裏磐梯のスモールマウスバスの食性を正確に知るために、ご覧になる前に下記をお読みください。
|
- 胃内容物一覧 - | |||
胃内容物一覧を表1に示しました。スモールが浅場や表層で捕食しているものは、主にワカサギ、スジエビ、そして昆虫類です。 |
表1 スモールマウスバスの胃内容物数(N=938)
魚類 | 昆虫類 | 甲殻類 | 両生類 | その他 |
ワカサギ 777 |
カゲロウ幼虫 多 |
スジエビ 1166> |
カエル 5 |
ソフトルアー 79 |
生息魚類一覧と比較参照すると、浅場(または表層)ではワカサギとスジエビを選択的に捕食していることが窺われます。ワカサギだけ25匹捕食していた魚もいたくらいですし、判別不能だった魚のうちの半数程度は、その大きさとおよその形からワカサギと推定されますから、裏磐梯ではワカサギに似たルアーは必需品と言えます。一方、多くの地域でバスの餌の代表格であるオイカワやウグイはほとんど捕食されておらず、コイ・フナ類の稚魚は全く認められませんでした。これらは生活圏と適水温がスモールと重なるにも関わらず、あまり利用されていないのは興味深いところです。この点については釣りの対象とならない小さなバスが、これらの稚魚を捕食している可能性もあり、「これらの稚魚はバスには食われない。」と断定はできません。しかし、実際の釣りではこれらの魚をマークする必要はなく、今後も魚類相に大きな変化が生じなければワカサギが最も利用され続けると考えられます。 |
- 月別の胃内容物 - | |||
食性の季節変化を主要な餌生物に絞って見てみました。 表1はスモールマウスバス10匹あたりの胃内容物数を表していますが、ワカサギ、スジエビはシーズンを通して捕食され、中でもスジエビは常に良く捕食されています。一方、昆虫類は季節変動が大きく、春ゼミやトンボなどは全く捕食されていない時期もあります。このように胃内容物は餌となる生物の生態を色濃く反映していると言えますし、逆に言えば釣行時にこれらの生息水深や発生状況に注意を払うことで、トップウォーターゲームが成り立つかどうかを予想することも可能です。 |
表1 月別のスモールマウスバスの胃内容物(N=938)
種類 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 |
ワカサギ | 2.1 | 5.1 | 2.2 | 29.5 | 9.9 | 1.8 |
ヨシノボリ | 0.3 | 0.7 | 1.0 | 2.9 | 2.3 | 1.3 |
スジエビ | 11.2 | 8.0> | 12.1 | 17.2 | 13.4> | 25.8 |
春ゼミ | 0.3 | 0.4 | 0 | 0 | 0 | 0 |
トンボ | 0 | 0 | 0.9 | 0.4 | 0 | 0.3 |
ヤゴ | 0.9 | 0.5 | 0.2 | 0.1 | 0.1 | 0.8 |
カゲロウ幼虫 | ++ | ++ | + | - | - | - |
蚊・ボウフラ | - | + | - | - | - | - |
アリ・羽アリ | + | + | + | ++ | - | - |
他陸生昆虫 | - | ++ | ++ | + | - | - |
- なしorほとんど認められない + 認められる ++ 多く認められる |
それでは、もう少し詳しく表を見てみましょう。表では明らかではありませんが、5月中旬まではヤゴやカゲロウの幼虫、スジエビが主に捕食されています。このことから、水温が低いうち(10℃以下)はスモールといえども動きの遅い生物から捕食すると考えられます。そして表面水温が適水温となる6月以降は、接岸するワカサギはもちろんのこと水面に浮かぶ昆虫類も餌とするようになり、8月にもなると水生昆虫やスジエビよりもワカサギを追うようになります。これは多くの水生昆虫が羽化するため、水中にいる数が減ることも理由の1つでしょうが、この時期は表層を回遊するワカサギの当歳魚を狙う魚が多いためだと考えられます(ただし、表面水温が平年より高い年は別の結果となるでしょう)。10月には再びスジエビが多く捕食されていますが、これはスモールがワカサギよりもスジエビを好んで捕食しているというわけではなく、ワカサギを追って深場へと移動しなかった魚の一部が、その時期に岸よりにいるスジエビを利用しているだけだと考えるのが自然です。 |
|||
左の写真は2002年9月2日の朝にフローティングミノーで釣った26.8cmのスモールマウスバスの全胃内容物
・数時間のうちに ・多様な大きさのワカサギを選食し ・14匹も捕食していながら ・それでもなお、ミノープラグにアタックしてくる ことが分かります。スモールの嗜好性と初秋の食欲を示す好事例 |
- 餌生物とスモールの大きさの関係 - | |||
一般に言われている「大きな魚は大きな餌を食う。」という説はスモールマウスバスにも当てはまるのでしょうか? (注)・小型魚=全長5cm以下 ・中型魚=全長7cm以上 以上のことから、40cm以下のスモールは餌生物の大きさよりも数の多さ(=見つけやすさ)と美味しさ(?)を重視して捕食を行っていると推察されます。大型のスモールほどワカサギを捕食しているのは、成長に伴って運動能力が高くなり、その結果摂餌範囲が広くなったことも一因であり、単に餌生物の大きさだけを目安に捕食しているのではないと考えられます。実際には、空腹時には餌生物の大きさに関わらず(それが嫌いなものでなければ)見つけ次第捕食し、状況によっては嗜好性が優先されることも十分あり得ると考えられます。40cm以上の大型魚でさえ、ヤマメの若令魚を捕食している個体もいれば、1cm程度のカゲロウの幼虫を捕食している個体もいるからです。 |
福島県では2001年6月1日よりブラックバスとブルーギルの移植が 禁止になりました。違反すると懲役2ヶ月以内または罰金10万円 |
裏磐梯バスフィッシング情報 〜桧原湖とスモールマウスバス〜