここから今日の目的地の茶臼小屋まであと2時間45分ほど。
今までガイドブックに記載されている参考タイムより早いペースで登っているのでかなり気がラクになった。
しかし茶臼小屋までまだ標高差が約800mもあるので、気合いを入れて広葉樹林が広がるジグザグした道を登る。

登っていると肩甲骨の辺りが痛くなり、我慢できなくザックを下ろしベルトを調整していると、遠くで
ガサガサと何かが歩いてくる音が…
クマか?!マジで〜!と思い、大声を出すと動きが一瞬止まり、またまたガサガサと動く音が…
急いで周囲を見渡して手ごろな石を拾い、クマが木々の間から姿を現したら投げて、それでも近づいて来たらでかい石で鼻っ面をめがけてぶつけてやろうと思い、周囲に石を集めさらに大声を出して戦闘態勢に…
すると
ガサガサの音は遠ざかっていった。
ちょー緊張していて音が去ったのを聞いて体中の力が抜けた…
音がしなくなったのを確認して、急いでザックを背負い歩き出した。
歩き出してすぐに動物の
を発見!
どこかで見たような
糞!この糞を見たのはアラスカだぁ〜
この糞は
クマの糞!
おまけにまだホンワカしていて温かそう…
さっきの足音はやっぱりクマだったのかぁ〜!?
まだ冬眠してないのかぁ〜!? と、とにかくデカイ声を出しながら歩く。
アラスカ遠征時の隊長、動物学者のスティーブからクマを避けるためにはとにかく自分の存在を解らせる事、これに尽きる。と言われていたので、マジでクマ除けの鈴をしてこなかった事を
超後悔する…
茶臼小屋からの眺め

15:20 茶臼小屋到着
クマの恐怖に怯え、さらにザックの重さで身体がキツく、ヒーヒーしながら登る。
道は相変わらず落ち葉のラッセル状態で歩き難い!
しだいに傾斜がゆるくなり、遠くに茶臼小屋らしき建物が見えた。
あれかぁ〜!と超うれしくなり、一気に登りたかったが身体がキツく、5分歩いては休憩しての繰り返しになってしまう。
なんとか歩いてようやく茶臼小屋に到着。
途中小さな沢を見つけ、凍っていないので小屋の水場が使えなかったらここが使える事を確認。
茶臼小屋に到着する最後の1時間は非常にキツかった…

茶臼小屋は予想していたモノより遥かにきれいな小屋で、2階建ての造り。 冬季は2階部分の一部だけが開放されている。
開放されている部分は中央に通路があり、通路の左右に約7畳分の板張りのスペースが上下二段ありそこで寝食ができるようになっていた。

小屋には誰もいなく荷物を置いて少し休憩。
『善意の箱』が設置してあったので、宿代として2,000円入れた。
休憩後、水場の確認へ行くと水場は凍っていて使えない状態だった…
近くに沢があり今日はまだ凍っていないので、その水を使ってお湯を沸かし、汗だくになった身体をタオルで拭いて着替えた。
着替えはミズノのブレスサーモのアンダーウェアを上下着て、その上にモンベルの U.L.インナーダウンジャケット、U.L.サマーラップパンツを着た。これでも寒かったらレインウェアを着ようと思ったが大丈夫そう…この時点での小屋の気温は0度だった。

16時になり辺りが暗くなってきたのでシュラフ一式をセットして、コーヒーでも飲もうと思い準備をしていると階段を登ってくる音が…
登山者(F氏)が一人やってきた!
挨拶してF氏は易老渡から登ってきたと言い、ぼくが登ってきたコースを詳しく聞いてきた。
F氏は地元の山岳会に入っていて登山のベテランだと解った。
話しが終わるとF氏はツェルトを出し、小屋の中に設営して夕飯の準備を始め出した。
「それってツェルトですか?」
と聞くと、他に登山者も来そうにないし、寒くなるから設営してそこで寝た方が暖かいよと教えてくれ三太郎もテントを設営。
テントを設営しているとF氏がビックリしたように
「テント持ってきたの?」
と言うので、ツェルトは持っていなくこんな高い山の上での泊まりの登山は初めてなので、何か遭った時のためにテントを持ってきた事を言うと
「え〜!この時期に初めてなの?しかも単独で!?」
それは無謀だよ!
と言い、他に装備はどんなモノを持ってきたのか、どんな日程なのか聞かれ装備と日程の説明をすると
「それだけの装備だったら大丈夫かなぁ…時々初心者で軽装な人がいるからね」
「それにしてもそれだけの装備をよく担いで来たねぇ〜!日程も余裕ある日程だからいい経験になるよ!」
と言ってくれ、いろいろと登山で解らない事を質問しながら夕食を食べた。
ちなみに夕飯のメニューはレトルトのリゾットとスープ。
リゾットに魚肉ソーセージを入れたモノ。 今回の登山ではメインのメニュー。
夕飯も終わり、F氏に何時頃寝るのか聞くと19時には寝たいと言うので三太郎もそれに従い19時寝る事に。
それまでテント内でランタンを点けてテント内を温めた。
外は雲がでてしまい、満月だった月も見えなくなってしまった…

19:00 就寝
F氏が明日は4時半頃起きて早くから物音でうるさくしちゃうけど…と言い、19時になりランタンを消して寝る。
寝ていると寒くて目が覚めた…
寝る時に靴下はユニクロのヒートテックの靴下に中厚手の登山用の靴下、さらにその上に厚手の登山用の靴下を履いたが異常に
足元が寒い! ザックを空にしてザックの中にシュラフごと足を突っ込んでみるがそれでも寒い!
ウトウトすると寒くて目が覚めての繰り返し…
あまりにも寒いので、インナーダウンの下に速乾性のトレーナーを着るがまだ寒い!
とにかく寒くてほとんど眠れなかった…