陶器山よもやま話 
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< オオタカ物語 >
(小さな小さな地域活性化の始まり=「丘の友」143号(170225)より)

写真をクリックすると拡大します。
130114 母鷹  130104 雛が見えた   羽ばたき 130114 成長 
111202 兄弟  130104 見つめ合い  170705 
巣立ちの3兄弟
(今年180501現在、当地でオオタカの営巣が確認されませんでしたので
昨年の観察記録と「丘の友」143号の掲載文をアップロード致します。)

「どうです、これ。」と見せられた写真の主は見るからに猛禽類。
鋭い眼光、キッと結んだ口元
背中の黒と腹の白とのコントラストの美しさ、
袴をはいたようなドッシリとした2本の脚はシッカリと枝を掴んでいる。
オオタカの若鳥。

山好きの友人が北の旅先で撮ったものと思っていたら、
毎日ウオークの途中で遭遇したのだと言う。
関東以北では個体数が5,000近くまで増えているとはいえ、
関西圏では漸く40番(つがい)しか確認されていないオオタカが、
こんな近くに飛来した!? 

共生の森か、鉢が峰から迷い込んできたのか。
生活圏が100fと言う大きな縄張りを要する大型の猛禽類が
この小さな森の盟主であり得ないと言う常識がある。
居てもノスリかチョウゲンボウくらいで、
哺乳類も殆ど見られない、カラスが生態系の頂点の筈だった。
「2度と見られないと思って、夢中で撮った」と無類の鳥好きは興奮の態。
これが昨年9月。
そしてこの6月、激しく美しいオオタカが、
この地に営巣していたことを知った。

こっそり教わった辺りはクヌギ、コナラが林立するやや深い森。
幸か不幸か、今年はナラ枯れが蔓延してギャップと言う空間が出来、
木間越しに透かして見ると大きな巣があった。
人間界から失敬してきた材を組み込んだようなカラスの巣ではない、
正に森の盟主の大きな巣である。

150ox2くらいの望遠では中々確認が出来ないが、
パソコンに取り込んで拡大すると、純白の小さな丸い頭がボヤ〜と写っていた。
あの写真は本当だったんだ……

以来、毎日、カメラをぶら下げて出る時は人通りを避けて歩いた。
子育て期は、出来るだけ静謐を守りたい。
日本をここまで生きにくくした世代のせめてもの気遣いとして。

以前、淀川河川敷でフクロウの営巣が見つかり、
バズーカ砲のようなカメラが100台近く列を成し、
結果、フクロウは子育てを放棄してしまったと聞いたから。
其の巣で育ったのかもしれないオオタカの母親は未だ若いのか。
ナラ枯れで辺りがスコスコになった所に大事な卵を産んでしまった。

今更引っ越しなぞ出来ない運命を受け入れ、
雨天の寒さにも初夏の炎天にも美しい母親はツバサを広げて巣を守っていた。
鳥の雛の成長は早い。
5月28日に真っ白い小さな姿を見せていたのに、6月5日にはひよこ大に、
10日には1ハト大に、15日にはカラス大に・・・・
カラス大になると羽根の色がウズラのようになり、
巣の中で立ち上がって、羽根をバタバタさせてみたり
顔も何やら猛禽類の激しさを呈してくる。

育ちざかりの3羽の雛の為に親たちの狩りは忙しい。
滅多に人目に姿を見せない親も、
流石にこの時期には無防備な飛翔を見せてしまう。
美しい。見とれてピントも合わせられない・・・・

6月28日、遂にT羽が巣から離れた。
1週間遅れて後の2羽も巣から伸びた枝に移っていた。
巣立ち。生きものたちの掟か。
一旦巣から離れた雛を、母親は、今度は自分が巣に陣取って、
雛を巣には入れない。
羽ばたいたり、毛づくろいをして見せたり、
「入れてよ」と恨めしげに母を見上げる雛に
「もう大丈夫でしょう?」と諭すように毅然とした目を落とす母。

一人では狩りも未だ出来ない雛たちはそれから3週間余り、
もう姿は見えないながら、巣の近くで啼き交わしていた。
その間、母親から狩りのノウハウを見習っていたのか、
以来、姿はおろか啼き声も聞こえなくなった。

親2羽と3羽の雛(若鳥)の家族を養うにはこの森は小さい。
ともあれ3羽を育て上げた若い夫婦と森の恵みに感動。
そして毎日その姿を目にすることが出来た天佑に感謝。
 
(「丘の友」143号(170225)より 小西記)