haunted heart
2.19:昨日のことだが、職場で昼休みの休憩をとり、社員食堂で定食を食べその後、喫煙室に入って煙 草を吸っていた。それが僕の中ではいつものコースになっている。特に考えることもなく煙草を吸っていると、歯に何か挟まっているのを感じる。その際も特に 意識せず舌で歯の間からその「何か」を取りだし、なんとなく咀嚼する。でもその何かはとても小さく、噛むには値しない。少なくとも噛んでいる感じはない。 よって、僕にはただ口を動かしているように思えてくる。当然他人にもそう写っていると思う。
その時に気がついたのだが、たまに年寄りの中に、しきりに口を もぐもぐと、しかも常に、動かしている人を見かける。まるで社会保険庁から年金を貰うには一日に何時間以上か口を動かす事が義務付けられているかのよう に。
僕の仮説では、彼らは多分総入れ歯で、いつも何か物が挟まってしまう。入れ歯と歯茎の間に。そこにはヨーロッパアルプスの深い谷間に1年のほとんどの間、 雪 がたまっているように、何かが挟まっている。それを取り除くことは容易ではない。一日のほとんどの時間はその作業に費やされてしまう。そして経験からいっ て、歯の間に挟まった何かを取り除く時、人はまるで自分には口しかないかのように、そこに意識を集中する。しかもかなりの集中力で。そしてその老人にはそ こにしか世界がないかのようにその咀嚼を続ける。彼らはスコップを手にヨーロッパアルプスの深い谷から雪を掻き出す。それは超新星爆発の後、内方向のベク トルでとてつもない力によって圧縮化された白色 矮星のように、極度に小さな、しかし密度の高い世界 なのだ。
などと考えながら昼休みを過ごした。
past perfect  link