陶器山の絶滅危惧種 
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< 200823 愛しきかな、キンラン・ギンラン >
(20/05/08 今年も咲いた、小さな花が・・・)

200502 ギンラン  200508 キンラン 
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 コロナパンデミックで外出自粛の3か月余、陶器山は普段より賑わった。
狭山から堺から、仕事に出かけられない若者や家族連れが
いろんな事情を打開すべく標高100mほどの街道筋に上がってきた。
勿論、例外なく自衛のためのカラフルなマスクを着けている。
一昨年の台風21号で 大木がバタバタ倒れたおかげで暗かった森のギャップに陽が差し込み、
今まで見えなかったあたりのコバノミツバツツジが満開。
冬から狂い咲きのモチツツジも遅れて一斉に街道を彩り、
裸木に新芽がつき、ひこばえが背を伸ばす。
「台風も悪いことばかりやないな」と呟く常連ウオーカー。

陶器山は大阪狭山市と堺市を幅100m余x3q余で東西に分けて走る。
この50haの小さな森の、幸運にも開発の手から漏れた緑地に
細々と生き残った絶滅危惧種がある。
10年前に21軒の地主さんと大阪狭山市の「逆線引き合意」が成立し、
市街化区域から調整区域になった北半分の今熊地域の「山林」が
緑地のまま残される事になったおかげで、
「里山」を彩っていた小さな植物が、
あちらで一本、こちらで3本と言う風に生き残っている。
 今や風前の灯の絶滅危惧種II類のキンラン、ギンランだが、
本来的には里山の環境を維持することで、
翌年も花を咲かせる、普通にみられる植物だったと。

国家戦略としては、2050年に自然と共生する社会の実現を目的としており、
生物多様性維持・回復と持続可能な利用を通じて生態系保全を目指している。
100年放置すれば、NYも東京もジャングルになるという程、
自然の復元力は大きなものだが、開発はその限度を苦も無く超えてしまう。
一番近い火星でさえ「水があるかも」と言う程度の知見では、
現世代の人類が移住できる星は他になく、
自然との共生なくして人も生きられないわけだから、
大きなことを考える前に、せめて今此処にある自然を壊さない、
その指標としての折角残った絶滅危惧種を絶滅させないささやかな努力をするのがてだと思った。

外来種の多くが生息域を広げているのに、
何故、この可憐な花が絶滅危惧種になってしまったのか。
華々しくきれいな野草はいっぱいあるのに、
何故、今、ここに注意されないと気が付かないような小さな花が大事なのか。

陶器山と言う極めて身近な自然が、
オオタカを育む生態系と絶滅危惧種も生き残れる生物多様性を示している事に感動し、
外来種の混入率10%以下(2015年 大阪狭山市植生調査報告書)と言う
この環境を出来るだけ次の世代に残したい、
そのためのささやかな努力を続けたいと思ったわけである。

キンラン・ギンランは菌根菌植物と言われる。
つまり生育に必要な栄養分(炭素源(糖分)と窒素源(アミノ酸))を土中にある菌根菌から、
リン源は寄生するコナラ、クヌギなどブナ科の3%の樹木に依存している。
(http://ja.wikipedia.org/wiki/キンラン) 

イザベラ・トリー(*)に依れば、すべての大陸のあらゆる生態系に於いて、
菌根は90〜95%の植物と共生関係にあり、
土中のリン酸、窒素を吸収して、宿主樹木に供給し、
宿主樹木からは光合成で得た炭素化合物を得ているのである。
(* 英国貴族、領地を野生に戻す p31 築地書房 2020)

そして菌根菌は宿主、菌種、形態から、
外生菌根菌
内外生菌根菌
アーバスキュラー菌根菌(VA菌根)
エリコイド型菌根菌
アーブトイド型菌根菌
モノトロポイド型菌根菌
ラン型菌根菌
に分類されており、キンラン・ギンランが依って立つ菌根菌は、
オーク類と共生する外生菌根菌と言う6000種の内の、そのうちの約110種の菌根菌で、
キンランは炭素源の34〜43%、窒素源の49%を、
ギンランは炭素源の50%、窒素源の90%以上を菌根菌に依存しているとか。
専門的な調査方法に今は触れない。
(http://ja.wikipedia.org/wiki/外菌根)

