友人の手紙に答えて

  
  60歳の男性が脳出血で後遺症を残しました。
  十分なインフォームド・コンセントなされないので
  先生の何気ない言葉に不安をつのらせ、リハビリが進まない。
  合田さんはどんなプロセスで回復したんですか・・・?

  前略
     さて、ご親戚の方はその後の具合は如何ですか。約束していた、つたない作文を送ります。
    文にはリハビリについては具体的な内容はほとんどありません。 
    というのは発病して2年余りですが
    精神的変化の方が大きくて、そのことに支えられてリハビリを頑張れた。
    結果、回復の途中ながら今の私があるからなのです

     脳血管障害は後遺症のリハビリ過程では、
    「回復」は『治る』のではなく『使えるようになる』ことなのです。
    例えば出血した辺りの細胞は死んでしまい決して再生しないから
    その点では(治りません)というのは間違いありませんが後遺症で
    いろいろな個所に障害が起きたとしても
    それは『回復の見込み』を持っているのです
    死滅した細胞に代わり周囲の細胞たちがサポートしてくれて、少しずつ動かせる、
    話せるようになることが可能です。
 
     そのために必要不可欠なのがリハビリです。ですから症状が落ち着いたら、
    出来るだけ速やかにリハビリを開始するのです。
    リハビリは先生の専門の先生の指導を受けながら回復に合わせて進めます。

     一方、患者本人の精神的ダメージは家族らの想像をはるかに超えて、
    後遺の障害が大きいほど精神的に落ち着くまでの期間が長くかかるのは当然です。
    家族らが愛情と理解を持って支えてあげて欲しいです。

     医療関係者は専門用語を当たり前のように使って説明し 
    インフォムド・コンセント欠ける部分が多々あることも事実です
    実際、友人が私より軽い麻痺にもかかわらず納得いくリハビリに取り組めていないので、
    私と比べて回復が遅れていると悩み、現在も悪循環をぐるぐる回っている状態です。

     友人を見て思うのは、ある程度の意志の強さが本人にも必要であるということ。
    初期のリハビリの苦しさは精神的な苦痛が原因します。
    脳血管障害は本人にとって突然の事故のようなもので
    痛いとか苦しいとかの予兆やプロセスがほとんど無いまま障害の状態を迎えるので、
    気持の整理がつきません。
    こうなったことをなかなか受け入れられません。だって、
    一番なりたくなかったことになってしまったのですから。

     私にも翌朝一気に不安が襲いました。
    でも夫の何気ないなぐさめ「心配しなくていい、心配ない」の言葉に、
    (この人なら、たとえ治らなかったとしてもこの先もずーと家族でいられる)と強く思いました。
    夫はこの病気を理解して、すぐに私のあるがままを受け入れているのが、
    ありきたりのせりふですが感じることが出来ました。
    夫のやさしさにに応えることが私の使命と決意しリハビリに励みました。
    その気持は今も変わらず回復を進めています。

     本人も家族も『大変だ、困った、どうして・・?』から脱出して、
    リハビリ効果があがる日々を過ごしてください
    治るわけはないけれど生活しやすい身体に徐々にもっていけることに信じて下さい。
    幸いまだ老年でないことで、大いに回復も見込めるのではありませんか。

     ビハビリのリって「元に戻す」でしょうか。くり返すの意味もあるように思います。
    繰り返し行ってサポートしてくれる脳細胞に教え込むのでしょうね。
    助っ人細胞も最初は「訳が分からないけど、とりあえず来ました」という
    新米ヘルパーさんのようなものですから何度も何度もくり返して
    教えてあげなければ役に立つようにはなかなか育ちません。

                                       
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インフォームド・コンセントとは

ヴァイオリン協奏曲 第3番ト長調K216