haunted heart
広島小景その2
1.29:
次の日が休みということもあって、川崎に映画を見に行った。
3日前のことだ。
風邪が長引いて、その日友達に誘われていたカラオケを 断っていたが、鼻と喉以外は特に普通で、熱もなかった。 その友達も夜が空いていたので、映画を見た後待ち合わせて飲むことにした。
映画が夕方の5時からで、時間が余っていた私は、映画館の入っているビルにある本屋で時間をつぶしていた。 日本文学の女性作家のコーナーを見たらずっと買いそびれていた栗田有起の「マルコの夢」を見つけた。 無意識のままレジに持っていき、気がつくとビニール袋に入って私の右手にぶら下がっていた。 まだ上映まで時間があったが、映画館は開いていたので始まるまで席で本を読んで待った。

映画を見終わり、友達と駅で落ち合い、飲みに行った。 二軒目に行ったビールメーカーの経営しているビアバーでビールを注文したあと、 ウェイトレスがやってきて、本日のお勧めメニューを説明した。 なめこのバターソテーと、もう一品何かあったが忘れてしまった。

「なめこを低温で育てると軸がしっかりと太く育ち、ぬめりがあまりなく大きく育つんです。」

その説明に興味を持った友達が、それを頼もうというので、300円という低価格もあって一皿だけ頼んだ。 確かに言うだけあって軸がしっかりしていて、味も濃くとてもうまかった。
帰りの電車で、途中で降りた友達と別れた後も上大岡に着くまでの少しのあいだ本を読み進めた。 すると、主人公がレストランのキノコ担当になるという風に話が進んでいった。 酔っていたのもあってあまり気にせずに駅に着いたところで、本を閉じた。
次の日。休みでレコーディングもあって一日家にいた。 午前中はあまりやる気もしなかったので、昨日の本の続きを読み始めた。 すると話がとんでもないほうに進んでいった。またしても栗田有起。してやられた。
加速度的に話が狂った方に展開して、終わった。あまり言えないがひとつだけ。

巨大キノコが出てきた。

読み終えて呆然として、無意識に台所に向かい、冷蔵庫を開けた。シメジとマイタケが入っていた。 しばし見つめてしまった。そして、そのあと少ししてから、昨日のなめこのことを思い出した。
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