  おまけに特定樹木と、それに寄生する菌根菌との共生環境が維持されなければ生きられず、
その共生関係が乱されると、すぐに枯死しなくても、
長期的に生育することが困難になり、厄介なことに、
その樹木と多様な菌根菌を集めて植えても生育できないと言う技術的な難しさがある。

里山が機能していた時代には、ありふれた環境で普通に見られた筈なのに、
そんな厳しい我儘な生育条件がこの小さな植物を絶滅危惧種にしてしまった。
枯葉の中から慎ましく出てきた双葉を改めて見つめてしまう。
(「日本産キンラン属における共生菌の多様性及び共生菌への栄養依存度の解明」坂本裕紀 2013年)
キンラン・ギンランは北海道を除く日本、朝鮮半島、中国に分布し、
一般的に山地、丘陵地の二次林、林縁の半日陰で腐葉土がフカフカのエリアに見られるとか。
確かに、陶器山でも、100株、230株を数えた所はそんな風だった。
 キンランを「一般保護生物」の指定をしている千葉県では、
それほど珍しくないそうで写真で見る姿・形も力強く、
キミガヨラン程でなくても花も沢山付いて、草丈は30p〜70pもあり、
陶器山の10p〜20pの消え入りそうな儚い姿とは同種かと思うほどである。
(http://yasousuki.exblog.jp/8806417/)

 どうするか・・・・
 6000種もの外生菌根菌の中で
キンラン・ギンランが好みの外生菌根菌がどれとどれかは不明ながら,
好みの外生菌根菌が普通に存在していた二次林、雑木林が維持できれば良いのではないか・・・・
学者でも、その道のプロでもないばーちゃんは自分ができる範囲の解決策を思いめぐらす。
 一昨年の台風21号で薙ぎ倒されたクヌギ、コナラの足元に消え入りそうな一輪。
去年7輪咲いたところに今年は12輪見つけた。
数年前には30輪を数えた所もある。

そこで、保護策の正解が不確かな儘,
思い至る所にKeep-offとばかりに倒木や折れ枝を置いて囲いをする。
わざとらしいのは嫌!なんて言っていられない。
踏まれないよう、直射日光で乾かないよう、
散歩の道中、拾い集めたコナラのドングリを撒き、
菌糸が走るようコナラ、クヌギの枯葉をドッと撒布する。
同じ尾根筋に密生している苗木を、ピッケルで掘り起こして、件のコナラの近くに移植。
廃品にも出せなかったピッケルも久しぶりの出番になった。

 梅雨が明けるまでに植えてしまわないと、か細い苗木に近年の厳しい夏は越せない。
水切れで枯れた苗木の傍に、
飽きもせず散歩道中に撒いたドングリから芽生えた新たな苗木を掘ってきては植える。
急斜面の作業でずり落ちたり泥だらけになって補強の杭打ちをしていると、
通りかかりのウオーカーが「ご苦労さんやね〜」と土留用の丸太を引き上げてくれたり、
水ペットボトルを持ってきてくれたり・・・・

おかげで朝の散歩のいで立ちは長靴、ゴム引き手袋、デイパックに
3リッター水ペットボトル3本、スーパーの袋にも水ボトル3本、
枝切り鋸、ピッケル、スコップ、笹刈りハサミ。
コロナパンデミックの自粛も有らばこそ、
この数か月、殆ど毎日の山仕事で、腰痛、肩こりは治ってしまった。
森との共生関係はここにも成立。

だから、だから愛しき花よ、来年は少しは元気な姿で出てきてよね?

(以上は 慶友三田会会報「丘の友」153号に掲載されたものである。)